第1話

文字数 429文字

 僕の特殊な能力は、時間を戻せるということ。
例えば今は、朝の6時50分だが、少し目を閉じてこう念じる。
「時間よ戻れ」
すると、どうだろう。
机の上のデジタル時計は24時50分を表示し、
窓から差し込んでいた朝の光は、すっかりとなくなっている。
「成功だ」
僕は、ホッとため息をつく。
目の前でしわくちゃになった教科書のページをきれいに伸ばし、
もう一度読み直していく。
確か24時30分くらいまで、起きていたはずだ。
ほんの10分、仮眠をとったと思ったら、すっかり眠りこんでしまったらしい。
さっきは、かなり焦ったが、何度でも戻れるのだから心配はいらない。
試験が始まってから、戻ればいいじゃないかって?
まあ、普通はそうだろう。でも、僕はカンニングは嫌いだ。
ズルをせずに、きちんと勉強していい点を取りたいのだ。
言っていることが、滅茶苦茶だって?
あはは、わかっているよ。
朝日を浴びながら、こんな妄想をしているくらいなら、
1つでも単語を覚えれば良かったと、後悔しているところだからね。






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