第1話

文字数 1,335文字

「何かキミって、エロいね」



「………はい?」



何を言われたか、一瞬理解できなかった。



と言うより、頭が真っ白になった。



生まれて十七年。



何事にも平凡で無難に生きてきた私に対し、目の前のオトコは一体何を言い出すのか。



目の前のオトコは、学校で1番イケメンだと言われている。



言わばカリスマ性のある、美青年だ。



いつも誰かに囲まれていて(主に女の子)、何事にも率先してまとめ役をしている。



流行を取り入れた格好をしているが、学生としての態度は真面目で優秀。



だから彼は多くの人に好かれる。



そんな人と私が二人っきりで一緒にいる理由は、たまたまだ。



放課後、食堂近くの休憩場でバッタリ会った。



そして紙パックのオレンジジュースを奢ってくれた。



一口飲んで、一息ついた途端のセリフ。



思わずノーリアクション。



「ジュースの飲み方もそうだけど、存在自体が何となく」



「………地味、ではなくて?」



「うん。エロい」



…何かの聞き間違いかと思ったけれど、違ったみたいだ。



彼はにっこりと微笑み、缶コーヒーを飲んだ。



「自覚なかった?」



「全然」

と言うか、今まで誰にも言われたことなかった。



「俺はずっと思ってたけどな。伏し目がちの時とか、考えている口元に手をやる仕種とか。すっごい色気感じてた」



今まであんまりしゃべったことがなかったが…人の性格って見た目じゃないと思った。



軽い会話が得意なハズの彼から飛び出る言葉は、ありえないぐらいセクハラだ。



「あっそう」



彼にどう思われようと、私にはどうでも良いことだ。



そう思い、ストローに口を付けようとした時。



ぐいっとアゴを捕まれ、そのまま―。



「…んっ?!」



―唇が重なった。



唇はすぐに離れたが、頭の中が真っ白になった。



「…言ったろ? 色気を感じるって」



「だからって…なんでキス?」



「欲情したから」



「………」



絶句。という行動を、私は生まれてはじめてした。



いや、これはもしかしなくても…。



「………私のことが好きなの?」



「ようやく気付いたの?」



間近で笑いながら言われても…。



「うん。多分コレが好きって感情なんだろうね。はじめて持った感情だったから、何だかよく分からなかったけど、キスして気付けた」



私の顔を両手で大事そうに包み込み、彼はとろけそうなほど甘い笑みを浮かべる。



「はじめてキミを見た時から、気になっていたんだ。そしてそのうち、色気を感じてた。コレが恋愛感情なんだろうね」



…告白の割には、甘くはないが…。



「そっ…」



「うん。だから俺と付き合って」



「………まっ、良いわ」



彼の両手に触れ、顔を埋めるようにして言った。



きっと気付かれている。



私の顔が真っ赤になっていることを。



『はじめて』の経験をいっぱいさせてくれる彼に、私は心奪われていた。



―そう、きっとコレが恋愛感情。
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