人類皆家族 ──完──
文字数 1,844文字
ボクはお父さんとお母さんと三人で暮らしている。
だけどある日の朝、目を覚ましてリビングに向かうと、ボクの知らない子供が一人増えていた。歳はボクとあまり変わらなそうだ。
なぜかお父さんもお母さんも当たり前のように知らない子供と食卓を囲んでいる。
親戚の子供でも預かったのだろうか? とボクは思った。
けど、お父さんもお母さんも何も説明してくれない。だからボクの方からも何も追求しなかった。
安易に触れてはいけないことのような気がした。
翌朝。眠気眼を擦りながら目を覚ますと、昨日の子供がボクの隣で寝ていた。とても驚いたけれど、ボクは彼を起こさないようにベッドから降りてリビングに向かった。
すると、昨日の子とはまた違う子供がお父さんとお母さんと一緒に食卓を囲んでいた。
またボクの知らない子供だった。
だけどお父さんとお母さんはそれが当たり前のように振る舞っているから、ボクは何も言い出せずに一日を過ごした。
これが普通なのだろうか?
ボクは他の家の事情には詳しくないから、よくわからなかった。
翌日。またボクの知らない子供が増えていた。それも、今回は一度に二人も。
さすがにこれはおかしいと思い、ボクは思い切ってお父さんに尋ねてみることにした。
「お父さん。どうして子供が増えているの?」
するとお父さんはボクを見て驚いたかと思うと、次の瞬間には嘆くように息を吐いた。
「そりゃあこっちがお前に聞きたいくらいだ」
その一言はボクを大層傷付けた。
ボク以外に子供が増えていたんじゃなく、ボクも増えた子供のうちの一人だったのだ。
それでも、時間の経過と共にボクは現実を受け入れていくことができた。思い切って尋ねたことで心の底にあったモヤモヤが晴れていくようだった。
次の日になると見覚えのない男の人が家の中にいた。どうやら今度はお父さんが増えたみたいだった。
お父さんは困惑していたけれど、ボクはすんなりと受け入れた。だってこれはそういうものなのだから。
次の日になるとお母さんが増え、あくる日にはお爺ちゃんやお婆ちゃんまで誕生した。親戚の伯母さんに至っては二日連続だった。
そうなってくるともう、みんなも家族が増えるのは当たり前の現象として受け入れるようになって、いつの間にか増えている家族にいちいち大仰な反応を示すこともなくなった。
これはそういうものなんだ。そうボクが受け入れたように、家族のみんなも同様に受け入れるのが普通になった。
問題だったのはボクたちの住んでいる家では増え続ける家族に対応し切れなくなったこと。
それもそのはずである。元々我が家は数人で暮らしていたのだ。人の数が三桁に到達し、正確な人数を把握するのも困難な状態にまで膨れ上がった頃になると、家の外にまで家族が押し出される事態が続出した。
そのためボクたち家族は新たな住処を求めてさまよった。
もちろん、その間も家族は増え続けた。その数は千を超え、万を超え、いつしか町を、都市をも飲み込むほどまでに膨れ上がった。
増殖の止まらないボクたちに危機意識を持つ人々が現れるのは必然だったと言えるかもしれない。
いつしかボクたち家族の存在は国家的な危機として捉えられるようになっていった。
だからボクたち家族は人目を避けるように方々へと散った。
人里離れた地にこもる者。
海を渡る者。
大陸に移る者。
安息の地を求め、旅を続ける者……。
けど、そうしたからってボクたちの増殖が治まるわけじゃない。
結果、ボクたち家族の存在は世界的な問題として認知されるまでに至った。
しかし、加速度的に増殖を続けるボクたち家族に対し、有効的な対処を行えた機関はついに現れず、それどころか、家族の中には政府機関や国際組織の中枢へと入り込み、家族が実害を受けないようにコントロールする者。家族の存在が受け入れられるように情報を発信して世論を操作し、大規模な運動にまで発展させる者たちまで現れた。
そうした動きのおかげもあってか、ボクたち家族は身の安全が保障される運びとなった。
その一方で、ボクたち家族の増殖の勢いは留まるところを知らず、ついには世界においてマジョリーティーと化し、世界はボクたち家族に飲み込まれた。
それでも尚も増え続けた家族。
もはや家族の一員であることが当たり前となった世界。
右を見ても、
左を見ても、
家族、
家族、
家族……。
そうしていつしか世界の人口の全てがボクたち家族へと置き換わり、人類は皆、家族になった。
だけどある日の朝、目を覚ましてリビングに向かうと、ボクの知らない子供が一人増えていた。歳はボクとあまり変わらなそうだ。
なぜかお父さんもお母さんも当たり前のように知らない子供と食卓を囲んでいる。
親戚の子供でも預かったのだろうか? とボクは思った。
けど、お父さんもお母さんも何も説明してくれない。だからボクの方からも何も追求しなかった。
安易に触れてはいけないことのような気がした。
翌朝。眠気眼を擦りながら目を覚ますと、昨日の子供がボクの隣で寝ていた。とても驚いたけれど、ボクは彼を起こさないようにベッドから降りてリビングに向かった。
すると、昨日の子とはまた違う子供がお父さんとお母さんと一緒に食卓を囲んでいた。
またボクの知らない子供だった。
だけどお父さんとお母さんはそれが当たり前のように振る舞っているから、ボクは何も言い出せずに一日を過ごした。
これが普通なのだろうか?
ボクは他の家の事情には詳しくないから、よくわからなかった。
翌日。またボクの知らない子供が増えていた。それも、今回は一度に二人も。
さすがにこれはおかしいと思い、ボクは思い切ってお父さんに尋ねてみることにした。
「お父さん。どうして子供が増えているの?」
するとお父さんはボクを見て驚いたかと思うと、次の瞬間には嘆くように息を吐いた。
「そりゃあこっちがお前に聞きたいくらいだ」
その一言はボクを大層傷付けた。
ボク以外に子供が増えていたんじゃなく、ボクも増えた子供のうちの一人だったのだ。
それでも、時間の経過と共にボクは現実を受け入れていくことができた。思い切って尋ねたことで心の底にあったモヤモヤが晴れていくようだった。
次の日になると見覚えのない男の人が家の中にいた。どうやら今度はお父さんが増えたみたいだった。
お父さんは困惑していたけれど、ボクはすんなりと受け入れた。だってこれはそういうものなのだから。
次の日になるとお母さんが増え、あくる日にはお爺ちゃんやお婆ちゃんまで誕生した。親戚の伯母さんに至っては二日連続だった。
そうなってくるともう、みんなも家族が増えるのは当たり前の現象として受け入れるようになって、いつの間にか増えている家族にいちいち大仰な反応を示すこともなくなった。
これはそういうものなんだ。そうボクが受け入れたように、家族のみんなも同様に受け入れるのが普通になった。
問題だったのはボクたちの住んでいる家では増え続ける家族に対応し切れなくなったこと。
それもそのはずである。元々我が家は数人で暮らしていたのだ。人の数が三桁に到達し、正確な人数を把握するのも困難な状態にまで膨れ上がった頃になると、家の外にまで家族が押し出される事態が続出した。
そのためボクたち家族は新たな住処を求めてさまよった。
もちろん、その間も家族は増え続けた。その数は千を超え、万を超え、いつしか町を、都市をも飲み込むほどまでに膨れ上がった。
増殖の止まらないボクたちに危機意識を持つ人々が現れるのは必然だったと言えるかもしれない。
いつしかボクたち家族の存在は国家的な危機として捉えられるようになっていった。
だからボクたち家族は人目を避けるように方々へと散った。
人里離れた地にこもる者。
海を渡る者。
大陸に移る者。
安息の地を求め、旅を続ける者……。
けど、そうしたからってボクたちの増殖が治まるわけじゃない。
結果、ボクたち家族の存在は世界的な問題として認知されるまでに至った。
しかし、加速度的に増殖を続けるボクたち家族に対し、有効的な対処を行えた機関はついに現れず、それどころか、家族の中には政府機関や国際組織の中枢へと入り込み、家族が実害を受けないようにコントロールする者。家族の存在が受け入れられるように情報を発信して世論を操作し、大規模な運動にまで発展させる者たちまで現れた。
そうした動きのおかげもあってか、ボクたち家族は身の安全が保障される運びとなった。
その一方で、ボクたち家族の増殖の勢いは留まるところを知らず、ついには世界においてマジョリーティーと化し、世界はボクたち家族に飲み込まれた。
それでも尚も増え続けた家族。
もはや家族の一員であることが当たり前となった世界。
右を見ても、
左を見ても、
家族、
家族、
家族……。
そうしていつしか世界の人口の全てがボクたち家族へと置き換わり、人類は皆、家族になった。
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