私の恋は勘違い

文字数 3,843文字

 私ってJK

 私は遥香、青春高校二年生。今はお盆で部活も休みだ。友人は遊園地などアウトドアーで楽しんでいるが、私はあまり好きでは無い。だから家で音楽を聴いている事が多いし、いま流行のゲームは時間潰しに持ってこいだ。たまに母と一緒にショッピングに行って洋服を買うけどスカート丈は長めの物を買う。短い物は恥ずかしくて性に合わない。ブラウスは白く可愛い物が好きだ。私は一人っ子で親の期待を一身に集めている様に感じている。精神的な負担が大きいがこれが現実だから渋々受け容れている。出来れば弟が欲しかったが致し方ない。両親を責める訳ではないが、あと二、三人弟妹がいてもいいんじゃないかと常日頃思っている。私の性格は内気で曲がった事は大嫌いだが意外とサッパリとしている。本当に親から生まれたのかと言いたいが言っていない。そんな事言えるわけがない。両親は二人とも少々しつこい。家庭の事に反論でも言おうものならネチネチと何時迄も煩い。父はごく普通のサラリーマンで残業が多いので話は土、日曜日に集中している。母はスーパーでレジのアルバイトをしている。私も高校卒業したら就職して両親を助けたいと密かに考えている。従い就職先は市内か近隣の町を望んでいる。
 高校は市内にある県立高校で自転車を使い十五分くらいで通学できるから嬉しい。それが選んだ理由のひとつだが第一は制服が好きだった事だ。スカートはブラウン系のチェック柄、同ブレザーに白いブラウス。私好みの制服で、普通科三クラスと商業科四クラスがあり私は普通科を専攻している。中学の時に数学の授業中に図形や数式の誘惑に惹きつけられてしまった訳である。然し英語ははっきり言って駄目だ。父に似てどうも横文字は好きにはならない。
 部活は弓道部だ。小学校の時にテレビを何気なく見ていたら三十三間堂の通し矢を見て感激した。中学校には弓道部が無くてテニス部に甘んじていたけど、高校では必然的に選んだ訳である。私は二年生になってから一年生の面倒を見る役割になり、主にゴム弓を使い矢を射る練習を纏めて号令している。一年生は男女半々で私の場合は肩や手の位置を一人づつ順番に見ていた。部活に積極的に参加している者は、部長の貴子に裕子でクラスは商業科を専攻している。あと三名いるが出たり出なかったり。二年生全員が女子だ。男子は一年生の途中で皆んな辞めてしまった。理由はよく分からない。私はよく話をした男子もいただけに少々寂しい。一年生は女子が五名、男子が智也に翔太、他三名。貴子のクラスに親友の恭子がいて、弟の翔太が弓道部に入ったので面倒をみる様に頼まれていた。

 何、告られた

 どう言う事、私って告られたのかな。それは突然訪れたのだ。お盆明け天気の良いある日に久しぶりの部活で学校へ行った。自転車で走って行くと朝だけど暑いが風が吹くと爽やかだ。矢場に着くと夏休みで未だ早い時間だから参加者は少ない。先生も指導に来ていて自らも射ていた。先生は男性で五段を持っていて女子の人気は高い、流石である。私は部室で着替えてから巻藁での練習をした後で的に向かって矢を射ていた。久しぶりなのか的に当たったのは四射中一本だった。私の弓矢は市内の弓道具店で大好きな父に頼んで購入して貰った物だ。愛着があり丁寧に弓矢を手入れしていた時だ。同級の貴子が来て話があるとの事で、少し離れた所に連れて行かされてから徐ろに聞いてきた。

 貴子  「遥香、好きな人はいる?、例えば智也とか」
 私   「は?、いやいや、いない、何で」
 貴子  「何でもない、気にしないで」

 何でも無いって気になるに決まってるではないか。貴子は私からの返事を聞いたらすぐに皆んなの所に戻ってしまった。はあ、なんで私が一年生の智也を好きになるんだ。訳が分からない。貴子は何を言っているんだ。智也が私の事が好きなのか、いや貴子が智也の事が好きなのか、一年生の時から彼氏がいるのにそんな事は無い筈だ。貴子はそれきり何事もなく矢を射て練習しているが、そんな事を言われると気になってしまうではないか。智也は一年生で私と同じ普通科を専攻している。成績も良いらしく、かつイケメンだから一年生に限らず一部の二年生からも人気が高い。裕子の幼なじみが茶道部にいて部活最中に話が持ちきりの様だ。この時期一年生は巻藁に向かい矢を射て練習している。ただ、智也の弓の腕前は私から見ると今ひとつだ。私は一応初段を持っているので多少は分かると自負しているつもりだ。私はその為に一学期は他の一年生より智也の為に時間を割いていた。夏休み中の智也は家の用事で部活には参加していない。一年生の参加は先生の指示で希望者のみとなっている。それからは夏休み中に貴子からの話も無く穏やかな部活となっていた。家でも何の荒波も立たずに静かな生活を過ごしていた。

 一人恋心

 ただこの後、私は一人恥ずかしい勘違いをしてしまうのであった。夏休みも終わり、九月になって二学期が始まった。貴子とは部活以外日中会う機会が無い。私達普通科の授業は選択課目が多いのであっちの教室こっちの教室へと行ったり来たりして、貴子と智也の事は頭から離れ平穏に過ごすことが出来て幸いであった。然し、そんな授業の中でも私達二年生は十一月になると待ちに待った修学旅行がある。台湾か国内の選択があり、私は飛行機は嫌いだから国内にしていた。誰にも言えないけど飛行機はとても怖い。今年は九州へ新幹線で行く事になっているので内心ホッとしている。五、六人のグループで計画して行く所を決める。そんな楽しい時間に、ふと智也にお土産でも買ってくるかなと思ってしまう。何が良いかな、智也は何が好みなんだろうかと、いやいや、何でこんな事を考えてしまうんだ。部活になると智也の顔を見るので必然的に思い出して意識してしまう。本当に貴子は罪深い、私は知らず知らずのうちに智也を目で追ってしまっている。いや駄目だ平常心が無さすぎる。智也を直接見てあげている時には。

(こいつ私を好きなのか、平然としている、私が近くにいるのにメンタルが半端無い)

 と思ってしまうのだ。私としたら内心ドキドキものである。対応が変われば他の人に怪しまれるし、もう困ったものだ。惚れてしまうではないか。デートのひとつくらいは行ってみたいな。そうだショッピングモールが良いな、色んなお店があるし美味しい物も食べたいし。友人に見られたらどうしよう。あと、彼への修学旅行のお土産何にしようか、何が欲しいんだろうか。知りたい所でもあるが、どうしたものか。九州のお土産って何があるんだろう。私は家で色々と調べて、これが良いかあれが良いかと一人で楽しんでいた。夕食時には両親の馴れ初めを聞いたりしてもいた。うちは母が猛アタックをしたようだ。そう言えば、私は小学校の時には一緒に遊んだ男子がいたが、中学生になると疎遠になり高校生では別の高校で全く話さえしていない。恋と言う字から遥かに遠い存在だと改めて思っていたが、私にもいよいよその時が訪れたのだろうか。と微笑む私がいた。

 恥ずかしい

 二学期になって二週間が過ぎようとしている。先週も今週の部活もいつもと変わらず、いや私一人だけ大海原に投げ出されたままになっているが、この所の様子を見ているとどうもおかしい、おかし過ぎるのではないかと思う。貴子もごく普通にしているし、智也の私に接する態度も普通過ぎてメンタル面では無い様だ。と言うのも部活で彼が同じ一年女子に揶揄われて顔を赤くしたのを見てしまった。え、智也ってメンタル強く無いんだ。どう言う事。私と接する時の無表情は何。私は何がどうなっているのか知りたくなり貴子に直接聞く事にした。
 次の日の昼休みに私は商業科のクラスへ行き、貴子を捜して、お盆明けの部活での智也の話は何かを問い質した。すると、智也は全く関係が無いとの事だ。何、どう言う事だ。更に追及するとやっと話してくれた。実は翔太が一学期の部活で私の容姿や振舞いが堪らなく好きになったんだと。翔太は一学期の部活で私が智也に対する接し方が親切すぎるので内心を知りたかった様だ。翔太は若しかしたら私が智也を好きなのではないか、二年生でも彼を好きな人がいるから、と悩んでいる様子を恭子が家でずっと見ていた。貴子は夏休み前に親友の恭子から相談を受けてたので、夏休みの部活中に私の智也への気持ちを聞いてみると恭子に話したようだ。お盆明けの部活の時に私が関係無いとの返答をそのまま恭子に話したとの事だ。恭子が翔太にどの様に話したのかは分からない。おい、そんな大切な事、告るんなら人に頼んで伝えずに直接話をする様に恭子や智也に話して欲しい。そう言えば冷静になって一学期の部活を振り返って見ると、翔太が色々と聞いてきたり、いつも私を見ていた様な感じがあったと思い出した。それに対して智也からの視線など皆無であった。
 なんだ、私は一人勝手に智也に対して恋心を抱いていたのか。修学旅行のお土産を調べたりして時間の無駄になってしまったし、浮ついた心にもなってしまった。ふざけるのもいい加減にして欲しい。翔太は何、なんで何も言って来ないんだ。私を好きなのか、訳が分からない。若しかして翔太も無関係で恭子と貴子に騙されたのか。私はこの浮かれ事を誰にも言って無かったから良かったよ。それにしても私は勘違いもするし、なんて恥ずかしいんだ。赤面してしまったではないか。
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