第1話 『雲』

文字数 472文字

ある日 雲に乗った。

底が抜けるかと ヒヤヒヤしたけど
一歩足を踏み入れると
雲はポヨ〜ンと
僕の足の裏を優しく押して
弾むように歩けた。

雲が「食べてみろ」と言うので
「じゃあちょっとだけ…」と言って
僕は雲の端をちょこっとだけ手でちぎり 
一口食べた。

ちぎった雲は《シュゥ〜〜》という音を立て
口の中で煙のように溶けていった。
冷たくもなく 熱くもない。
ただほんのり甘い 
綿菓子のような味がした。

次は「寝ていけ」と言うので
「じゃあちょっとだけ…」と言って
ポヨンポヨンしている雲布団に
ボスン…とあお向けに寝そべった。
のんのんのんと ゆっくり動く雲布団は
サイコーの寝心地で
僕のカラダも雲の一部になった。

寝転んだまま上を見ると
雲のないもう一つの空が
僕の目の前に広がっていた。

真っ蒼な空にはチリひとつなく
最初はとても気持ち良かったけど
だんだん何だか落ち着かない。
急に不安になって 
ギュっ…と目を閉じた。

気がつくと僕の両手も
ギュゥ…と雲布団を握りしめていた。

雲から見た雲ひとつない空の下で
僕は雲のある空が好きなんだと 
はじめて気がついた。

そして今日から僕らは
親友になった✨
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み