第2話 弱さの代償(性暴力表現あり)
文字数 2,926文字
目を覚ましたライナスは、気づくと見知らぬ密室の中にいた。
身につけていた衣類を全て脱がされ、手足はロープで縛られていて身動きが取れない。
「クソっ、なんなんだこれは!?」
自分に何が起きたのか全く把握できず、混乱するライナス。
しばらくすると、部屋に男が入ってきた。
「ふふふ……やっと目が覚めたか」
その男はライナスが食事をしたレストランの店主だ。
「てめぇ! 俺に何をした!?」
「うるせぇガキ! あれだけ食っておいて食い逃げしようとした奴が何を言ってんだ! あぁー!?」
先ほどの前の優しい態度から一変、非常にガラの悪い男へと豹変した店主。
「だから後で払うって言っただろ! 今すぐこれを振り解け!」
「貧乏くさいガキなんぞ信用できるか! 食った分はしっかり体 を 張 っ て 稼いでもらうからな!」
店主が扉を開けると、別の男がもう一人入ってきた。
「お客様、今日のデザートはこいつです。どうぞ、なんなりとお楽しみ下さい」
「ほう、なかなか可愛い子だね」
男はゆっくりライナスに近づく。
「てめぇ、こっち来んな!」
「おじさんは『お客様』だよ? 君、自分の立場分かってる?」
男は右手を伸ばし、ライナスの体を触り始める。
「う、ああ……やめろ! 汚い手で俺に触るな!」
「おじさんはねぇ、君みたいな可愛いねぇ、子の嫌がる顔が大好きなんだよ!」
男は夢中になってライナスの身体を弄り回す。
「オーナー、この子最高だよ! よかったらオーナーも参加してよ。そしてその様子をビデオ撮影してよ。販売すれば絶対売れるさ」
「それは良い提案ですね~。ビデオの売り上げは二人で山分けしましょう!」
店主は一旦部屋を出ると、撮影用のビデオカメラを持ってきた。そしてそれを壁に設置し、録画を開始する。
「おお、この子にお客様のアレがずっぽりハマっていますね~」
「ほら、オーナーのソレも食べさせてもらいなさい」
「な、なにをする! や、やめろー!! ……うぷっ! う、うもう……」
「ほら、上も下も責められて、君もたまんないだろぉ~?」
口を塞がれ、叫ぶこともできず、涙を流しながら必死に耐えるライナス。
――彼は長いこと弄ばれて数時間後、ようやく身柄を解放され、身に着けていた衣類や持ち物は返してもらった。
しかし、彼が報復できぬようにしたのか、銃の弾倉は空っぽになっている。
今回の出来事は彼の心に深い傷を残すこととなった。
「ちくしょう……俺はなんて弱い奴なんだ」
ライナスは自分をこんな目にあわせた男たち、財布を盗んだ犯人よりも、この状況を回避できなかった自分の無力さを恨んでいた。
彼自身、普段から人を傷つけたり奪ったりしながら生きている人間だ。
自分をひどい目にあわせた男たちを悪く言える立場では無いことを彼は自覚している。
時代は弱肉強食、弱いことが罪なのだと彼は思っていた。
外は日が暮れ、辺りはすっかり暗くなっていた。
ライナスが自分の家に帰宅するには町の外に出る必要があるが、外は無法者で溢れかえっている。丸腰の彼がそのまま外に出るのは危険だ。
その上、今の彼は一銭の金も持ち合わせていない。この町で野宿するか、どこかに泊めてもらうしかないだろう。
ライナスは道行く人々に助けを求めたが、彼に手を差し伸べる者は誰一人いなかった。
このご時世、多くの大人は子供、いや……他人に手を差し伸べる余裕など無いのだ。
途方に暮れ町をさまよっていたライナスはしばらくすると、目の前の向こうにいる二人の人物に目を向けた。
一人は裕福そうな身なりの中年紳士、もう一人は中年紳士の背後からひっそり後を追っている、十代前半くらいの年齢の少年だ。
そして、その少年がスリであることをライナスは一目で見抜いた。
(よっしゃー! 最高の飯の種がやってきたぜ!)
ライナスは何を思いついたのか、絶望から一転、希望に満ちた表情を見せる。
少年が紳士に近づき手を伸ばした瞬間、ライナスは瞬時に駆け付け、少年の右手をつかんだ。
「このガキ! スリなんかやってんじゃねーぞ!」
「ひいぃっ!」
容赦なく少年を捕まえるライナスと怯える少年の声に、紳士が反応して振り向いた。
その瞬間、ライナスはここぞとばかりに言葉を発する。
「おっさん、こいつはあんたを襲おうとした泥棒だ! 俺が捕まえてやったぞ!」
「ほう、私としたことが、まさかスリに狙われていたとはね。その泥棒少年の身柄はあそこに引き渡すとしよう」
「ごめんなさい! もうしないので助けて! 僕、どうしてもお金が必要で……」
「君、子供だからって何をしても許されるものでは無いのだよ? しっかり罪を償っていきなさい」
紳士は不気味な笑みを浮かべながら少年の身柄を拘束する。
「そこの君、私の為に泥棒を捕まえてくれてありがとう。後でお礼をするから私についてきなさい」
「本当か!? 助かるぜ!」
ライナスは紳士からのご褒美を楽しみにしながら後をついていった。
たどり着いた先はなんと、先ほどライナスが壮絶な目にあったステーキ店だ。
(え? これってまさか……アッ!)
ライナスはこの紳士が何を企んでいるのかをすぐに察した。それと同時に、どことなくスカっとした気分になれた。
「ちょっと用事があるから、君はそこで待っていなさい」
「あぁ、分かった」
紳士はライナスを一旦店の外に待たせ、少年と一緒に店の中へ入っていった。
――
「オーナー、こんばんは。ちょっと話があるんだけど良いかな?」
「あら、アルベルト・ランカスター卿、いらっしゃい! ご無沙汰じゃないですか~」
「オーナー、今日はあなたと取引をしたくてここへやってきたのだ」
アルベルトと呼ばれた紳士は少年を店主へ突き出す。
「この少年は私からお金をすろうとした不届き者だ。だが、お金に困っている少年をこのまま見捨てるわけにはいくまい。そこでだ、オーナーにはこの少年を買い取ってもらい、店で働かせてあげて欲しいのだ。少年が悪事を働かなくても食べていけるようにな」
「あらまぁ、こんな可愛い子を私に売って下さるのですか!? 喜んで買いますとも! この子が真っ当に生きていけるように私も頑張ります!」
アルベルトは少年の身柄を店主に引き渡し、店主はその品代金として札束をアルベルトに渡す。
「少年、これからは真面目に働いて生きていくのだよ」
「君、頑張って働いてくれたら美味しいステーキとソーセージを食べさせてあげるからね~」
「本当に!? おじさん、僕頑張るよ! ありがとう!」
取引が成立すると、アルベルトは店を後にし、少年と店主はその様子を笑顔で見送った。
少年はその後、自分の身に何が待ち受けているのかを知る由も無かった。
――
「待たせて悪かった。それと自己紹介がまだだったね。私の名はアルベルト・ランカスターだ。その身なりだと、君もお金に困っているようだね?」
「あぁ、実は財布を盗まれちまって一銭も持っていないんだ。助けてくれ」
「そうか、可哀想に……。今日は私の家で食事と寝床を用意してあげよう。安心しなさい、君はあの少年と違って店に売りつけたりはしないから」
「そうか、ありがとう」
二人はアルベルトの家を目指して歩いて行ったのであった。
身につけていた衣類を全て脱がされ、手足はロープで縛られていて身動きが取れない。
「クソっ、なんなんだこれは!?」
自分に何が起きたのか全く把握できず、混乱するライナス。
しばらくすると、部屋に男が入ってきた。
「ふふふ……やっと目が覚めたか」
その男はライナスが食事をしたレストランの店主だ。
「てめぇ! 俺に何をした!?」
「うるせぇガキ! あれだけ食っておいて食い逃げしようとした奴が何を言ってんだ! あぁー!?」
先ほどの前の優しい態度から一変、非常にガラの悪い男へと豹変した店主。
「だから後で払うって言っただろ! 今すぐこれを振り解け!」
「貧乏くさいガキなんぞ信用できるか! 食った分はしっかり
店主が扉を開けると、別の男がもう一人入ってきた。
「お客様、今日のデザートはこいつです。どうぞ、なんなりとお楽しみ下さい」
「ほう、なかなか可愛い子だね」
男はゆっくりライナスに近づく。
「てめぇ、こっち来んな!」
「おじさんは『お客様』だよ? 君、自分の立場分かってる?」
男は右手を伸ばし、ライナスの体を触り始める。
「う、ああ……やめろ! 汚い手で俺に触るな!」
「おじさんはねぇ、君みたいな可愛いねぇ、子の嫌がる顔が大好きなんだよ!」
男は夢中になってライナスの身体を弄り回す。
「オーナー、この子最高だよ! よかったらオーナーも参加してよ。そしてその様子をビデオ撮影してよ。販売すれば絶対売れるさ」
「それは良い提案ですね~。ビデオの売り上げは二人で山分けしましょう!」
店主は一旦部屋を出ると、撮影用のビデオカメラを持ってきた。そしてそれを壁に設置し、録画を開始する。
「おお、この子にお客様のアレがずっぽりハマっていますね~」
「ほら、オーナーのソレも食べさせてもらいなさい」
「な、なにをする! や、やめろー!! ……うぷっ! う、うもう……」
「ほら、上も下も責められて、君もたまんないだろぉ~?」
口を塞がれ、叫ぶこともできず、涙を流しながら必死に耐えるライナス。
――彼は長いこと弄ばれて数時間後、ようやく身柄を解放され、身に着けていた衣類や持ち物は返してもらった。
しかし、彼が報復できぬようにしたのか、銃の弾倉は空っぽになっている。
今回の出来事は彼の心に深い傷を残すこととなった。
「ちくしょう……俺はなんて弱い奴なんだ」
ライナスは自分をこんな目にあわせた男たち、財布を盗んだ犯人よりも、この状況を回避できなかった自分の無力さを恨んでいた。
彼自身、普段から人を傷つけたり奪ったりしながら生きている人間だ。
自分をひどい目にあわせた男たちを悪く言える立場では無いことを彼は自覚している。
時代は弱肉強食、弱いことが罪なのだと彼は思っていた。
外は日が暮れ、辺りはすっかり暗くなっていた。
ライナスが自分の家に帰宅するには町の外に出る必要があるが、外は無法者で溢れかえっている。丸腰の彼がそのまま外に出るのは危険だ。
その上、今の彼は一銭の金も持ち合わせていない。この町で野宿するか、どこかに泊めてもらうしかないだろう。
ライナスは道行く人々に助けを求めたが、彼に手を差し伸べる者は誰一人いなかった。
このご時世、多くの大人は子供、いや……他人に手を差し伸べる余裕など無いのだ。
途方に暮れ町をさまよっていたライナスはしばらくすると、目の前の向こうにいる二人の人物に目を向けた。
一人は裕福そうな身なりの中年紳士、もう一人は中年紳士の背後からひっそり後を追っている、十代前半くらいの年齢の少年だ。
そして、その少年がスリであることをライナスは一目で見抜いた。
(よっしゃー! 最高の飯の種がやってきたぜ!)
ライナスは何を思いついたのか、絶望から一転、希望に満ちた表情を見せる。
少年が紳士に近づき手を伸ばした瞬間、ライナスは瞬時に駆け付け、少年の右手をつかんだ。
「このガキ! スリなんかやってんじゃねーぞ!」
「ひいぃっ!」
容赦なく少年を捕まえるライナスと怯える少年の声に、紳士が反応して振り向いた。
その瞬間、ライナスはここぞとばかりに言葉を発する。
「おっさん、こいつはあんたを襲おうとした泥棒だ! 俺が捕まえてやったぞ!」
「ほう、私としたことが、まさかスリに狙われていたとはね。その泥棒少年の身柄はあそこに引き渡すとしよう」
「ごめんなさい! もうしないので助けて! 僕、どうしてもお金が必要で……」
「君、子供だからって何をしても許されるものでは無いのだよ? しっかり罪を償っていきなさい」
紳士は不気味な笑みを浮かべながら少年の身柄を拘束する。
「そこの君、私の為に泥棒を捕まえてくれてありがとう。後でお礼をするから私についてきなさい」
「本当か!? 助かるぜ!」
ライナスは紳士からのご褒美を楽しみにしながら後をついていった。
たどり着いた先はなんと、先ほどライナスが壮絶な目にあったステーキ店だ。
(え? これってまさか……アッ!)
ライナスはこの紳士が何を企んでいるのかをすぐに察した。それと同時に、どことなくスカっとした気分になれた。
「ちょっと用事があるから、君はそこで待っていなさい」
「あぁ、分かった」
紳士はライナスを一旦店の外に待たせ、少年と一緒に店の中へ入っていった。
――
「オーナー、こんばんは。ちょっと話があるんだけど良いかな?」
「あら、アルベルト・ランカスター卿、いらっしゃい! ご無沙汰じゃないですか~」
「オーナー、今日はあなたと取引をしたくてここへやってきたのだ」
アルベルトと呼ばれた紳士は少年を店主へ突き出す。
「この少年は私からお金をすろうとした不届き者だ。だが、お金に困っている少年をこのまま見捨てるわけにはいくまい。そこでだ、オーナーにはこの少年を買い取ってもらい、店で働かせてあげて欲しいのだ。少年が悪事を働かなくても食べていけるようにな」
「あらまぁ、こんな可愛い子を私に売って下さるのですか!? 喜んで買いますとも! この子が真っ当に生きていけるように私も頑張ります!」
アルベルトは少年の身柄を店主に引き渡し、店主はその品代金として札束をアルベルトに渡す。
「少年、これからは真面目に働いて生きていくのだよ」
「君、頑張って働いてくれたら美味しいステーキとソーセージを食べさせてあげるからね~」
「本当に!? おじさん、僕頑張るよ! ありがとう!」
取引が成立すると、アルベルトは店を後にし、少年と店主はその様子を笑顔で見送った。
少年はその後、自分の身に何が待ち受けているのかを知る由も無かった。
――
「待たせて悪かった。それと自己紹介がまだだったね。私の名はアルベルト・ランカスターだ。その身なりだと、君もお金に困っているようだね?」
「あぁ、実は財布を盗まれちまって一銭も持っていないんだ。助けてくれ」
「そうか、可哀想に……。今日は私の家で食事と寝床を用意してあげよう。安心しなさい、君はあの少年と違って店に売りつけたりはしないから」
「そうか、ありがとう」
二人はアルベルトの家を目指して歩いて行ったのであった。