第1話
文字数 625文字
銭湯に行く夜道で迷い犬を拾った。
毛は肩まであり、ボサボサ。
前髪が長く、目元は見えない。
体は黒く薄汚れていた。
どうしようか?
寒さでふるふると震え、「くぅ〜ん……」とすり寄ってきた。前髪のカーテンから少しだけ目元が覗いた。潤んだビー玉の様で胸が跳ねる。
自分の心情に戸惑いながらも、一緒に銭湯に連れて行く事にした。
「いらっしゃい」
2人分のお金を払う。
「さぁ、きれいさっぱりしよう」
俺は服を脱がせ、一緒にお風呂へ向かった。
シャワーを全身に当てると、みるみるうちに汚れが取れて、排水溝に茶色の液体が流れていく。少し汚れが取れた素肌はつるつるで、ムキムキだった。そんな体型を見て、また胸が跳ね上がる。
いや、いや、大丈夫だ。
落ち着くんだ。
次は頭にシャンプーをつけて、わしゃわしゃ洗ってあげた。だんだんと艶が戻ってきて、可愛いお目々があらわになる。まつ毛が長い。潤んだ目が俺を射抜き、もう限界だった。
認めたくないが、この迷い犬に……
恋をしてしまったようだ。
ドキドキを隠せないまま、彼の後ろへ座り背中を洗おうとした。背中も大きくて、広くて、逞しくて、びっくりだった。触れるのに手が震える。ドキドキが止まらない。
戸惑っていると、背中の右下のあたりに刺青を発見する。
〝私が飼い主です。もし彷徨っていたら連絡下さい〟
自称50代男性の名前の下には、住所と連絡先が書いてあった。正確に言えば彫ってあったのだ。
「何だ!飼い主いるんかい!」
俺は泣きながら、強く彼を抱き締めた。
end
毛は肩まであり、ボサボサ。
前髪が長く、目元は見えない。
体は黒く薄汚れていた。
どうしようか?
寒さでふるふると震え、「くぅ〜ん……」とすり寄ってきた。前髪のカーテンから少しだけ目元が覗いた。潤んだビー玉の様で胸が跳ねる。
自分の心情に戸惑いながらも、一緒に銭湯に連れて行く事にした。
「いらっしゃい」
2人分のお金を払う。
「さぁ、きれいさっぱりしよう」
俺は服を脱がせ、一緒にお風呂へ向かった。
シャワーを全身に当てると、みるみるうちに汚れが取れて、排水溝に茶色の液体が流れていく。少し汚れが取れた素肌はつるつるで、ムキムキだった。そんな体型を見て、また胸が跳ね上がる。
いや、いや、大丈夫だ。
落ち着くんだ。
次は頭にシャンプーをつけて、わしゃわしゃ洗ってあげた。だんだんと艶が戻ってきて、可愛いお目々があらわになる。まつ毛が長い。潤んだ目が俺を射抜き、もう限界だった。
認めたくないが、この迷い犬に……
恋をしてしまったようだ。
ドキドキを隠せないまま、彼の後ろへ座り背中を洗おうとした。背中も大きくて、広くて、逞しくて、びっくりだった。触れるのに手が震える。ドキドキが止まらない。
戸惑っていると、背中の右下のあたりに刺青を発見する。
〝私が飼い主です。もし彷徨っていたら連絡下さい〟
自称50代男性の名前の下には、住所と連絡先が書いてあった。正確に言えば彫ってあったのだ。
「何だ!飼い主いるんかい!」
俺は泣きながら、強く彼を抱き締めた。
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