本日付で着任しました

文字数 758文字

転勤で知らない街に赴任した日に
「美味い店を教えて欲しい」と
地元出身の後輩社員に声をかけた

私の目的は
この街の情報収集と
これから一緒に仕事をする後輩の人となりを見るコトだ 

一瞬、戸惑った彼の表情を見逃さなかったけれど
すぐに笑顔で立ち上がり
「はい」と返事をする姿は好印象だ
美味くて、早くて安ければ、尚イイ
と軽口を添えてみた

少し考えた彼は、値踏みをするように僕をみて
「少し歩きますが、いいですか?」
と、言ってきた。
早ければ尚イイと言ったのだが、そこは同意する。

一緒に歩きながら、彼に街の特徴を聞いてみた

「この街は一体感がありますね、
 あ、排他的という意味ではありませんよ」

彼が言うには
昔から、何かが流行ると、
すぐに街中で夢中になるんだとか。

街の公民館で
大人から子供まで参加した
カードゲーム大会が行われた事もあるらしい。

「最近は・・あ、そこを曲がります」

もう、近くだと言いながら
なぜか、彼の歩く速度が落ちている

交差点を渡ろうとすると
道路の向こう側に両手を祈るようにしたまま
走るサラリーマンの姿が見える

縁台に座る老人の、傍を走り抜けた男性は
胸にマークのついたタスキ?をしていたが
手に銃のようなものが見えた

「この信号を渡ると、始まりますから」

振り返ると
彼の胸には星が描かれたベルトが装着され
手には銃が握られている

道を渡ると、縁台の老人がいきなり銃を取り出した
胸のマークは彼とは違っていた

「先輩、そこの赤い提灯の店です」
彼は店を指差しながら、爺さんを撃って走り出した。

「おでん定食が早くて美味いです、大根の味がサイコーです」

彼は走り出し、私は置いてけぼりを食った
たしかに、
「食事を一緒にしよう」とは、言わなかった・・か。

ま、目的は果たせた

この街の最近のブームは、サバイバルゲームらしい
それに、素直で生まれた街が大好きな後輩のようだ。
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