第1話

文字数 588文字

 「子どもらしい」とか「女らしい」とか、「らしい」って何だろう?
 
 演劇部に入部して、そんなことを思うようになった。
 芝居なんてしたことなかったし、観たこともなかった。だから、まさか演劇部に入ることになるなんて考えたこともなかった。いや、そもそも部活なんて面倒だなって思ってたし。

 この学校には、かなり前のことらしいけど、演劇科があったんだそうだ。女子高で演劇科というのも珍しいとは思うけど、生徒が集まらなくて、学校経営があぶなくなったんだって。そりゃそうだろうな、と、子どもの私でも思う。で、どっかの私立の学校が買い取って、名前変えて、今に至る、というわけ。居抜きみたいなものね、と母親が言っていた。
 居抜きみたいなものかどうかはわからないけど、いわゆる体育館は、ホールなんて呼ばれているし、卒業証書授与みたいなことが行われる舞台にある緞帳はむやみに立派だし、照明や音響設備もすごいみたいだし、そここに演劇科の名残りはある。でも、だからといって演劇部が盛んなのかというと全然そんなことはなくて、廃部寸前で、顧問の先生も保健体育の先生というような状況だ。そんな部だから、活動という活動もないし、先輩後輩の絡みもなさそうだし、どこかに入部しなければならないのなら、ここがいいか、なんて思って、つい入部届けに名前を書いてしまったというわけ。それなのに、まさか役付きになるなんて…。
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