プロット

文字数 1,392文字

起)
 あらゆる分野のクリエイターを育てるための小学校、『エレメンタリー・クリエイト』に通う月読夜子は5年生の内気な女の子。クリエイターになるための特殊な授業や行事が多く行われるその学校で夜子は憧れの小説家になるためにがんばっているが、書く小説はどれも先生に「文章力はあるが物語に『感情』がない」と評されてしまう。それもそのはず、夜子は臆病で奥手な性格が災いし、いままで感情を共に分け合えるような友達がいなかったのだ。
 そんなある日、爽やかな性格のイケメン、(はやて)が転校生としてやってくる。持ち前の明るさでクラスに馴染む颯を当初は別次元の存在として見てしまう夜子。しかし絵の展示を見るのが好きな夜子は油彩画を専門とする颯と放課後の美術室で偶然出くわして、そこでお互いの趣味が重なることを知る。
 夜子は初めて同級生と趣味を語り合うことのできたその日の夜、あまりの喜びの感情にウズウズと湧いてきた創作意欲に任せて短編小説を書いてみると、これまでにない良作ができあがる。

承)
 颯の誘いで美術館へと遊びに行った夜子はそこで「私とお友達になってください」と颯へ告げる。「もちろん」と頷いてくれた颯は、友達ができたことがないというコンプレックスを抱く夜子に対して友達作りを手伝うと申し出る。
 颯のアドバイスのもと、夜子は持ち前の文章力を活かし、クラスメイト達の漫画作りや脚本作りの手伝いをして次第に友達は増やしていく。夜子のその懸命さと心優しさに、次第に颯は夜子のことを意識していくように。
 また、夜子のその積極的な行動によって得られたさまざまな経験や感情が刺激となり、以前までは欠けていた『感情』が夜子の小説へと宿るようになる。学内外へと自身の作品を発表することになる特別行事『芸術祭』前の評価で、夜子は小説家志望の生徒の中ではトップクラスの評価をもらえるようになった。

転)
 芸術祭に向けて夜子は長編小説を書くことに。友情をテーマにしたその小説は苦労を重ねながら、しかし颯や友達の支えもあってなんとか完成した。
 しかし芸術祭の直前、そんな夜子の小説の内容が盗用されてすべてWebへと上げられてしまう。未発表作品のみの発表しか許されない芸術祭へと夜子の小説は出せなくなってしまった。
 生まれて初めて感じた自分に対する純粋な悪意とみんなの期待を裏切ってしまうことにショックを受け、自分の殻に閉じこもりそうになる夜子だったが、しかし自分のために最後まで諦めずに奔走し、怒り泣いてくれた颯を見て、夜子の心に新しい感情が灯る。
 我が事のように夜子のことを想ってくれる颯への恋心に気が付いて、夜子の創作意欲に再び火が点いた。

結)
 残り僅かな時間を使って夜子が書き上げたのは短編の純恋愛作品。満足のいく作品が書けたことを颯や友達と共に喜んでいると、夜子の作品を盗用した犯人が見つかったと報せが入る。犯人は最近になって存在感の増した夜子を快く思っていないクラスメイトの女子。夜子はしかし、その子を責めたりはしなかった。
「このことを恨んだりしないよ。あなたのおかげで私の感じたいくつもの新しい感情たち、そのすべてが私のためになったから」
 小説家を志す自分自身に少し自信が芽生えたものの、しかしまだまだ臆病の治らない夜子は颯への恋心を胸に留め、その煮え切らない感情を力に変えて夢に向かって努力しようと気持ちを新たにする。
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