第1話

文字数 966文字

 あなたの側にいれることが、何よりの幸せ。
そう例え、たまにしか会えなかったとしても。

あなたの手の温もりは、春の日差しのようなポカポカとしたもの。
私は、触れられるだけでドキドキしてしまうのに、あなたは全くの無表情。
こんな、理不尽ってあるかしら?
私だけの片思いのようで、少しだけ腹が立つの。
あなたにとって、一体私は何なのかしら。
きっと、ただの都合のいいだけの存在。
知っているわ。それでも、一向に構わないの。

そんな私だけれど、あなたは、色々な所に連れて行ってくれた。
知っている所はもちろんのこと、初めての場所にもたくさん行ったわ。
世間で言うところの、デートってやつかしら?
あなたは、そんな素振りはみせないけれどね。
電車に揺られて、知らない町に行くのは、素敵なお出かけ。
知らない土地の空気って、とても新鮮だわ。

あなたはよく、食堂や居酒屋にも連れて行ってくれた。
何だか、ちっともムードがなくて残念なんだけれどね。
夜景の見えるレストランとか、遊園地とか、水族館とか、今度そういう所にも行ってみたいな。
実は、この二年ほど、行ってないの。
でもね、前はよく連れて行ってくれていたのよ。あまり面白くなかったのは、事実だけどね。
え?喧嘩していたわけじゃないのよ。私は大切にされていたと思う…
まあ、昔の話なんかいいじゃない。
今は、そんな事よりも、一緒にいられる幸せを感じることにしているの。

今日は、一ヶ月ぶりに会えたわ。嬉しくって、もう朝からウキウキしていたの。
でもね、でも…とてもショックなことがあったの。
つないだ手から、いつもとは違う気持ちが伝わってきた。
分かっちゃうのよね、私。ほら、とても繊細で敏感なのよ。
普段無表情のあなたが、あからさまに慌てたり浮かれたりしちゃって。
そう二年前と同じ。またあなたが悲しむのは見たくないのだけれど。
今度こそ、うまくいくといいわね。
私は、あなたの幸せだけを祈っているのだから。

あ、来たみたい。
何よ、おしゃれなんかしちゃって。でも、かわいいじゃない。
まあ、前の女よりは素直で良さそうね。
今日は、雨降りデートだけど、私もついているから大丈夫よ。

そう、私はブルーでチャーミングな、あなたの「傘」
あなたの側にいられることが、何よりも幸せ。
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