プロット

文字数 1,111文字

起)ごく普通の小学校、本乃木(もとのき)小学校。そこに通う平凡な小学校6年生の唐松檜( からまつかい)。檜の同級生、灯屋由加里(あかしやゆかり)。顔立ちは整っているが誰かと会話をしているところを見たことがない由加里に檜は不思議な魅力を感じていた。
承)ある日、国語の先生に「昼休みに図書室へ資料を取りに行ってほしい」と頼まれた檜は図書室に足を運ぶ。すると部屋の隅で一人、本を読む由加里を発見する。その後も先生の依頼をこなすたびに目に入る彼女。一か月ほどたったある日に檜は勇気を出し由加里に話しかける、「いつもここで本を読んでいるよね」「そうだけど」と本から目を逸らさずにそっけなく答える由加里に折れることなく畳み掛ける檜。「おすすめの本はある? 僕はあまりそういうの詳しくないから」すると由加里は相も変わらずにそっけない様子ですぐ横に置いてある本を差し出した。その本は小川未明(おがわみめい)という作家が(あらわ)した「町のお姫さま」という作品だった。檜は由加里から本を受け取り、感謝を伝えた後、貸出手続きをして頼まれていた仕事に戻った。
転)それからも檜は由加里に勧められた本を図書室内の由加里が座るいつもの席の一つ隣で読み、そして時々感想を言うなどして交流を深めていたが、卒業を控えた秋、図書館内の本が一冊盗まれるという事件が起きた。それは由加里が初めて檜に(すす)めた本「町のお姫さま」だった。翌日、学級内でも注意喚起が行われた。檜はその日の昼休みに図書室に行けなかった。国語の先生に職員室から教室まで資料を運んでほしいと呼び出されていたからだ。「君は寂しいと感じることについてどう思う?」先生は作業の片手間に檜に質問した。唐突な質問に檜は慌てて「寂しいことは悪いことではないと思います、すぐに見つけますから大丈夫です」と答えた。
結)檜は放課後迷うことなく図書室へ向かった。図書室の扉を開けるとやはりいつも通り部屋の隅の寂しい席に座っている由加里を捉えた。檜は盗まれた「町のお姫さま」を読んでいる由加里の正面に座った。本を盗んだのは由加里だったのだ。由加里は「私は寂しいのが好きだと君に伝えるためにこの本を勧めたし、関係を無くしたくてこの本を盗んだ」と言った。「それじゃあ君は僕と感想を言い合う必要もなかったし、そもそもその本を薦める必要だってなかったはずだ。君はどこか自分の考えを変えてくれる人を探していたんじゃないのか」檜は言いながら先生の質問の意図を理解した。先生は全て知っていたのかもしれない。檜は思いの丈をぶつけるように由加里を説得した。事件後は先生の助けもあり、由加里には放課後に図書室の清掃を課されただけだった。それから何年か過ぎたどこかの図書室には隣り合って座るふたりの姿があった。
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