プロット

文字数 1,492文字


 せせらぎ村。以前そこは土地柄からりと乾燥していて心地よく過ごせる穏やかな場所であった。しかしいつからか季節の移ろいがあまり感じられないほど寒さの滞留が長引いていて、誰もがその異常気象に慣れつつあった。
 その村に住む14歳の七日(ななか)は村にある唯一の鍛冶屋の娘。長らく続く冬の寒さの中、唯一の家族であった父を亡くす。父とは血が繋がっていなかったが、七日のことを可愛がり面倒見が良かったため、七日にとって、とても自慢で大好きな父だった。その父が亡くなり、その鍛冶屋に代々伝わる刀「鬼切丸」を継ぐこととなった七日は、鬼切丸の『鞘』として守り生きていくことになる。
 しかし、尊敬していて大好きだった父が亡くなって孤立する一方の七日。父を通して周りと関わっていたため、交流の仕方がわからなかった七日は、人離れしたような銀色の色素の薄い髪も相まってどんどん孤立していき、しまいには感情が欠落して行ってしまった。


 ある日、七日が村へ戻る道すがら、隣の村の大人たちにたかられた一回り小さな男の子に出会った。見たことのない冷えた青い目をしたその姿を忌み嫌うような暴言を吐く大人たち。人と違うことで責められる姿が自分に重なり、七日は自らの意思で助けに入った。気弱で軟弱泣き虫なその子はミヅキと名乗り、ひとり長い間旅をしているのだと言う。以来、ミヅキは七日と共に暮らすようになる。
 ミヅキはとても懐こく優しい性格をしていたので、目の色のことがあっても七日と村に帰るとすぐに同年代の子どもの輪に入り楽しく過ごす。そうして、ミヅキは七日と村の人たちとの掛橋になり、打ち解けはじめた。




 本格的な冬が来た。わずかな季節の移ろいを感じさせるのがこの本格的な大寒波で、今年は昨年よりやってくるのが早かった。時同じくして近くの村の間で失踪事件が流行り出した。そんなとき、突然ミヅキの姿も見えなくなった。
 ミヅキも被害にあったのではと心配になった七日は村を下り、山の麓まで出て行った。そこは以前ミヅキと出会った場所。七日がそこに立つと何やら悲鳴が聞こえ、ハッとして山中へと踏み込んだ。そこには、氷漬けにされた隣村の人たちと雪化粧に包まれたミヅキがいた。失踪した村人たちは、皆七日とミヅキを忌み嫌っていた者たちで、山中でたくさんの氷細工のようにして並べられていた。村人失踪事件の原因は、雪女の血を引くミヅキによるものだった。


 ミヅキは、本当の名を三月(さんがつ)と言い、ずっと生き別れてしまった姉を探していたとのことだった。その姉の名は七日。つまり七日もまた雪女の血を引く子どもであった。
 三月は共に人里を離れ生きていくことを七日に提案するが、七日は三月のした村人を氷漬けにしたことが認められず断ろうとする。すると三月は七日すら氷漬けにしようとし、七日は咄嗟に身を守ろうと鬼切丸を振るった。
 三月は鬼切丸によって斬られ倒れ込む。人を殺してしまった、と青くなる七日だったが、三月は眠りから覚めるように目を覚ます。そしてその目はすっかり常人の目になっており、青くなくなっていた。同時に氷漬けにされた人たちもすでに皆解放されていく。そう、鬼切丸が斬ったのは、三月の命ではなくその命に刻まれた雪女の妖力だった。
 鬼切丸とはただの人殺しの道具であると思っていたが、実は妖力を焼き尽くす刃だったのだと知った七日は、記憶共々失った三月を村に連れて帰り、鬼切丸を背に旅に出る決意をする。三月を村に残し七日が去った後、その村に雪解けの春のような暖かさが舞い込んだ。その日は、三月七日だった。
 その後、七日を見たものは誰もいない。
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