本編

文字数 435文字

「先生は魚の夢を見ますか?」
「魚になる夢かな?」
「いいえ」
塾の帰りに、雨が降ってたんです」
「住宅街まで歩いても止まなくて、足元ばかり見てたんです」
「電柱の灯りが点滅してました。その下にあれがいたんです」
「あれって?かい」
「はい」
「スーツを着た人がいるなと思ったんです。傘もささずに」
「おかしな人かもしれないから、顔をそらそうとしたんですが」
「雷が鳴って、周りが明るくなったんです」
「電柱にね」
「スーツの上に魚の顔があって、髪の毛も生えてるし、腕時計も・・・してたのに、魚なんです」
「それは」
「夢なんです」
「それから毎日毎日、夜道の電柱に、あれがいるんです」
「私の家に近づいてる」
「昨日は、私の家の前にいたんです」
「家の前にいたんだね。親御さんには」
「話しました。カーテンを開けて、いないって言うんです」
「でも見えるんだね?」
「はい」
「弱めの抗不安薬を出すね」
 先生が言ってることはまだ聞き取れる。
 でも、もうだめかもしれない。

 先生の身体から海のにおいがするから
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登場人物紹介

女子高生

塾帰りに見たものは…

カウンセラー

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