夢の跡

文字数 1,212文字

 得てして映画を観終わった後というのは映画の中の非日常の世界から現実の世界に還ってくるまでに多少の混乱があったりするものだ。現実と幻想の間でフワフワするという感覚を恐らく多くの人が体験したことがあるだろう。
 そしてその境界が曖昧な感覚というのは自分が観た映画のインパクトが大きければ大きいほど強く尾を引くものであろう。

 そう、例えば宮崎駿作品を見た後とか

 と、言うことで本日は午前9時30分からという最寄りの映画館の最速の上映で『君たちはどう生きるか』を観てきた。
 人生で初めて前日の夜の内にネットでチケットを購入してさらに深夜に『カリオストロの城』を見返して宮崎駿成分をキメキメ(?)の状態にして映画館へ。




※ここからはゆるく映画の話をするので近日中に『君たちはどう生きるか』を観る予定がある人は読まないほうがいいかもしれません。

 まず、物販コーナーを覗くと売っていたのはポスター、ポストカードに下敷き、クリアファイルと種類少なめ。パンフレットが無かったのが個人的に残念。

 お客さんは約350ある座席に対して目視で大体50~60人という入り。明日からの3連休が本番だろうか。
 ちなみに私は3連休はすべて仕事です。

 そして内容はというと…一言で言うと「難しい」。どちらかという過去の作品で言うと『千と千尋』や『ハウル』に近しいテイストかと思われる。なので『ナウシカ』や『ラピュタ』のようなものを期待して行くと違うなぁ…と思うかもしれない。

 とにかく説明することを省いてちらかった抽象的なものが不規則に詰め込まれている印象を受けたので1回みて「痛快!」「面白い!」となるタイプの作品ではなく時間をかけてゆっくり咀嚼する必要があるタイプの作品だと感じた。
 しかし随所随所に見られる思いっきりこちらの首根っこを捕まえて目が離せなくなる様な鮮烈な印象のシーンを観ると「やっぱり宮崎駿はスゲえや」と素直に思ってしまった。

 これで昨年の12月に公開日が発表されてから静かに刻まれ続けていたカウントダウンが終わり今日というお祭りが終わってしまったことと、映画の中に込められているメッセージ、散りばめられた過去の自身の作品やスタジオジブリの他の作品のオマージュにも感じられるようなシーン、そして今作の声優陣などを見るにつけ今の所言葉にこそしていないけれど「ああ、今作で『本当に』長編映画は最後なのかなぁ」という感じがヒシヒシと伝わってきたことで二重の寂しさが今、押し寄せている。

 同じ1日というものは2度と存在しないけれど人間というのは鈍感なので過ぎ去ってしまえばほとんどのその特別だったはずの1日は忘れ去られて「いつもと同じ1日」として記憶の遙か片隅に追いやられてしまう。
 しかし、宮崎駿のおかげで私にとって今日、2023年7月14日という1日は「それなりに特別だった1日」として長い間記憶に残る1日になるだろう。

 ありがとうございました。
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