プロット

文字数 4,189文字

起)横浜市在住の小学6年生の少女、優希(ゆき)。クラスでは学級委員を務めるなど、真面目でしっかりしているが、気が強く、やや頑固者。
夏休み直前の終業式の日。クラスメイトの女子たちと恋バナをしながら浮かれた気持ちで帰宅し、楽しい夏休みを満喫しようと思っていた矢先、子供たちの進学先についてやらお金の使い方やらで意見が対立した両親が大喧嘩。これまで溜めてきた不満が爆発したママは、優希の弟の透也(とうや)を連れて鎌倉の実家に帰ってしまう。ママと冷戦中で、反抗期真っ盛りの姉の真奈(まな)はパパの肩を持ち、ママについていかなかった。
その晩と翌日は自宅で過ごした優希だが、ママに会いたくなり、電車に乗って一人で鎌倉に向かう。ママに仲直りをするよう勧めてみるも、相手にされない。パパもママもお互いに連絡を取ろうともしない。怒り心頭に発した優希は、自宅に戻るふりをして、家出を決行する。


承)行先も決めず、適当に見かけた電車に乗って揺られていると、偶然クラスメイトの大智(だいち)と出会う。大智は低学年の頃は仲が良かったが、最近はお互いに思春期に入ったこともあり、あまり話せていなかった。優希にとっては、「好き」かはわからないが、気になるヤツ。大智は飄々としていて、マイペースで、何を考えているのかわかりにくいが、優しい。また、1年中長袖・長ズボンで過ごしていて、どんなに暑い日だろうと半袖を着ないという変わった少年である。1年生の頃の担任の先生が言っていたのは、「大智くんは、皮膚が強くなくて、太陽の光を直接浴びると大変なんだそうです」とのこと。そんな大智が大きな荷物を抱えて電車に乗っていた。どうやら、黒白山(こくびゃくざん)という山のふもとに、UFO着陸の跡地があるらしい。また、黒白山は知る人ぞ知るUFO目撃情報多発スポットとのこと。大智は宇宙が大好きで、夏休みの自由研究でUFOについて調べるのだと言い、黒白山のふもとを目指していた。優希は大智と一緒に行動することに決めた。

黒白山のふもとに着き、UFO着陸の跡地の撮影は順調に進んだものの、肝心の本物のUFOはなかなか現れない。大智の持ってきた簡易テントとレジャーシートに転がって、空を眺め続けた。やがて夜中の3時頃、ついに大智がUFOらしきものを発見する。発光しながら回転を続ける飛行物体を遠くから見るだけでも興奮する二人だったが、UFOがなんとこちらに向かって降りてきたのだ。着陸したUFOの中から、ライオンのようなたてがみをはやし、うさぎのような長い耳をした、2.5mはあろう宇宙人が現れた。何か言葉を発しているが、2人は言葉がわからない。すると宇宙人は、お互いの思っていることを伝えあえるというマイクのようなものを二人に渡す。宇宙人は木星出身のグレンと名乗る。どうやら、2人の子どもがあまりにも強い思いでUFOを待っている様子を上空から見て、気になって降りてきたようだ。UFOにはグレン以外にも、パームという羊のようにふわふわな女性(月出身)と、ジャッシュというキツネのような姿の陽気な男性(火星出身)が乗っていた。彼らは太陽系の惑星をパトロールする仕事を担っている、「プラネットエース」という組織のメンバーだった。どうしてもUFOに乗りたいんだと2人は懇願し、特別にUFOに乗せてもらえることになった。


転)地球人は、「宇宙人はいるか?いないか?」という議論をしているくらいだが、実は他の惑星では、宇宙人がいるのは当たり前に認知されていて、他惑星との交流も盛んらしい。地球は宇宙人に攻めてこられた過去があり、そこで「鎖国」ならぬ「鎖星」をしたため、急激に宇宙技術の開発が遅れ、宇宙人のことすら忘れてしまったのだとグレンが教えてくれた。
UFOはまず月に着陸した。地球からは見えない月の裏側には、科学的に大変発達した巨大な都市があり、2人は衝撃を受ける。月では「家族」という考え方がないそうで、卵から生まれた子供は、巨大な保育所のようなところで育ち、10歳くらいになったら独り立ちをするそうだった。優希は、家族という概念に縛られない月での過ごし方に憧れる。一方、大智は小さいころから家に父親がいないそうで、寂しい思いをしており、家族は絶対に一人でも多くいた方がいいという考えを持っているので、優希と少し対立する。またグレンたちプラネットエースのメンバーは、無免許UFO運転をしようとしている人を取り締まったり、月の防衛を担当している人と情報交換をしたりしていた。

優希は月を離れるのを惜しんだが、UFOは次に火星を回る。火星は月と比べると大変田舎で、のんびりしたところだった。大昔に核戦争があり、高度な文明が滅んだ過去を持ち、火星人たちは自然と共に暮らすという生き方を選んだらしい。地球のような緑はほとんどないが、植物の光合成とは違うシステムで、大地そのものが酸素をつくり出しているようだった。月とは反対に、火星は一つの家族の人数がとても多く、和を大切にしているそうだ。プラネットエースのメンバーたちと一緒に、火星人たちの仕事のお手伝いを優希と大智もさせてもらう。すると、そこにUFOに乗ってやってきた土星人たちが現れ、豊富な鉱物資源をたくさん手に入れるために、勝手に囲い込みをはじめ、ここは自分たちが使うと主張し始める。プラネットエースのメンバーはそれを許さず、温和に追い返そうとするが、土星人たちは言うことを聞こうとしない。勝手な土星人たちの姿に怒った優希が放った言葉に土星人が反応し、武力行使に出る。ギリギリのところでプラネットエースは多くの仲間を呼び、何とか逮捕したものの(一人、取り逃してしまう)、複数のけが人が出てしまった。優希はひどくショックを受けるが、大智やグレンたちがフォローをする。

その後、一行はプラネットエースの本部がある木星にやってきた。火星での出来事の報告などでグレンは忙しくしており、優希と大智はパームとジャッシュと共に、プラネットエース本部の見学をしてまわる。大智は木星に来てから言いようのない懐かしさをどこか感じていた。プラネットエースの本部の横の宿所を見学していたとき、偶然飾られていた写真立てに、大智は自分の幼い頃の写真を見つけて愕然とする。混乱した大智が駆け出してしまい、行方がわからなくなる。大智は運悪く、先ほどの土星人たちの一味のうちの一人逃げ出したメンバーに見つかってしまう。優希たちはグレンと合流し、必死に大智を探す。今にも土星人にやられそうになった瞬間、突然大智の体が変化し、グレンのようなたてがみがはえ、体が巨大化し、土星人の武器を素手で壊してしまった。そこに優希たちが現れる。プラネットエースメンバーたちは土星人の一人を確保し、大智(変身後)に感謝するが、大智だと分からない。優希は大智なんじゃないかと何となく思い、話しかけるが、大智はまた逃げ出してしまう。

しばらくして元の姿に戻って一人座り込んでいる大智をみんなが見つけ、話をする。実は、大智はグレンの息子であり、木星人と地球人のハーフだったのだ。第三次世界大戦の際、悪質な宇宙人が実は地球に来ていて、地球人同士の争いに加担していたのだが、そのような存在から地球を守るために戦っていたのが、プラネットエースであり、グレンはリーダー的存在であった。プラネットエースが地球から引き上げる際、大爆発に巻き込まれていたグレンは死んだと思われており、UFOに乗れず、地球に取り残されてしまった。変身術をマスターしていたので、地球人として生きることにし、地球でしばらく暮らし、家族もできたが、ある日UFOに乗って地球に来たプラネットエースの仲間が、夜中に変身術が解けているグレンの姿を発見する。地球人として生きるか、プラネットエースのメンバーとして使命に生きるか悩んだ末、グレンは大智の母に全てを託し、プラネットエースに戻ったのだ。
大智が年中長袖長ズボンを着ているのは、太陽の光を直接浴びると痛くなるというのもあるが、実は大智にはライオンのような黄金色の長い毛が両腕と両足にあり、それを隠すという理由もあったのだ。なぜ自分にそのような毛がはえていたのかを大智も理解した。
大智は真実を知り、グレンを責めたし、混乱もしたが、時間をかけて納得しているようだった。
そして優希は自身の家族について相談するとともに、自分の心の内を振り返る。


結)短い間ではあったものの、星を巡る旅を経て、優希も大智も成長していた。パパとママの仲を取り戻すために自分にできることを果たす、と強く決意した優希だった。名残惜しい思いもあったが、UFOは地球に到着する。着いたのは、2人がUFOを見つけた数時間後の朝だった。地球に派手に着陸すると周囲にばれる危険性があるので、上空からふんわりとした目に見えないベールのようなものに体をつつんで降ろしてもらうことになった。降ろしてもらった優希は、大智がその場にいないこと、自分のポシェットに手紙が入っていることに気づく。「優希、そして母さん。木星でやることがあるので、しばらく帰れないんだ。ごめんね。必ずまた会おう。その時まで、どうか元気で。大智より」優希はその場で号泣する。
大智の家に手紙を届けた優希は、自宅に戻る。相変わらずパパとママは仲直りをしていなかった。優希は家族が一緒にいられることがどれだけありがたいことなのかを身に染みて感じていたので、パパとママそれぞれに一生懸命に話をした。その甲斐あって、無事にママと透也は家に戻ってきて、家族は和解した。突然成長した娘の姿にパパもママもびっくりしていたが、優希は宇宙旅行の話は秘密にしていた。
夏休みが明けても、大智は学校に来なかった。田舎の学校に転校したと先生は言っていた。

やがて小学校の卒業式の日、大智が現れた。優希は怒りながら泣きながら感情をぶつけ、大智は困ったように慰めていた。どうやら木星で、地球に適合しやすい体になるよう治療していたらしい。これで、直接太陽の光を腕や足に浴びても大丈夫なんだそうだ。そして何より、もう少し父と接してみたかったとのことだった。木星もよかったけど、自分は地球で頑張るのだと決意を固めて戻ってきたそうだ。
優希と大智は、プラネットエースのメンバーに会える日を夢見ながら、それぞれの道を歩んでいく。
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