第1話

文字数 1,988文字

科学と技術に興味を持ち、新たな発見と冒険を求めて止まない一星透明(ひとつぼししゅうめい)。ある日、透明は花カゴを持った猫が横断歩道二足歩行で渡るのを見つけた時、「そこからワープ」という画期的なひらめきで発明を始めることになりました。彼は科学の理論と技術の進歩を駆使し、スマホと脳に埋め込まれたチップが連動するシステムを完成させました。わずか半月でスマホをタップするだけで好きな場所に瞬間移動を可能にする画期的なトラベルツールでした。透明の夢は現実になり、自由自在に世界旅ができるようになったのです。

透明は最初のワープ先に500年後の未来を選びました。彼は一瞬にして未来の世界へと飛ばされたかのような感覚を覚え驚きと興奮が彼を包みました。

「トム」「え?僕は透明だよ。」「僕はトムだから君もトムだと思っていたよ。」「君は僕だから、僕はトム?」「ああそうかい。」「トムでいいだろう。」未来の世界でトムと名乗る自分と出会った透明はワクワクしました。トムは新たな人口知能の技術で生活がサポートされ宇宙探査の目覚ましい発展する近未来社会を目の当たりにしました。トムと透明は世界の素晴らしさと可能性について語り合いました。不思議なことに500年後のトムと透明は双子のようでした。AIが不老不死の薬を開発し、それをワクチンとして摂取した彼らは摂取した日から老いが無くなったのでした。

しかし、物語はここで意外な展開を迎えます。透明は500年後にワープしたのではなく、脳に埋め込まれたチップとスマホが連動し、あたかもその場所に移動した錯覚を得ただけだったのです。「なんだ、せっかくワープしたと思ったのに。」「にゃ。」「ただいまニャ。」透明はなぜか猫と会話出来ました、というより、猫が彼の言葉を汲み取ってくれていたのでした。

透明はその後も何度かタイムトラベルしました。でも、すぐに現実に戻ってきました。脳のチップには脳を超リラックスする機能があり、ある周波までくるとあたかも眠りながら起きていて思ったことが現実世界になるという錯覚でタイムトラベル誤認が起こっていたのでした。しかし、ワープ時間はたったの5分でしたが、何日にも何百日にも思えるほど充実感がありました。透明はタイムマシンにも乗り、不思議なトンネルをジェットコースターの様にぐるんぐるんとうねりとともに進み続けたのに、単なる錯覚であることが信じられず嘆き落胆しました。

しかし、ワープを繰り返すうちにある奇跡的なことに気付きました。それは、脳が大きくなり、頭蓋骨ごと成長していることでした。(人々はモアイ像になっていくのだろう。)おでこあたりが膨らみ、西洋人化した後、体も倍になっていきました。脳が大きくなっただけでなく特殊な能力がみられるようになりました。そのおかげで、透明の場合は何気に動物の言葉がわかるようになっていました。例えばサファリパークへ行くと、像が「あっちへ行くとライオンがいるぞう。」だったり。ある時は鶯がこう言ったのでした。「ここから100メートル向こうに行くといいことがあるってば。」「ホント?」「え、何が?」「ほら、鶯が言ってるよ。」「どこ、鶯?またまた、メジロ?カラス?何も聞こえないよ。」透明も最初は空耳かと思いましたが実際にそこでは誰かが廃棄された数百枚の美しい絵画をみつけ、なんと数百億の価値だとわかりました。透明の場合は動物の声が聴ける能力でしたが、そのワープを繰り返す度に、いくつかのパターンで人々の脳の進化がみられました。例えば、ヒョウよりも早く走れる特技を持てた人はオリンピックで金メダルを狙うのでした。

彼は自由に世界中を旅できるという新たな発見を手に入れるだけでなく、それによって人々が新しい能力を持てることを発見したのです。透明は人々とその技術を共有し、社会の進歩と探求の道を切り拓くことを決意しました。

透明はスマホを手に、自身の夢や探求心を胸に世界中を旅しあらゆる動物と会話しました。彼は架空の場所や未知の文化と触れ合いながら、新たな発見と経験を重ねました。彼の冒険は、物語の舞台を超えて広がり、人々の想像力と可能性を刺激していきました。

空を飛べる人、AIよりも早く計算できる人、発電できる人、知能指数が物凄い人、植物と会話できる人、いくつも楽器の演奏が楽器なしでできる様になりリサイタルを開催できるようになった人、作曲家、美味しい料理を仕入食材ごと作れてしまうシェフなど、様々な能力を獲得していけるのでした。ただ、それは1人につき1度きりの変化で変化の内容も選ぶことはできなかったのでした。なぜ人によって違うのか、その謎はまだ透明にも分かりませんでした。ある人は手をかざすだけで花を咲かせることができ、ある人は呪文を唱えるだけで美味しいスイカやメロンを手品のように箱の中で発生させたのでした。
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