第3話

文字数 526文字

 星先輩は、南総合病院に入院しているという。
 どんな病気なのかは私も知らない。だけど、もし命にかかわる病気だったらと思うと、心臓が握りつぶされそうに痛くなる。
「星先輩っ……!」
 私は急いで、彼のいる病室に駆け込んだ。
「大丈夫ですかっ⁉」
 桃に教えてもらった、先輩の好物だというみかんグミも持ってきた。驚いたように目を見張る彼の腕には点滴がしてあって、痛々しくて目をそらした。
「何、よるちゃん……そんな、大事じゃないし……」
「そんなわけ、ないですよね?倒れたって聞いて、お見舞いに来たんです。友達から聞いたんですけど、先輩の好物だっていうみかんグミも持ってきまし……」
「来なくていいって!」
 先輩の怒鳴り声が、私を貫いた。
 私は驚いて口をつぐむ。怒るのに慣れていない先輩が慌てたように「あ……」と呟く。
「ごめん、よるちゃん……言い過ぎた……」
 ドサッ。
 私は、手に持っていたみかんグミを病室の床に落としていた。それすらすぐには気づかないくらい、気が動転していた。
 体が動く。もう、星先輩のことを見ていられなくて、病室を飛び出した。
 星先輩の「よるちゃん!」という声が背中を追いかけてきたけど、振り返る気力すら起きなくて、泣きながら病院の廊下を歩き続けた。
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