迷曲の国のアリス危機一髪!?『うたってみちゃいけない』曲の世界を脱出せよ!

文字数 2,502文字

1、起承転結を含むプロット
起)主人公の有栖川(ありすがわ)まいとは、インターネット上に自分の歌をアップするいわゆる『歌い手』という活動をしていた。インターネット上には歌を作る〇〇P(プロデューサーの略)がたくさんおり、同時にそれを『うたってみた』としてネット上に自分の歌をアップする『歌い手』もたくさんいる。まいとは『Alice』名義で活動していたが、中学生ながらに再生数は数万回を超える人気者だ。しかしまいとの野望は止まらない。「もっと有名になりたい!」
ある日まいとはとある都市伝説を耳にする。「とあるPの作った曲を歌ってみた歌い手は全員失踪する」というものだ。そのPの名は『キャロルP』。実際多くの歌い手が、キャロルPの曲を最後に歌ってみたの投稿を止めている事実がある。だからキャロルPの作った曲は『絶対にうたってみてはいけない』――。まいとはその都市伝説に恐怖するも、「もし自分がキャロルPの曲を歌いきって見せたら、更に人気者になれるのでは?」という気持ちがぞくぞくとわいてきた。まいとはマイクとヘッドホンを準備し、キャロルPの新曲『ヘテロドックス』を歌って、動画をアップした。途端、視界がぐにゃりと歪み、まいとの意識は遠くなった。

承)「大丈夫ですか?」まいとは美しい少女の呼びかけで目を覚ます。その少女の背にはまるで天使のような大きな翼が。「大丈夫です。ここは一体?」見渡せば空は青と赤のマーブル模様。真っ黒で枯れた木々ばかりが生えていて、まるで『ヘテロドックス』のミュージックビデオの世界のような――。そこでまいとは思い出した。『ヘテロドックス』の歌詞を。この世界は五体満足の人間こそがヘテロドックス(異端者)。美しいと思っていたこの少女に村に導かれ、異形の者たちが住まう村の者たちに食べられてしまうという歌詞だ!まいとは少女を振り切り、急いで逃げた。
それからはキャロルPの楽曲たちを思わせる世界が続く。耳を破壊するような大声でしか話すことのできない人たちの国は『スクリーム』のようだし、見栄っ張りの嘘つき以外は処刑されてしまう国は『ヴァニティ・ライアー・ジャッジメント』のようだ。「出口を探して逃げなくちゃ!」逃げ回るまいとだったが、とうとう追い詰められてしまう。その時、一人の青年が現れて、まいとを守ってくれた。「走るぞ!」青年はまいとの手を引いた。

転)顔中に不思議な焼き印がある青年はスティグマと名乗り、弁護士であると名乗った。まいとはすぐにキャロルPの楽曲『フィクサーの烙印』の曲に登場する男だと分かった。腕の立つ弁護士(フィクサー)であるこの男はどんな事件も解決しすぎて、不名誉の証である『烙印(スティグマ)』もたくさん押されてしまったという曲だ。スティグマは偉そうに「キミを助けてやらないこともない」と語った。たくさんの人間がこの世界を訪れてきたが、俺に出会えなかったがために世界を抜け出せなかったのだと。「俺ならお前さんを元の世界に戻すように弁護することができるよ」「誰に?」まいとが尋ねると「もちろん『キャロル』にさ」。スティグマはニヤリと笑った。キャロルPがこの世界にいる?「ただし機嫌を損ねたら、二度と元の世界には戻れないからそのつもりで」スティグマのその一言に、まいとの緊張感が張り詰めた。

結)スティグマに導かれ、まいとはある部屋にたどり着いた。それは今までの不思議な空間とは違う、簡素で現代的なこざっぱりしたワンルーム。パソコンに向かう1人の少年がいた。「ごきげんよう、キャロル」。スティグマが話しかけると、まいとと同い年ぐらいの不愛想な美少年がこちらを振り向いた。「やあ、ここまでやってきたのは君が初めてだよ、Alice」。美少年、キャロルPはまいとを見てにっこりと笑った。「全く、どいつもこいつも僕の曲の本質を理解できずに歌う馬鹿ばっかりだ!」「だから僕の世界に閉じ込めてやったのさ。僕の世界が理解できるまで世界から解放してやらないつもりさ」まいとはその言葉に反省した。まいとがキャロルの曲を歌ったのは、「有名になりたい」その一心でしかなかったからだ。そんなことは知らないスティグマは、いかにまいとがキャロルの曲を理解しているかを高らかに演説している。「じゃあ、僕のことを理解しているというAlice、君に質問しよう」キャロルはまいとに向き直った。まいとの心臓が跳ねる。『機嫌を損ねたら、二度と元の世界には戻れない』というスティグマの言葉が頭を過ぎる――。するとキャロルは突然立ち上がり、歌い出した。「僕が今作っている、この曲のタイトルは、何かわかるかな?」これにはスティグマも苦笑い。だってそんなのスティグマにもまいとにもわからないのだから。「ヒントは君が今一番渇望しているものさ」。その時、まいとの中に一つの単語がぽっと浮かんだ「『デマイズ(終焉)』――?」。それを聞いたキャロルは「正解」とまいとに笑いかけた。世界が眩しいほどの光に包まれる――。
「まいとー!学校に行く時間よ!」母親の大きな呼び声で目を覚ますと、そこはまいとの部屋のベッドだった。急いでパソコンを確認する。キャロルPのアカウントには新曲『デマイズ』が投稿され、今後しばらく楽曲作成を休むことが書かれていた。また失踪していたという人も続々と戻ってきたらしく、各アカウントに「生きてます!」との報告がしてある。果たしてあれは夢だったのか――いや。思い直したまいとは、今度からは「有名になるため」じゃなく、もっと曲に想いを込めて歌おう。そう誓ったのだった。

2、200字程度のあらすじ
 主人公の有栖川(ありすがわ)まいとは、ネットに自分の歌をアップするいわゆる『歌い手』活動をしていた。中学生ながらに再生数は数万回を超える人気者だが野望は止まらない。「もっと有名になりたい!」
 ある日まいとは「とある人の作った曲を歌った歌い手は全員失踪する」という都市伝説を聞く。その人の名は『キャロルP』。まいとは恐怖するも「もし自分が歌ったら人気者になれるのでは?」という気持ちに押され、動画を投稿してしまい――!
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