学校内の楽園

文字数 870文字

ブラスバンド部が練習する音と、強豪女子バレー部のボールの弾ける音が、放課後を演出していた。

体育館のステージで、ぼく明彦《あきひこ》は彼女陽紀《はるき》に言った。
「髪をピンクの染めたからって、妖精には成れないよ」
「ピンクの髪に染めたら女の子は妖精になれるよ、ほら!」
彼女はそう言うと、妖精のように走り回った。

演劇部のぼくと彼女は現在、即興劇中だ。
強豪女子バレー部は練習に夢中だが、チラチラと見ている奴もいない事はない。
でもぼくらは演劇部、見られてなんぼだ。

ステージのテーブルの上には、ライフルが置いてあった。
『チェーホフの銃』と言う奴だ。
ゆえに即興劇のどこかで撃たれなければならない。
どうしたものか?
撃たれるのは誰だろう?
ぼくかピンクの髪の妖精か?

「さあ大人しくしてないで、君もピンクに髪を染めるのよ」
陽紀に言われて、ぼくはピンクのウィッグを被った。そして、
「わああ、凄い、ぼくも妖精になれた」
そう言いながら、彼女とステージを走り回った。

「明彦くんおいで~」
「陽紀ちゃん待って~」
「あはははははは」
「あはははははは」

かなりアホなステージだ。
そして、やる気の欠片もない。
ぼくたちが、しつこかったのかも知れない。

その時だった、テーブルに置かれたライフルが発砲した。
体育館のステージに、大きな銃声が響いた。

撃たれたのは、ぼくらしい。

ステージのテーブルを見ると、強豪女子バレー部の主将が、ライフルを構えていた。
「お前らいい加減にせえよ!こっちは真剣に練習してんじゃ!お前らも、ちょっとはやる気を見せろや!」

さすが強豪女子バレー部の主将だ。
ぼくらみたいな、ふらふらとした暇つぶしの演劇部員とは訳が違う。

「「すいません」」
ぼくらは謝り、それから、ぼくらは幕を閉じ、そこで演劇部の練習することになった。

でもね、名探偵なら気づいたかも知れない、この即興劇に仕組まれた罠を!

ぼくは彼女とお付き合いがしたいんのだ!
その為には、学校内で2人だけの密室を手に入れる必要がある。
公然と!
密室で仲の良い友人の壁を壊すのだ!
良いお友達なんて嫌なんじゃ!



         完

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登場人物紹介

明彦。演劇部員。暇なので演劇部に入った男子。

陽紀。演劇部員。暇なので演劇部に入った女子。

女子バレー部の主将。強豪校の女子バレー部の主将に相応しく、責任感の強い女子。

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