第9話

文字数 13,687文字

 8月11日火曜日
6回戦~メットライフドーム~埼玉西武2勝4敗
楽天    1 2 0 0 0 2 1 0 1 7
埼玉西武  0 0 0 4 0 0 1 0 0 5
勝 弓削3勝1敗  セーブ ブセニッツ1勝5セーブ  敗 髙橋光成2勝5敗
本 辰己4号2ラン(髙橋光成) 栗山5号2ラン(弓削) メヒア2号2ラン(弓削) 3号(宋家豪)

 この日ライオンズは齊藤誠人選手と山田選手の登録を抹消し、代わりにファームで好調を維持している呉念庭選手と高木渉選手が出場選手登録され、一軍に昇格してきた。
連敗中のチームの起爆剤に、何とかなってほしい。

 連敗脱出を果たしたいライオンズ先発髙橋光成投手は1回表、ゴロアウト2つで二死を取ったところから、茂木選手にセカンドへのヒットを打たれると、浅村選手にはセンターへタイムリー2ベースを打たれてしまい、立ち上がりから1点を失った。
 続く2回表も、島内選手をサードゴロ、田中選手を空振り三振に抑えた二死走者なしから、太田選手に死球を与えて出塁を許すと、辰己選手にはライトスタンドへ2ランホームランを運ばれてしまい、2イニング連続の失点で0-3、両イニング共に二死走者なしからの何とも課題の残るもったいない失点パターンを喫した、序盤の髙橋光成投手のピッチングだった。

 3回までイーグルス先発弓削投手の前に無得点に抑えられていたライオンズ打線は4回裏、源田選手が俊足を飛ばしてセカンドへの内野安打で先頭打者として出塁すると、3番に入った栗山選手がカウント3-1からの高めのボールを振り抜き、打球はそのまま右中間スタンドまで飛び込んでいく第5号2ランホームランとなり、2-3。
 さらに中村選手が四球で出塁し、森選手はレフトフライに倒れた一死一塁から、メヒア選手がカウント3-0からのストレートを仕留め、レフトスタンドに飛び込む第2号2ランホームランとなって4-3、連敗脱出を願う多くのライオンズファンの拍手に包まれながらベースを1周した「メヒアさまさま」な一発で、ライオンズは逆転に成功した。

 4回まで6本のヒットを打たれながらも追加点を許さなかった髙橋光成投手は5回表、鈴木大選手をレフトフライ、茂木選手を空振り三振、浅村選手をショートゴロに打ち取って、味方打線が逆転してくれた直後のイニングを、この試合初めての三者凡退に抑えてみせた。
 
 ところが6回表、外野フライ2つで二死を取った後、田中選手にセンターへのヒットと二塁への盗塁、太田選手にも四球を与えたところで髙橋光成投手は交代となり、ライオンズベンチは平良投手をマウンドへと送った。
 平良投手は代わり端、辰己選手に死球を与えて二死満塁とピンチが広がり、小深田選手は154キロのストレートで詰まらせたが、打球は無情にも誰もいない三塁後方のレフト線で弾んだ後、三塁側のブルペンに飛び込んでしまうエンタイトル2ベースになり、4-5と逆転されたのは連敗中の悪い流れ故なのか・・・・・。
 7回表も続投した平良投手だったが、茂木選手の2ベースと連続四球によって無死満塁となったところで降板となり、3番手佐野投手が登板したが、島内選手にライトへタイムリーを打たれて4-6となり、さらに次打者田中選手への投球時にアクシデントにより降板という、泣きっ面に蜂の非常事態が発生した。
 ここでマウンドに上がったのは今井投手で、直近2試合のリリーフ登板では結果を出せていなかったが、田中選手を152キロの高めのストレートを振らせて空振り三振、太田選手をショートゴロで本塁フォースアウト、辰己選手もチェンジアップで空振り三振に斬りこのピンチをしのぐと、2イニング目となった8回表も二死満塁のピンチこそ背負ったが、島内選手をショートフライに打ち取り、2イニング連続の満塁のピンチを見事に無失点に抑え切った。

 ライオンズも7回裏、3番手宋家豪投手から、メヒア選手がレフトスタンドへ2打席連続の第3号ホームランを運んで1点差まで詰め寄ったが、8回裏の一死二塁のチャンスに1本が出ず、逆に9回表に平井投手が小深田選手にダメ押しとなるタイムリー2ベースを打たれてしまい、奮闘虚しく5-7で敗れ5連敗を喫してしまった。

 山川選手が欠場となったこの試合で、代わりに6番ファーストでスタメン出場したメヒア選手の活躍は大きく光っていた。
 4回裏の一時逆転となった第2号2ランホームランも、7回裏の第3号2打席連続ホームランも、9回裏に右中間方向に弾き返した2ベースヒットも、3安打すべてが1球で仕留めた完璧なバッティングだった。
甘いボールをミスショットしたり空振りすることもなく、研ぎ澄まされた集中力が発揮されたバッティングは、ホームラン王を獲得した2014年シーズンにも見劣りしなかった。
 また久しぶりに就いたファーストの守備でも、8回表一死二塁からの茂木選手の打球を内野安打にこそなったが好捕して、外野へ抜かせずに結果的に得点を与えなかった。
9回表にも一死二塁から、辰己選手の鋭いゴロを見事な反応で捕球するファインプレーでファーストゴロにした。
 心身ともに状態の良さがうかがえる攻守に渡るキレのある動きだったし、山川選手の回復具合次第ではあるが、苦しいチーム状況の今、メヒア選手の力は間違いなく今後も必要不可欠なものになるだろう。
次は勝って、「メヒアさまさまやーー!!」と歓喜したい。

 それにしても、連敗中の流れの悪さから来るものなのだろうか、平良投手が打たれた6回表の決勝タイムリーにしろ、ポイントポイントでつくづくライオンズにとってはツキがないというか、吹き込んでくる向かい風が何とも強いなぁと正直嘆きたくもなった、そんな悔しい試合だった。





 8月12日水曜日
7回戦~メットライフドーム~埼玉西武2勝5敗
楽天    0 1 0 2 0 0 3 0 0 6
埼玉西武  0 0 0 0 0 0 2 0 0 2
勝 涌井7勝  敗 伊藤1敗
本 太田2号2ラン(伊藤) 森5号(涌井) メヒア4号(涌井)

 ライオンズはこの試合、8番ライトで高木渉選手がプロ初のスタメン出場して、連敗脱出へのキーマンになれるのか期待もかかった。

 ライオンズ先発伊藤投手は1回表、一死から鈴木大選手にセンターへ2ベースを打たれ一死二塁のピンチを背負ったが、茂木選手をレフトフライ、浅村選手もセンターフライに打ち取って無失点の立ち上がりを見せた。
 だが続く2回表、一死から島内選手の2ベースと内田選手への四球で一死一・二塁のピンチを招くと、太田選手にはストレートをセンターへ弾き返されるタイムリーを打たれ、0-1と先制点を奪われてしまった。

 その後は走者を出しながらも踏ん張っていた伊藤投手だったが、落とし穴が待っていたのは中盤に入った4回表、一死三塁のピンチで太田選手にまたもストレートを捉えられ、バックスクリーンにまで飛び込んでいく2ランホームランを打たれ0-3。
ここまで太田選手による全3得点は少々予想外であり、想像以上のダメージを伴って重くライオンズにのしかかっていくことになった。

 5回表伊藤投手は、鈴木大選手の2ベースと茂木選手のヒットによる連打で無死一・三塁のピンチを迎え、ライオンズは宮川投手を投入した。
浅村選手の打席で茂木選手が二塁への盗塁を仕掛け、いったんはセーフと判定されたが、辻監督のリクエストによりリプレー検証の結果、アウトに判定が覆って一死。
 浅村選手はピッチャーゴロに打ち取って、三・本間で鈴木大選手を挟んでタッチアウトにするも、その間に打者走者の浅村選手に三塁まで進まれ、依然二死三塁とピンチが続いた。
 それでもロメロ選手にはインコースへの渾身のストレートで空振り三振に斬り、宮川投手は何とかこのピンチをしのぎ切った。

 しかし7回表、前の回から今シーズン初登板していた齊藤大投手が、一死三塁から茂木選手にライトへタイムリーを打たれると、なお二死一・二塁とピンチが続き、島内選手には前進守備の外野手の頭を超えていく2点タイムリー3ベースを打たれてしまい、0-6と追い詰められていった。

 6回までダブルプレーを3つ喫するなど、イーグルス先発涌井投手の前に上手くかわされていたライオンズ打線は7回裏、一死から森選手がカウント3-1からのストレートを振り抜き、ライトスタンドへ完璧な今シーズン第5号ホームランを放ち1点を返すと、メヒア選手も高めのストレートをこちらも完璧に捉えて、左中間スタンドに第4号ホームランを放り込み、2者連続ホームランで2-6とようやく一矢報いて、重苦しかったメットライフドーム内の空気が変わり始めた。

 8回表を森脇投手が、9回表を今シーズン初登板となった野田投手が、共に三者凡退にイーグルス打線を抑えるなど、徐々にライオンズの選手たちに活気が戻っていった。
 が、開幕から好調を維持しているイーグルス相手には4点のビハインドは重すぎて、最後まで懸命に戦った選手たちの奮闘も届かず2-6で敗れたライオンズは、2016年以来の6連敗を喫してしまった。

 とはいえ、明るい材料だってある。
 まず森選手が7回裏に久しぶりの第5号ホームランを放ったことだ。
昨シーズンまでには見られなかった打撃不振に陥っていた森選手だったが、ホームランを放った打席では良い意味で開き直ることができたのか、涌井投手のストレートを迷いなく振り抜き、高々と滞空時間の長いアーチを描いた。
 その後の9回裏の最終打席でもセンターフライには倒れたが、打席内での立ち居振る舞いやバットスイング、打球の角度など、この試合の2打席目までの内容とはガラリと変わったように見えて、明日以降の試合に希望を見出せるバッティングだった。

 そして、メヒア選手の快音が止まらない。
前日の試合の2打席連続ホームランを含む3安打もあり、この試合でも第2打席で詰まりながらもセンター前にヒットを放つと、次の打席では2試合連続となる第4号ホームランを放った。
 出場機会が限られていた昨シーズンまでと比べて、バッティングフォームや打席内でのオーラが来日当初の雰囲気と重なって見えたのは気のせいだろうか。
現状山川選手がスタメンから外れてのファーストでの出場ではあるが、今シーズンの低調な打線を考えると、仮に山川選手がスタメンに復帰したとしても控えに回さず、中村選手、栗山選手の両ベテラン、スパンジェンバーグ選手や若手の外野手たちを順番に上手く休ませながら回していき、メヒア選手に出場機会を与えてレギュラーに固定してみるのがいいのではないかと、個人的には思えた。
 今こそ、ライオンズの救世主(メシア)になってほしいと思う。





 8月13日木曜日
8回戦~メットライフドーム~埼玉西武2勝6敗
楽天    1 0 3 0 1 0 2 0 0 7
埼玉西武  0 1 2 0 0 0 1 0 0 4
勝 酒居2勝1敗  セーブ 牧田1勝1セーブ  敗 與座2勝4敗
本 辰己5号(與座)  

 ライオンズはこの試合、1番にセンターで高木渉選手、4番ファーストメヒア選手、9番にはセカンドで呉念庭選手をスタメンに起用して、打線を組み替えて連敗脱出に向けて戦いに臨んでいった。

 ライオンズ先発與座投手は1回表、小深田選手をセンターフライ、鈴木大選手を空振り三振とテンポ良く二死を取ってから、茂木選手にライトへのヒットを打たれた二死一塁から、浅村選手のセンターへの打ち取った打球を、高木渉選手が目測を誤ってしまい捕球できずタイムリー2ベースとなり、不運な形で先制点を奪われた。

 イーグルス先発松井投手からライオンズは2回裏、一死後、中村選手がセンターへヒット打って出塁すると、続くスパンジェンバーグ選手がレフトへの大飛球を放ち、中村選手が一塁から一気に生還するタイムリー2ベースヒットとなって、1-1と同点に追い付いた。

 が直後の3回表、與座投手はこの回先頭の辰己選手にライトスタンドへホームランを運ばれ1-2と勝ち越しを許すと、連打で無死二・三塁とピンチが続き、茂木選手のセカンドゴロの間にもう1点失い1-3となった。
 試合前から3イニング程度で交代させてリリーフ投手をつぎ込むと決めていたライオンズベンチの判断もあって、與座投手はここで降板となり、2番手に試合の序盤ながら平井投手が登板した。
 だが浅村選手にレフトの前に落ちるタイムリーを打たれ、1-4とリードを広げられたのは痛かった。

 3回裏、ライオンズも意地を見せた。
先頭打者として打席に入った高木渉選手が松井投手のストレートを捉え、一・二塁間を破るライトへのプロ初ヒットを放ち出塁すると、一死二塁から外崎選手がレフトへタイムリーヒットを放ち2-4。
 送球間に二塁に進んだ外崎選手はノーマークだった相手バッテリーの隙を突き三塁への盗塁を成功させ反撃ムードをさらに盛り上げると、メヒア選手も左中間にタイムリー2ベースヒットを放ち3-4と点差を縮め、ファイティングポーズを崩さなかった。

 ロングリリーフとなった平井投手は4回表、渡邊佳選手のピッチャーライナーを好捕するなど、イーグルス打線を三者凡退に抑えて、5回表一死二塁のピンチを迎えたところで交代となった。
 この場面で対左封じのために登板した野田投手だったが、無念にも茂木選手にライトへタイムリーを打たれ3-5と再び点差が広がった。

 6回表には今井投手が登板した。
今井投手は二死から太田選手に四球を与えたものの、辰己選手からインハイのストレートで見逃し三振を奪うなど、無失点に抑えた。

 2点差のまま終盤に入った7回表、ライオンズは2点ビハインドながら連敗脱出のために、平良投手が登板した。
しかし本来の力のあるストレートが影を潜めたこの試合の平良投手は二死三塁のピンチを背負い、浅村選手との勝負を選択したもののスライダーが大きくワンバウンドしての四球、おまけにそのボールを岡田選手も止め切れずに逸れ、ベースカバーに入るのが遅れた平良投手の動きを見逃さずに、三塁走者の小深田選手に生還を許す痛恨の失点となった。
 この後ロメロ選手にもタイムリー2ベースを打たれた平良投手は、その状態も気掛かりになるほどのピッチング内容で3-7と離され、結果的にこのイニングの2失点は重すぎた。

 イーグルス2番手の酒居投手の前に反撃ムードを止められていたライオンズ打線は7回裏、この回から登板した宋家豪投手から二死後、代打で出場した山川選手が四球を選んで出塁すると、高木渉選手がほぼ右手1本でセンターの深くまで弾き返すタイムリー3ベースヒットでプロ初打点を記録し、4-7と追いすがったが反撃もここまでだった。
 結局4-7で惜敗を喫したライオンズは、この試合でも連敗を止められず7連敗となった。

 ブルペン総動員でこの試合に挑んだライオンズだったが、結果はついてこなかった。
 しかし1番センターでスタメン出場した高木渉選手が、3回裏の第2打席で松井投手からライトへプロ初ヒット、点差が開いた7回裏の第4打席でも宋家豪投手からタイムリー3ベースヒットを放ち、プロ初三塁打とプロ初打点を記録しての初物づくしは、連敗が伸びてしまった闇の中に差し込んできた確かな希望の光だ。
 育成入団から這い上がって支配下契約を勝ち取った3年目の高木渉選手。
入団時から高い打撃センスには定評があり、昨シーズン一軍で代打でのプロ初出場を経験した上で、ついにやって来た記念すべきその瞬間。
ノーヒットに終わった前の日の試合でも、ヒットが出そうな雰囲気は感じていたが、その予感通りの快音が響いた瞬間が訪れた。
 特に大器の片鱗を垣間見たのが、第4打席でタイムリー3ベースヒットを打った瞬間だった。
右手1本で上手く拾ったような打ち方だったが、放たれた打球はそれに反してぐんぐんと伸びていき長打になったバッティングには驚いたと共に、惚れ惚れするようなバッティングセンスの一端だった。
 チーム状態が苦しく、鈴木選手も状態を落としている今だからこそ、一気にレギュラーを掴み取るチャンスもあるだろう。
あとは初回に露呈してしまった守備面でのレベルを上げられれば、チームにとって大きなピースが加わることになり、ライオンズが息を吹き返す活力源になっていけそうな気がしてならないのだが。
 ともあれ、高木渉選手プロ初ヒットおめでとうございます!!





 8月14日金曜日
9回戦~メットライフドーム~埼玉西武3勝6敗
楽天    2 3 1 1 0 1 0 0 0 8
埼玉西武  3 2 1 0 6 0 0 1 × 13
勝 今井3勝3敗  敗 津留崎1勝1敗
本 茂木4号2ラン(ニール) 5号3ラン(ニール) ロメロ15号(ニール) メヒア5号(則本昂) 浅村15号(森脇)

 この日、ライオンズは首を痛めて登録抹消されていた金子侑選手が一軍に昇格して、9番センターで即スタメン出場となった。
さらに山川選手も4試合ぶりにスタメン復帰して、4番指名打者で出場。
前日プロ初ヒットを記録した期待の高木渉選手は2試合連続1番でのスタメン出場、好調のメヒア選手は6番ファーストでのオーダーを組んで臨んだ。

 ライオンズ先発ニール投手、イーグルス先発則本昂投手の両エースを立てて始まった試合は、立ち上がりから予想に反しての激しい打ち合いとなっていった。

 1回表茂木選手の2ランホームランでイーグルスが2点を先制すれば、1回裏高木渉選手、源田選手の連続ヒットで作った無死一・二塁のチャンスで、外崎選手の送りバントを則本昂投手が三塁へ悪送球し1-2、山川選手のサードゴロの間に2-2、栗山選手が左中間へタイムリー2ベースヒットを放ち3-2とライオンズも反撃に転じた。

 2回表茂木選手の2打席連続となる3ランホームランで3-5と逆転されたライオンズは2回裏、一死一塁から高木渉選手がレフトオーバーのタイムリー2ベースヒットを放ち4-5、二死後、外崎選手がレフトへタイムリーヒットを弾き返し、5-5とすぐに同点に追い付いた。

 3回表はロメロ選手にホームランを浴び5-6とされると、3回裏にライオンズも負けじとメヒア選手がレフトスタンドへ完璧な第5号ホームランを運び6-6とまた追い付いて、序盤3イニングの両チームのスコアにはすべて得点が刻まれる荒れた試合となった。

 ライオンズは4回表から継投に入り、今井投手が2番手として登板した。
小深田選手をチェンジアップで空振り三振に斬った一死後、鈴木大選手にライトへ3ベース、茂木選手にセンターへタイムリーを打たれ、6-7とまたまた勝ち越しを許した。
 それでも続投した5回表に無死二塁のピンチを背負った今井投手だったが、辰己選手をショートゴロ、小深田選手をファーストゴロに打ち取り二死を取ると、鈴木大選手には四球を与え二死一・三塁となるも、茂木選手をレフトフライに打ち取って踏ん張ったのは大きかった。

 すると5回裏、前の回から登板していたイーグルス2番手津留崎投手から、栗山選手が一塁線を破るライトへのヒットを放ち出塁、一死後、森選手もレフトへのヒットでつなぎ一死一・二塁のチャンスを作ると、スパンジェンバーグ選手がインコースのストレートをライトへのタイムリーヒットを放ち、ライオンズは7-7の同点に追い付いた。
 イーグルスベンチはたまらず3番手久保投手を投入したが、9番金子侑選手の打席でスパンジェンバーグ選手が二塁へ今シーズン3個目の盗塁を成功させ一死二・三塁から、金子侑選手がピッチャー強襲のタイムリー内野安打を放ち、8-7とついに試合をひっくり返した。
 勝利へ向けて、ライオンズ打線の猛攻はまだまだ終わらなかった。
高木渉選手が低めのフォークを上手くすくい上げてライトへのタイムリーヒットを放ち9-7とすると、源田選手もライトへのタイムリーヒットでつなぎ10-7。
 源田選手が二塁への盗塁を成功させてから、外崎選手も左中間を完全に突破する塁上の走者をすべてを還す2点タイムリー3ベースヒットを弾き返し、12-7。
ライオンズはこのイニング打者一巡、6連打を含む7本のヒットを集中させて、一挙6得点のビッグイニングを作ったのだった。

 6回表3番手森脇投手が浅村選手にホームランを打たれたが、7回表は平良投手が三者凡退、8回表をギャレット投手が三者凡退に抑えて、イーグルスの攻撃を断っていった。
 8回裏には、森選手の猛打賞となるタイムリー2ベースヒットも飛び出し突き放したライオンズは、9回表を増田投手がこれまた三者凡退に抑えて試合終了。
7回表から9回表の終盤の3イニングのイーグルスの攻撃をすべて三者凡退に退けた完璧なる投手リレーで、13-8でライオンズは勝利して、長く苦しかった連敗を7で止めたのだった。

 中村選手が休養となったこの試合、ニール投手の来日最短でのノックアウトにより序盤から試合は荒れたものの、5回裏の集中攻撃もあり打ち勝つことで、ライオンズは屈辱的な連敗地獄から抜け出すことができた。

 森選手はホームランが出ればサイクル安打という3安打猛打賞、メヒア選手も連日のホームランでライオンズファンの心にアーチを描き、栗山選手もさすがの猛打賞、復帰初戦となった金子侑選手が決勝打となるタイムリー内野安打を放ち、終わってみれば先発野手全員打点というおまけまでついてきた、まさに獅子おどし打線が蘇ったかのような、熱い一戦だった。
 この試合の勝利ばかりは、ベンチ入りメンバーも含めたすべてのライオンズの選手がヒーローだ。

 さあ、ここから反撃開始だライオンズ!!





 8月15日土曜日
10回戦~メットライフドーム~埼玉西武3勝6敗1分
楽天    0 0 0 0 0 0 0 2 1 0 3
埼玉西武  3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3
延長10回規定により引き分け
本 メヒア6号2ラン(塩見) 辰己6号(ギャレット)

 連敗から脱出し、今度は連勝街道を突き進んでいきたいライオンズは1回裏、イーグルス先発塩見投手に対して二死走者なしから、3番外崎選手がレフトへヒットを放ち出塁すると、4番山川選手が左中間深くまでタイムリー2ベースヒットを弾き返し1-0。
 なおも続くメヒア選手がカウント2-2から左中間スタンドへ第6号2ランホームランの美しい放物線を描き、クリーンアップの活躍で3-0と幸先良く先制点を奪った。

 ライオンズ先発松本航投手は、立ち上がりから次々とイーグルス打線を手玉に取っていった。
 1回表、小深田選手をショートフライ、鈴木大選手をレフトフライ、茂木選手からはアウトコース低めのストレートで見逃し三振を奪い三者凡退で立ち上がると、2回表は四球2つで一死一・二塁のピンチを背負ったものの、銀次選手をライトフライ、足立選手をショートゴロに打ち取って反撃を許さなかった。
 3回表を三者凡退に抑えた松本航投手は中盤に入った4回表、一死から浅村選手のヒットとロメロ選手への四球で一死一・二塁のピンチを迎えたが、島内選手をサードゴロ、銀次選手もレフトフライに打ち取って、このピンチも無失点に抑えていった。

 勝利投手の権利がかかった5回表を三者凡退に抑えた松本航投手は6回表、一死から茂木選手に死球を与えたが、続く浅村選手をショートゴロダブルプレーに打ち取り乗り切った。
 結局松本航投手は7回まで投げ切り、96球で被安打はわずか1本に抑えた素晴らしいピッチングで、勝利の方程式へと後を託すことになった。

 ところが3-0と3点リードの8回表、ギャレット投手が登板したのだが、一死から辰己選手に左中間スタンドへホームランを打たれ1点を失うと、一死一・二塁のピンチから茂木選手にライトへタイムリーを打たれてしまい、3-2と1点差に詰め寄られた。

 さらに9回表クローザーの増田投手が登板したが、先頭打者の島内選手のヒットと銀次選手の送りバントで一死二塁のピンチを背負い、渡邊佳選手はファーストゴロに打ち取るも二死三塁となり、辰己選手には甘く入ったストレートをセンター前に同点タイムリーを弾き返されてしまい、あとアウト1つの勝利目前でライオンズは3-3の同点に追い付かれた。

 試合は延長戦に突入し、10回表を平良投手が二死一・三塁のピンチを背負いながらも、最後は代打内田選手を空振り三振に斬りピンチを脱し、この時点でライオンズの負けはなくなった。
 しかし10回裏、牧田投手の前に三者凡退に抑えられたライオンズは、そのまま3-3の引き分けで試合を終えた。

 先発した松本航投手は立ち上がりからとても良いピッチングで、今シーズン1番の投球内容だった。
特にテンポの良さは抜群で、手強いイーグルス打線に対して仕事をさせず、7回でマウンドを降りるまでスコアボードに0を並べていった。
 今シーズンここまで打線の不調が取りざたされているライオンズだが、それと同じくらい先発投手が試合を作れず、また長いイニングを投げ切れていないことが苦戦の要因となっていた。
そんな不安要素を見事に払拭した松本航投手のこの試合での好投は、自身にとってもチームにとってもポジティブな要素となった。
残念ながら勝ち星はつかなかったが、今後に向けて大きな期待を抱かせてくれるうれしい光景だった。

 とはいえ、やっぱり勝ちたかったという本音はあるが、ギャレット投手、増田投手でやられたのなら仕方がないし、気持ちの切り替えもしやすい。
 




 8月16日日曜日
11回戦~メットライフドーム~埼玉西武4勝6敗1分
楽天    0 0 0 0 1 0 0 0 0 1
埼玉西武  0 2 4 1 0 0 1 3 × 11
勝 本田1勝4敗  敗 福井2敗
本 栗山6号3ラン(福井) 山川15号(森原)

 ライオンズは前日の試合中に右足首を痛めた高木渉選手が登録抹消となり、代わって西川選手が高卒3年目で初めて出場選手登録され一軍に昇格となった。
連日快音を響かせブレークの予感が漂い始めていた矢先の高木渉選手の離脱は残念でならないが、ライオンズファンの間で一軍デビュー待望論が数多く上がっていた西川選手が代わりに上がってくるあたり、ライオンズの若手野手の競争は激しくうれしい悲鳴でもある。

 今シーズン初勝利を目指してマウンドに上がったライオンズ先発本田投手は1回表、鈴木大選手の2ベースと浅村選手への四球で二死一・二塁の先制のピンチを迎えたが、ロメロ選手の左中間へ弾き返された打球を、レフト栗山選手がフェンス際で懸命にキャッチする大ファインプレーで救い、立ち上がりを乗り切った。
 2回表も二死一・二塁のピンチを背負った本田投手だったが、小深田選手をライトフライに打ち取り、イーグルスに得点を与えない。

 2回裏イーグルス先発福井投手から、栗山選手がファーストへのヒットで先頭打者として出塁すると、一死後、森選手が死球を受けて一死一・二塁のチャンスを作ったライオンズは、スパンジェンバーグ選手は見逃し三振に倒れて二死となるも、金子侑選手がアウトコース低めのフォークを拾いセンターへタイムリーヒットを放ち1-0、1番鈴木選手も初球のストレートをレフトへ弾き返すタイムリーヒットの連打が飛び出し、2-0と先制点を奪った。

 先制点をもらった本田投手は直後の3回表、先頭打者の鈴木大選手に四球を与えて出塁させてしまい、一瞬嫌な空気が流れ始めたのだが、次打者茂木選手を4-6-3のセカンドゴロダブルプレーに打ち取り、打者3人で抑えて流れを渡さなかった。

 すると3回裏、外崎選手、山川選手が連続四球で出塁し無死一・二塁のチャンスを迎えると、5番栗山選手がカウント1-0からの2球目を完璧に捉え、ライトスタンドへ第6号3ランホームランを運んで、5-0と貴重すぎる追加点を奪った。
 なおも一死一塁となったところで、イーグルスは2番手酒居投手へと投手交代したが、その代わり端の初球のカーブをスパンジェンバーグ選手があともう少しでホームランになるライトオーバーのタイムリー2ベースヒットを放ち、6-0としてライオンズは序盤に大きくリードを広げた。

 4回表、ロメロ選手をアウトコースのスライダーで見逃し三振、島内選手もアウトコースのスライダーで空振り三振の2者連続三振を奪うなど、本田投手が三者凡退にイーグルスの攻撃を抑えると、4回裏、この回から登板したイーグルス3番手森原投手から二死後、4番山川選手がフルカウントから右中間スタンドへ第15号ホームランを放ち、7-0とさらに援護した。

 今シーズン初勝利の権利を手にするための5回表、本田投手は二死二塁から鈴木大選手にレフトへタイムリーを弾き返され7-1と1点を失った。
 茂木選手にもライトへヒットを打たれ二死一・二塁とピンチが続いた正念場、しかし本田投手はここで浅村選手をインコース高めのストレートで空振り三振に斬り、1失点にとどめて5回を投げ切り勝利投手の権利を手にした。

 6回表から継投に入ったライオンズは、今井投手、宮川投手、平井投手、田村投手がそれぞれ1イニングずつを投げて無失点に抑えた。

 一方ライオンズ打線はなおもつながりを見せていき、7回裏4番手釜田投手から二死一・二塁のチャンスを作り、山川選手が三遊間を破るレフトへのタイムリーヒットを放ち8-1。
 8回裏は前の回から登板していた津留崎投手から、先頭打者の途中出場の呉念庭選手が死球を受けて出塁すると、森選手の代打で登場した柘植選手が三遊間を破ってのレフトへプロ初ヒットを放ち無死一・二塁のチャンスを作り、スパンジェンバーグ選手がレフトへこの試合2本目のタイムリーヒットを放ち9-1。
 さらに一死一・二塁から、7回裏に代打で昇格即プロ初出場していた西川選手が左中間突破の2点タイムリー2ベースヒットを弾き返し、プロ初ヒット&プロ初打点の記念すべき一打で、11-1とライオンズはレギュラーの選手たちと若手選手たちによる攻撃が見事に噛み合い大勝し、引き分けを挟んでの連勝を飾ってこの6連戦を2勝3敗1分けで終えた。

 先発して5回1失点の好投でようやく今シーズン初勝利を手にした本田投手。
これまでの登板でもそれなりに試合を作れてはいたが、打線の援護との噛み合いが芳しくなく勝ち星に恵まれてこなかった。
しかしこの試合でのピッチングは本田投手の持つ技術にプラスして、勝利への飢えや執念がボールに乗り移っていたように感じた。
 象徴的だったのが、浅村選手に対しての投球だった。
1打席目こそ四球を与えたが、併殺打で二死走者なしで迎えた3回表の第2打席と、1点を返されなおも二死一・二塁のピンチで迎えた5回表の第3打席。
勝てる先発投手の条件の1つとして、ペース配分の能力に長けているかがあげられると思うが、この試合の浅村選手に対しての第2、第3打席がまさにそうで、ギアを1段階上げたかのように全身の力を込めて右腕を振り放たれたボールで追い込んでいき、最後は共に力のこもったストレートで空振りを奪っての三振と圧倒した。
 本来はボールを低めに集めて打ち取りゲームメイクしていくタイプの本田投手ではあるが、野球というスポーツにおいて、時として気持ちが技術を凌駕してポテンシャルを最大限に発揮できると痛感した。
見応えのある浅村選手との対戦に投げ勝てたことで、チームの勝利と何より本田投手自身の勝利を呼び込めた。
 もっとも、1回表のピンチで先制点を防ぐファインプレーで救ってくれた、栗山選手の無言のエールも多分に本田投手に力を与えていたことは想像に難くない。

 そしてこの試合は、柘植選手と西川選手にプロ初ヒットが生まれた記念すべき試合にもなった。
 7回裏一死から鈴木選手の代打でプロ初打席に立った西川選手は、惜しくもレフトフライに打ち取られていたが、8回裏にメモリアルな瞬間が立て続けに訪れた。
 まず無死一塁から、森選手の代打でプロ2打席目に立った柘植選手が、津留崎投手のカットボールを引っ張って三遊間を破るレフトへのプロ初ヒットを打てば、一死一・二塁の場面で巡ってきたこの試合2打席目(プロ2打席目)で、西川選手も負けじと津留崎投手のストレートを捉え、左中間を完全に破る打球を放ってプロ初ヒット。
加えてプロ初の二塁打にプロ初打点(2打点)と、申し分のないバッティングを揃って見せてくれた。
 柘植選手はすでに出場機会を経ていたが、昇格即プロ初出場となった西川選手の名前がコールされた瞬間の、メットライフドームに詰めかけたライオンズファンの歓声はこの試合の中でも一際大きく、またプロ初打席の初球から積極的にスイングしていった点なども魅力的だ。
鞭がしなるように腕を使ってボールを捉える西川選手の打撃技術を目の当たりにして、無限の可能性を感じたと共に、またもライオンズに期待の新星が現れたと、興奮が抑え切れない夜だった。
 柘植選手、西川選手、プロ初ヒットおめでとうございます!!    
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