コシノヒカル

文字数 560文字

 コシノハルコは世界的有名なファッションデザイナーだった。
 彼女には、コシノヒカルという息子がいた。
 ヒカルもハルコのもとで、それなりにファッションデザインを手がけていたが、世間から親の七光りというレッテルを貼られ、それをいつか払拭したかった。

 ヒカルは独立して、レンタル衣装の会社を立ち上げた。ヒカルブランドを全国展開、そして世界へと広げたかったからだ。
 だが、それは思いもよらない事態になっていった。
 勘違いした老人が次々にやって来るようになったのだ。
「あのぅ、すみません」
「いらっしゃいませ!」
「コシヒカリを10キロくださいな」
「はぁ? 当店はレンタル衣装のお店でございますよ」
「コシヒカリじゃなくて、コシノヒカルなんですよ」
「あ、そうでしたか。じゃあ『あきたこまち』を10キロ」
「だ、か、ら、米屋じゃないの、レンタル衣装屋さんだから」
「レンタル和尚さん?」
「(お寺かよ)和尚さんじゃないの、衣装屋さんなの、ねっ」
 こんな老人たちが相次いでやって来て、ヒカルは頭を抱えていた。
 そんなとき、息子を心配してコシノハルコがやってきた。
「ずいぶん繁盛してるじゃない」
「違うよ母さん。これこれこうなんだ」
 コシノハルコは笑って言った。
「この際、コシノヒカリのブランド米作って売れば」
「嫌だよ、そんなの畑違いじゃないかっ!」
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