第1話 始マり

文字数 1,419文字

眠れない。そう思い始めたのは最近のことだ。いや、最近気づき、言語化できただけで、子供のころからずっと思っていた。
味気ない。学校や友人と遊ぶ場でさえも、そんな風に感じるようになってしまった。
嫌気がさし、夜遊びや少し危険なこともしてみたが、結局それはただの一時的な快楽、その場しのぎでしかないと悟った。
非日常というのは、回数を重ねるごとに薄れていくものなのだ。
ただ、そんなことを思いながら生活していると、嫌なこと、くだらないこと、そんなことばかりを教室の席、ベッドの上の布団の中、場所を選ばず反芻してしまう。
「散歩でもするか」
ベッドの上でそんなことを考えるよりかは建設的な時間になると考えた私は、外に出てみることにした。
私の家は公園近くにある団地の一番上の階だ、一番上といっても三階しかないけれど。
ドアの開閉音がよく響き、柵は錆びている。
階段を下り、あたりを見渡した。
切れかかった街灯が、手入れのされていない植え込みを照らしている。
つくづくここはガラの悪い場所だ。
そう思いながらそこを後にし、歩みを進める。
公園についた。子供のころ、よくお母さんと来た場所だ。
自販機で水を買って公園内を歩いていると。ベンチに影が見えた。
子供...のように見えるが、ありえない、今は午前3時だぞ?
近づくべきか迷ったが非日常を求め、前を横切った。
一瞬、こちらの方を向いたのが見えた。
それと同時にやはり影の正体は、小学生くらいの男の子だということが分かった。
男の子は、私にびっくりしたらしく、少し声を漏らしていた。
その反応に親近感を覚えた。私も以前、同じような体験をしたことがある。                                
踵を返し、男の子に声をかけた。
「ねぇ」
男の子は今度は音を出さずに驚き、こちらの様子をうかがいながら私の次の言葉を待っている。
「キミ、こんな時間に何してるの?」
陳腐な質問だが、確かに知りたいことだった。
「・・・」
男の子は沈黙を続けていた。
「よいしょ」
私は男の子の横に腰を掛けた。
「私は怪しい人じゃないよ」
そう話しかけた後に気づいた。自分の服装にだ。
ノースリーブのシャツに短パン、左手に水のペットボトルを持っている。
下着をつけていなかったので、少しシャツに透けているかもしれない。                                
変態、不審者と言われても納得はできるような服装だった。
「あなたこそなにしてるんですか?」
今度は私がびっくりした、突然の質問に。
「えーと、散歩?」
ますます怪しく見えるかもしれない。男の子からもそういった類の警戒の目が強くなった気がする。
「最近、いや、ずっと眠れなくってさ」
その言葉に、男の子からの警戒心がまた強くなった気がした。
いや、これは、、、親近感のようなものだ
「そうなんですか?」
この男の子も眠れなくてこんな廃れた公園にいたのだろうか。
「うん、君も?」
「いや、そういうわけじゃないんですけど...」
男の子が何か言おうとしている時だった。私たちの前に誰かが立っていた。
「ひっ!」
思わず声を漏らした。なぜならその人影は、身長は180センチほどあり、フードを顔までかぶって明らかにこちらを向いて仁王立ちしていたからだ。
男の子を連れて逃げようとしたが、体に力は入らなかった。
いつの間にか意識は途切れ、気が付くと・・・
「どこ?ここ」
中世のイタリアのようなの部屋でベッドに横たわっていた。
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