勝利の女神 編
文字数 1,933文字
聖なる夜。世界は幸せに包まれた。緑色のもみの木は雪化粧をし、ホワイトクリスマスだった。イルミネーションが輝き、雪に反射する。ピカピカと輝き、幻想的な雰囲気を作り出し、幸せ度数を上げていく。
一人の女神はサンタクロースの衣装で、街にくり出そうとしていた。ご主人様が慌てる。
「ニケさん、どうしましたの? そんな衣装に着替えて・・・」と言って、腕を掴んだ。
ご主人様は一人で街に出ようとするニケを引き留めた。ニケは人を信じて疑わない、お人好しなタイプの女神。ご主人様は、それがいつも不安だった。悪い人達に騙されたりしないか? 路地裏に無理やり連れ込まれたりしないだろうか? ニケのことが心配で、仕方がない。
ニケの腕を放さない、ご主人様。
「ニケさん、ダメよ。夜の街に出ちゃ・・・」
「どうして? ニケはこう見えても大人だよ」
「心配はいらない」と言わんばかりのニケ。ご主人様の気持ちを理解していない様子。
「今日はニケさんと一緒にクリスマスを過ごすため、迎えにきたの・・・」
「・・・そっかー。・・・じゃぁ、仕方がないなー」
ご主人様は「理解してくれた」とホッとした顔をした。
「すぐに戻ってくるから待っててよ!」とニケ。
この答えが返ってくることを知っていた。
ニケは、「どうしても街へ行く」と言う。ご主人様は困ってしまったが、言い出したら人の話を聞かないのは知っていた。
ご主人様は、ついていくことにしたようだ。
「どうしても街へ行くなら、私が送って差し上げますわ! オーッホッホッホ」
「えーっ、・・・どうしようかな?」
腕を組んで、考え込むニケ。
「うん、一緒に行こう! ・・・じゃぁ、衣装に着替えて・・・」
「えっ? ・・・ち、ちょっとニケさん」
無理やり生着替えをさせられる。恥ずかしさで顔が真っ赤だった。こんな姿のご主人様を見るのは初めてだった。いつものご主人様は、高飛車だからね。
「・・・よしっ、これでOKだね!」
ご主人様は、黄金色と赤色で刺繍されたサンタクロースの衣装。サイズが違うのかピチピチだ。動けば、はち切れそうな姿。羽織ってきたコートで衣装を隠す。私は目のやり場に困る。
「・・・ち、ちょっとニケさん。サイズが小さいわよ」と、ご主人様は怒った。
「仕方がないよ。そのサイズしか、無いんだから我慢してね」
ニケはそんなことに構わず、私にクリスマス仕様の装飾品をつけていた。
「よしっ! 出来た。さぁ、街へレッツゴー!」と、満足しているニケ。
「・・・いや、ちょっと待って。本当なの?」とご主人様は、衣装を隠すだけで精一杯。私は顔を横に向けて、姿を見ないようにしていた。
「・・・恥ずかしがらずに、乗って。ぼさっとしていたら、置いていくよ」
「・・・ち、ちょっと私のグアトリガですわよ!」
渋々、乗り込むご主人様。私は二人を乗せ、街へ出発した。
「ゴーゴー、グアトリガ!」
ノリノリのニケ。ワクワク感が抑えられない様子。楽しさを抑えられない。
ご主人様は、操縦するだけで精一杯。はち切れそうな衣装のせいだ。いつもの高飛車ではない。ちょっと調子が狂う。
ようやく街へ到着した。
「さぁ、ニケさん。早く用事を済ましてくださる」
ご主人様は、私に乗ったまま、街に繰り出さない様子。それを見て、ニケはピョンと飛び降りた。
「うん、分かった!」
ニケは手当たり次第に、クリスマスプレゼントを配り出した。
「メリークリスマス!」と、街中で叫んだ。
至るところから一斉に返事が帰ってきた。
「メリークリスマス!」
ニケは嬉しそう。用意したプレゼントを次々と配っていく。
ニケは、配り終わると笑顔で、私に飛び乗った。
「お待たせ! 帰ってクリスマスパーティーをしようよ」
「そうですわね。オーホッホッホ」
二人の女神は笑顔だった。
勝利の女神達による聖なる夜は、これから始まる。ご主人様の衣装は、はち切れなかった。私は、安堵の表情をしていいのやら、ちょっとハプニングを期待していたのやらで、心中は穏やかでは無かった。
「焼けた七面鳥が待ってますわ。オーッホッホッホ」
ご主人様の声が、雪化粧をした平原に響いた。
二人の女神は、聖なる夜を楽しんだ。この日ばかりは、いがみ合いをしなかった。笑い声が聞こえている。
(二人に彼氏は、いないのだろうか?)
「来年こそ、良きパートナーに恵まれますように・・・」と聖夜に祈る。
空には、サンタクロース衣装のティターニアがソリに乗って飛んでいた。さすがに彼氏をプレゼントなんて、本当のサンタクロースでも叶えられない願いだろう。・・・でも、妖精なら、どうだろうか? ひょっとしたら・・・。
妄想をしていたら、眠ってしまった。
一人の女神はサンタクロースの衣装で、街にくり出そうとしていた。ご主人様が慌てる。
「ニケさん、どうしましたの? そんな衣装に着替えて・・・」と言って、腕を掴んだ。
ご主人様は一人で街に出ようとするニケを引き留めた。ニケは人を信じて疑わない、お人好しなタイプの女神。ご主人様は、それがいつも不安だった。悪い人達に騙されたりしないか? 路地裏に無理やり連れ込まれたりしないだろうか? ニケのことが心配で、仕方がない。
ニケの腕を放さない、ご主人様。
「ニケさん、ダメよ。夜の街に出ちゃ・・・」
「どうして? ニケはこう見えても大人だよ」
「心配はいらない」と言わんばかりのニケ。ご主人様の気持ちを理解していない様子。
「今日はニケさんと一緒にクリスマスを過ごすため、迎えにきたの・・・」
「・・・そっかー。・・・じゃぁ、仕方がないなー」
ご主人様は「理解してくれた」とホッとした顔をした。
「すぐに戻ってくるから待っててよ!」とニケ。
この答えが返ってくることを知っていた。
ニケは、「どうしても街へ行く」と言う。ご主人様は困ってしまったが、言い出したら人の話を聞かないのは知っていた。
ご主人様は、ついていくことにしたようだ。
「どうしても街へ行くなら、私が送って差し上げますわ! オーッホッホッホ」
「えーっ、・・・どうしようかな?」
腕を組んで、考え込むニケ。
「うん、一緒に行こう! ・・・じゃぁ、衣装に着替えて・・・」
「えっ? ・・・ち、ちょっとニケさん」
無理やり生着替えをさせられる。恥ずかしさで顔が真っ赤だった。こんな姿のご主人様を見るのは初めてだった。いつものご主人様は、高飛車だからね。
「・・・よしっ、これでOKだね!」
ご主人様は、黄金色と赤色で刺繍されたサンタクロースの衣装。サイズが違うのかピチピチだ。動けば、はち切れそうな姿。羽織ってきたコートで衣装を隠す。私は目のやり場に困る。
「・・・ち、ちょっとニケさん。サイズが小さいわよ」と、ご主人様は怒った。
「仕方がないよ。そのサイズしか、無いんだから我慢してね」
ニケはそんなことに構わず、私にクリスマス仕様の装飾品をつけていた。
「よしっ! 出来た。さぁ、街へレッツゴー!」と、満足しているニケ。
「・・・いや、ちょっと待って。本当なの?」とご主人様は、衣装を隠すだけで精一杯。私は顔を横に向けて、姿を見ないようにしていた。
「・・・恥ずかしがらずに、乗って。ぼさっとしていたら、置いていくよ」
「・・・ち、ちょっと私のグアトリガですわよ!」
渋々、乗り込むご主人様。私は二人を乗せ、街へ出発した。
「ゴーゴー、グアトリガ!」
ノリノリのニケ。ワクワク感が抑えられない様子。楽しさを抑えられない。
ご主人様は、操縦するだけで精一杯。はち切れそうな衣装のせいだ。いつもの高飛車ではない。ちょっと調子が狂う。
ようやく街へ到着した。
「さぁ、ニケさん。早く用事を済ましてくださる」
ご主人様は、私に乗ったまま、街に繰り出さない様子。それを見て、ニケはピョンと飛び降りた。
「うん、分かった!」
ニケは手当たり次第に、クリスマスプレゼントを配り出した。
「メリークリスマス!」と、街中で叫んだ。
至るところから一斉に返事が帰ってきた。
「メリークリスマス!」
ニケは嬉しそう。用意したプレゼントを次々と配っていく。
ニケは、配り終わると笑顔で、私に飛び乗った。
「お待たせ! 帰ってクリスマスパーティーをしようよ」
「そうですわね。オーホッホッホ」
二人の女神は笑顔だった。
勝利の女神達による聖なる夜は、これから始まる。ご主人様の衣装は、はち切れなかった。私は、安堵の表情をしていいのやら、ちょっとハプニングを期待していたのやらで、心中は穏やかでは無かった。
「焼けた七面鳥が待ってますわ。オーッホッホッホ」
ご主人様の声が、雪化粧をした平原に響いた。
二人の女神は、聖なる夜を楽しんだ。この日ばかりは、いがみ合いをしなかった。笑い声が聞こえている。
(二人に彼氏は、いないのだろうか?)
「来年こそ、良きパートナーに恵まれますように・・・」と聖夜に祈る。
空には、サンタクロース衣装のティターニアがソリに乗って飛んでいた。さすがに彼氏をプレゼントなんて、本当のサンタクロースでも叶えられない願いだろう。・・・でも、妖精なら、どうだろうか? ひょっとしたら・・・。
妄想をしていたら、眠ってしまった。