サンタクリーム

文字数 5,711文字

 クリスマスも おわりました。
 そんな あるよる まどのそとで なにか ひかっています。
 「なにかしら?」
 ミウが そとにでてみると ごみすてばに すてられている ちいさな クリスマスツリーが キラキラと ひかっています。
 「おかしいな? でんきもないのに」
 くびをかしげた ミウは そのクリスマスツリーを ひろいあげました。
 そのしゅんかん! クリスマスツリーは フワリと ちゅうに うきあがり ミウをぶらさげたまま あっというまに よぞらに まいあがって しまいました。
 スポ~ン!
               *
 まわりは おほしさま だらけです。
 「オハヨ~!」「オハヨ~!」
 おほしさまは どんどん あつまってきて ミウの せなかや あたまに のっかってきました。
 「よるなのに オハヨ~なんて ヘンなの?」
 クリスマスツリーが いいました。
 「おほしさまは よるに めざめるから オハヨ~って ひかりながら あそばないと ぶつかっちゃうのよ」
 おほしさまを てのひらにのせると 「オハヨ~ ミウちゃん!」と ミウのなまえを よびました。
 「どうして わたしの なまえを しっているの?」
 「ふれるだけで なんでも わかるンだ」
 クリスマスツリーが いいました。
 「さあ ミウちゃん しっかり つかまっていてよ!」
 スポ~ン!
               *
 そこは はいいろの せかいでした。
 「さむいネ~!」「さむいネ~!」
 「ウ~さむ~」「ウ~さむ~」
 たくさんの ゆきたちが クルクルまわりながら おちていきます。
 「クリスマスツリーさん。さむいよ~」
 ミウは ブルブルと ふるえていました。
 「ワハハッ!」「ワハハッ!」
 たくさんの こおりの つぶたちが わらいながら とおりすぎ ミウのからだに コンコンと ぶつかってきました。
 「いたいよ~さむいよ~! クリスマスツリーさん さっきの ほしぞらが よかったのに なぜこんなとこ とぶの~」
 クリスマスツリーが いいました。
 「がまん がまん。ここをとおらないと あたたかいとこに いけないンだよ」
 ブルブルブルブル! さむくて さみしくて なみだまで でてきちゃいます。
 スポ~ン!
               *
 めのまえが パッと あおぞらに なりました。
 「ポカポカ ス~」「ポカポカ ス~」
 「ホカホカ フ~」「ホカホカ フ~」
 たくさんの おひさまの あかちゃんたちが ぷかぷかうかんで あったかそうに ねむっています。
 うすピンクの くものような わたアメが ぷかぷかと うかんでいます。
 「ミウちゃん したを みてごらん」
 ミウは くものしたをみて アッ! と こえを あげてしまいました。
 なんと まあるいケーキが チラチラ ひかりながら うかんでいるのです!
 「なんなの? あのケーキ?!」
 「ハハハッ あれが ぼくたちの ほしなンだよ。さあ わたアメくもを ぬけて ちゃくりくするよ」
 スポ~ン!
               *
 サンタクロースのほしに おりたつと あしもとから あまい においが してきました。おもわず ミウは ペロリと ひとなめしてみました。
 「ソフトクリームだ!」
 そう ここは アイスでできた おほしさまでした。まわりの もりのきは ぜんぶ クリスマスツリーで そのかざりが キラキラと かがやいています。
 ところどころに タナバタさまの タケも みえかくれしています。
 ミウが くちを ぽかんと あけていると そのもりのなかから りっぱな しろいひげの おおがらな サンタクロースが のっしのっしと でてきました。
 スポ~ン!
               *
 「やあ よくきたね ミウちゃん」
 「サンタさん! ほんもの?」
 「もちろんだよ。わしは おおサンタとよばれておる。よろしくな」
 「いっしょにきた クリスマスツリーさんは どこに いっちゃったの?」
 「すてられても ここにもどって うまっていれば こどもたちの ゆめにあわせて クリスマスツリーの たいぼくに なれるからさ なにしろ ここは そんなこどもたちのゆめで ふくらんだ おほしさまだからな」
 「サンタクロースの おほしさま?」
 「そうだな」
 「すご~い! でもさ なんでわたし ここにいるの。それが わかンない?」
 「ワハハッ! それは むりもないこと。じゃあ ついてくるといい」
 スポ~ン!
               *
 サンタさんに ついていった ミウは めを まんまるにして ビックリ!
 クリスマスツリーの もりの あきちには リボンのついた プレゼントのはこや きんいろの たからばこが こやまの ように つまれていました。
 そのまわりには なんにんかの サンタさんや なんだいかの ソリや トナカイが とまっていました。
 「サンタさん これ ぜんぶ クリスマスプレゼントなの?」
 「そうさ ここから こどもたちに とどけるんだよ うえを みてごらん」
 みあげると クリスマスツリーの こづえのうえを とびかう サンタさんのソリが みえました。
 そのうちの いちだいのソリが そのあきちに ふわりと おりたちました。
 スポ~ン!
               *
 メガネをした こがらな サンタさんが こしを トントンしながら おりてきた。
 「ああ やれやれ こしがいたくて いたくて たまらん もう サンタクロースの やめどきじゃな」
 サンタさんも トナカイも まっしろないきを フウフウはいて います。
 「ねえ めがねサンタさん。わたし てつだってあげようか?」
 「ほんとうかい?」
 「いいわよ そのかわり わたしのおうちまで おくってくれる?」
 「ああ おやすいごようさ たすかるよ」
 「やった!」
 サンタさんの ソリに いちどは のってみたかった ミウでした。
 スポ~ン!
                *
 でも おおサンタさんが あわてて とんできました。
 「やめろ! めがねサンタ。ソリにのせたら ミウちゃんは どうなるか わからないぞ」
 めがねサンタは わらって いいかえした。
 「ハハハッ まだ こんなこどもじゃ かるいから ソリも トナカイも きづかまい しんぱい いらんよ」
 「やった! わたしまねだけでも サンタになってみたかったの じゃあ てつだうネ」
 「ああ ありがたいね。これで すこしは らくになる。サンタクロースも つづけられるってものさ」
 よろこぶ ふたりをみて おおサンタさんは ちょっと ふあんそうです。
 でも ミウは プレゼントを ソリに つみこむと めがねサンタと いっしょに ソリにのりました。
 「しゅっぱ~つ!」
 トナカイが ちゅうに むかって あしを ひとかきすると ふわりと うかびました。
 スポ~ン!
               *
 ところが ちきゅうに ちかづくにつれ ミウは ひげのはえた サンタクロースの すがたに かわりはじめましたのです!
 「めがねサンタさん。わたし ほんとうの サンタクロースに なっていない?」
 めがサンタは ちょっと あせって いいました。
 「ほしにもどったら もとのミウちゃんに もどるから へいきじゃよ。それよりも おとうさんも おかあさんも しんぱいしてるだろうから せめて プレゼントを もっていって あんしんさせて あげなさい」
 ミウが まどから なかをのぞくと ママとパパは なみだを こぼしています。
 「ママ パパ! わたしミウだよ。ちょっとサンタさんになっただけ すぐに かえるから あんしんして」
 ママとパパは とつぜん あらわれた サンタクロースに びっくり!
 ママがさけびました。
 「ふざけないで! ミウは こんな ひげのはえた おじいさんじゃないわ!」
 パパも おこりました。
 「かえってきて ほしいのは ちいさくて かわいい おんなのこだ!」
 と プレゼントを なげつけられました。
 スポ~ン!
               *
 ミウは なきながら サンタクロースの ほしに もどりました。
 「おおサンタさん! わたし サンタクロースより やっぱり ママとパパの こどもがいい。もう かえりたい!」
 なきじゃくる ミウを まえにして おおサンタが こまったかおで いいました。
 「ミウちゃん ソリも トナカイも サンタクロースじゃないと とばないんだよ」
 「いやだ! もとのミウになって すぐに わたしをかえして~」
 はなしを きいていた めがねサンタが おおサンタに いいました。
 「なあ おおサンタ。サンタクロースにばけて のれば いいんじゃろう?」
 「ばけるって どういうことだ?」
 「ほら まえに あそびでつくった ホレ あの ピンクいろの いしょうで どうだろうか?」
 「ピンクいろ!」
 スポ~ン!
               *
 めがねサンタが ピンクいろの いしょうを てにして きました。
 「さあ ミウちゃん これに きがえるといい。トナカイは めがわるいから あかもピンクも わかるまい」
 ミウはいそいで ピンクの サンタクロースいしょうに きがえました。
 さらに めがねサンタは ヒゲソリを てにして きました。
 まわりの サンタさんたちは ざわめいた。
 「おいおい めがねサンタ。サンタクロースの ひげを そるとは なにごとだ!」
 おおサンタも いいました。
 「めがねサンタよ サンタクロースが ヒゲをそった ためしはない。どうなっても おれはしらんぞ!」
 「わしのせいで ミウちゃんは ないておる。ぜったいに ちきゅうに かえすんじゃ! やれることは なんでもやるさ」
 めがねサンタは ミウのあごに てをかけると ゾリゾリ! と いっきに ひげをそりおとしてしまった!
 スポ~ン!
               *
 「オオオ~!」
 とりまいていた サンタクロースたちは おどろきの こえをあげました。
 なんと ひげを そりおとした しゅんかん ミウは ぼわっと おおきくなって おねえさんサンタクロースに なったのです。
 めがねサンタは ホッとしました。
 「よかった ちょっと おとなに なってしまったが だいせいこうだ!」
 おおサンタが うなっています。
 「ううむ なんと きれいな サンタクロースだ。これで ソリが とんでくれたら だいせいこうだが?」
 ミウは ソリに のりこむと むちを ひとふりしてみました。
 トナカイは ちゅうにむかって あしをかくと ソリは ふわりと うきあがりました!
 「オオオ~!」
 スポ~ン!
               *
 かんせいが わきおこりました。
 「せかいで はじめての おんなのサンタクロースの たんじょうだア~!」
 「ちょっと おねえちゃんに なっちゃったけれど おじいさんサンタで なくて よかったわ。でも ピンクいろで サンタクロースって わかって もらえるのかしら?」
 おおサンタは うなづきました。
 「あかだからこそ サンタクロースだからなア~ ううむ?」
 ミウは えみを うかべて いいました。
 「そうだわ なまえを かえましょう! このほしは ソフトクリームで できているから サンタクリームって どうかしら?」
 おおサンタは ポンと てをうちました。
 「サンタクリーム? いいじゃないか。なあみんな~」
 あつまっていた サンタクロースたちは かおを まっかにして おおよろこび!
 「サンタクリーム! サンタクリーム! サンタクリーム! バンザイ~!」
 スポ~ン!
               *
 さっそく サンタクリームは ソリにのりこみ ちきゅうを めざしました。
 そして わがやの にわに そっと ソリをとめると まどから おおうちのなかに とびこみました!
 「ママ パパ! ただいま!」
 ママとパパは おどろきのあまり めをパチクリ! そして まじまじと ミウを みつめました。
 ママが つぶやきました。
 「なんてこと ミウに そっくりだわ!」
 パパもいいました。
 「めのしたの ちいさなほくろも ちゃんとある。ちがいない ママ ミウだよ!」
 「わたし サンタの くにに いっていたら おねえちゃんサンタクロースに なっちゃった。でも パパ ママ ゆるしてくれる?」
 「ミウ もちろんだよ!」
 「おかえりなさい!ミウ」
 ママは ぼうしをとって かみのけを やさしく なでてくれました。
 「ママ パパ わたしね サンタさんの せかいで はじめての じょせいサンタクロースになれたの。ピンクいしょうの サンタさんは サンタクリームって いうのよ。これからも こどもたちのために がんばりたいの いいでしょう?」
 「もちろんよ サンタクリームさん」
 「パパも じいさんサンタより サンタクリームを おうえんするからな がんばれ!」
 ママがちょっと パパをにらんだ。
 スポ~ン!
               *
 そして すうねんご サンタクロースのほしでは ヒゲをそりおとし かっこいい サンタクロースが あらわれたというが ミウのサンタクリームには かなわないらしい。
 クリスマスの よる せかいじゅうの おとこたちは よぞらをみあげ ことしこそ サンタクリームにと ねがっているそうな。
 スポーン~
               *
               おわり
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