第1話

文字数 2,169文字

 人生五十年って言う言葉を覚えてから久しい。

という私も六十歳を迎える歳になってしまった。六十歳なんて相当のおじいちゃんだよな。と思っていた若き頃も思い出してしまう。
 いざ自分が六十歳になってみると、思った以上に精神年齢は若い。高校・大学自体と全く同じ。つまらない話題でビールを片手に、何時までも騒いでしまう。若い頃より増えた話題もあって、それは健康と年金。これは仕方ない。人間ドックの結果に、BとかCの項目が増えるのだから。でも、本当は真剣に考えなければならない健康話題も、仕方ないよ、歳だから。で終わらせるあたりは全く緊張感もない。

 さて、何となく六十歳位まではしっかり働いて、その後は少し働いて、何となく年金を貰える迄頑張って、その後は余り贅沢もせずに、家族と年に二回か三回程度の旅行をしながら過ごす人生を思い描いていた。
 大きな病気もせず、それなりに楽しい時間を過ごして来たけれど、自分が本当にその様な年齢に達すると、中々自分が考えていた事も、それ程簡単な事でも無いことに気がついた。
 私よりも優秀で仕事も出来る人達が、余り恵まれない環境で、どんどんと会社を去って行くのも見ていたけれど、我が身に同じ事が降り注ぐと、それはそれは辛い辛い毎日となってしまった。

  夜の寝つきは悪くなるし、寝たと思っても直ぐに目が覚め、中々眠れなく毎日は辛くて辛くて。
  私が見てきた人達も辛かっだろうか。理不尽な事にどのように耐えてきたんだろうか。今では想像しか出来ないけど、明るく頑張ってる姿を見ると尊敬してしまう。私みたいに辛い夜を過ごしたんだろうか。家族とどの様な話をしたのだろうか。もう聞くことはできないけれど。

  しかしながら、こう言う話をしてみると、「仕方ないよ。ジジイは会社に要らないんだから。」と励ましてくれる妻には本当に感謝に絶えない。私自身はネガティブな性格で、クヨクヨとしてしまう事が多いけれど、全てを受け入れて前を向かなきゃ。という姿は本当に気持ちを楽にしてくれた。
  子供たちも成人はして働いてはいるけれど、私の所得が落ちてしまうと、今まで通りの事をしてあげられないのでは? と、不安感を持ち続ける私は正しく無いのだろうか? まぁ、思ったよりも時間が1年前倒しされた。と思って開き直るしかないし、今このタイミングだからこそ、お会い出来る人も出てくるだろうから、その人たちとの新しい出会いや関係性を大事にしていきたいな。とも思う。
  その一方で、その場を損得だけで勘定し、人に寄り添えない人が居ることにこの歳で気がついた。それはそれで大発見。今後の生活の糧にしていかないと駄目だとも思う。

  また、幸いにも、私の身を案じ、色々と動いてくれそうな諸先輩が居ることもありがたく、本当に感謝に絶えない。この不安感の最大の問題点は、私が今の会社にしがみついて、今の所得を確保したい。という事であろうと気がついてもいるものの、中々吹っ切れないのも事実。この辺りは私の不徳の致すところかもしれない。最も、私の年齢で同じレベルの所得を得ている人は多分少数派だから、そろそろ私自身も環境を受け入れて、前を向いて行かなきゃ駄目だな。と言うことで頑張っていこう。

  私は自分勝手で、周りの人達に良い影響を与えて来れなかったと思うけど、そういう私を暖かく迎え入れてくれて、色々と手助けしてくれる人達に改めて感謝。恨みつらみを言いたいのも我慢して、相手してはいけない人の相手をするのはやめよう。私が負のオーラをまとってしまうから。

  さて、そんなこんなで、最近文章を書いてみている。文章を書く事は苦手では無いし、書くと少し考えも整理出来るし、自分が本当に何を考えているかも、文字にするとよく分かる。
  先日も、図々しくも、新人文学賞などと言う大袈裟な物にも応募してみた。残念ながら、先方からは何の連絡も無いので、ズブの素人が書いた文章なんて、全く興味無い。って事か? まぁ、出張中の新幹線移動中に、空いた時間に書き上げたものなので、それが何かの賞を取ってしまうと、本当に文学が好きで頑張っている人達に申し訳ない。

  そう言えば、昔から妻に、「貴方が何をやりたいのか、何を目標にしているのか分からない。」と言われていた事を思い出した。上にしたためた様な内容で思い悩む人は、人生の目標が無いからだ。と、インターネット検索結果として出てくる。自分自身が目標を持っていれば、様々な環境の変化等をしっかりと受け止め、その場その場で適切な対応と心の準備が出来るかららしい。逆に言うと、その様な目標が無いと、その場その場でただただ不安を覚え、それが中々解消されないらしい。確かに今の私は単に不安感を覚え、怯えているんだと思う。でもそれって、人間だからしょうがないよね。と自己肯定。だから夜眠れないのか? と反省。そういう意味では、私の一番嫌いなその日暮らしだったんだな。を加えて反省。

  さて、私はこの後どうやって生きていこう。もう、クヨクヨしながら生きていくのは嫌だな。と思う。あの時にああしておけば、こうしておけば。と反省しきりだけど、もう戻ってこないし、今の選択をしたからこそ広がった世界、広がる世界がある事を、今後の目標として頑張っていこう。
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登場人物紹介

人生転んだりつまづいたり。

でも明るく生きてます。

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