完璧じゃなくていいんだよ

文字数 999文字

(かける)が両親を亡くして一か月が経った。

潮来(いたこ)(かける)は、
自分のところにやってきた幽霊(ゆうれい)
対話が出来た。

当然、亡き父、亡き母と、
対話する日々が続いていた。


ある夜の事。
いつものように、
独り言をブツブツ言っていると、

それを聞いていた、
右上方に居た父が
(かける)にはもっとお金を
たくさんあげればよかった。」
と言い出した。
 
それを聞いた、
左上方に居た母が
(かける)にはもっとお金を
たくさんあげればよかった。」
と、父と同じことを言いだした。


二人は常に、
「もっとお金をたくさん
あげればよかった。」
「もっと甘やかして
あげればよかった。」
(きび)しく育ててしまって、
本当にごめんなさい。」
「お父さんとお母さんの
子供でいてくれて、
ありがとうございました。」
と、子供に対して
(きび)しすぎたと思い込んでいる、
生前の親としての言動について後悔し、
時には敬語まで使って
謝罪(しゃざい)感謝(かんしゃ)をしているのだった。


徹夜(てつや)してしまった(かける)が、
早く寝なければならない、
と寝ようとしていると、

自暴自棄(じぼうじき)にならないようにね。」
「たまには運動をした方がいいよ。」
と、子供可愛(こどもかわい)さから、
次々と、(たた)()けるように、
体の健康維持のための
アドバイスをしてくるのだった。


「寝られないな~。」
(かける)は、時計を見た。
もう、朝の六時を回っていた。


「なんで、そんなに後悔しているの?
お父さんも、お母さんも、
僕を育てるために、
血の出るような思いで働いて、
学費や食費を(かせ)ぎ出して、
与えてくれたじゃないか。

ゲームだって、
いっぱい買ってくれたじゃないか。

僕は甘えてばかりいたよ。

ご飯だってたくさん食べ過ぎて、
太っていたじゃないか。

・・・僕は、完璧(かんぺき)な、
聖人君主(せいじんくんしゅ)以外の人間を、
ひどい人だなんて思っていないよ。

だったら、生きている人間なんて、
僕を含めて、全員、
ひどい人になってしまうじゃないか。

・・・お父さん、お母さん、
どうか、
完璧(かんぺき)ではないことを責めないでください。

聖人君主(せいじんくんしゅ)ではないからと言って、
自分を責めないでください。

・・・お父さんとお母さんは、
僕を一生懸命(いっしょうけんめい)育ててくれた。

僕が今思っていることは、
()んで(そだ)ててくれた
感謝(かんしゃ)』だけです。

お父さんとお母さんには
感謝(かんしゃ)』しかないのです。

・・・完璧(かんぺき)ではないことを、
責めないでください。

百点ではないことで、
(なげ)かないでください。

僕は、
百点しか認めない人間ではありません。
人間なんだから、
完璧(かんぺき)じゃなくていいんだよ。」


果たして、(かける)の父と母は、
子育てに関する後悔の気持ちを
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登場人物紹介

翔(かける)

死者の霊との対話能力を持つ潮来(いたこ)。

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