涼しい
文字数 1,212文字
この風が欲しかった
今日の星空を望んでた
だけど月がなかった。ここ暫く雨続きで、月を見ていない。
わたしは泣いた。目を閉じた先で延々と泣いた。そこには彼がいた。その隣に別の彼がいる。堪らなく苦しいのだ。
《わたしは月の中で泣いている》
そう思うと少し気が紛れた。月をつつく私が、その中にすっぽりと収まる様を想像した。後ろ髪は赤く、黒い前髪は逆立って、『ここには立ち入り禁止です』と言わんばかりにわたしが、わたしすら立ち入らせないつもりの目をしていた。血走ってはいないが、黒点が大きく気味が悪かった。
もう一度先ほどの夢を思い返してみた。わたしはコンビニでお会計をしていた。
そこで後ろを振り向くと、視界に豪快なチョコミントパフェを捉えた。他にもイチゴ、チョコ、バニラと数種類並んでいる。プラスチックのカップから溢れて、太った薔薇のように盛り付けられたそれを、わたしはレジに持ち込むか迷った。だけどわたしはお腹いっぱいだった。だけどどうしても、今、チョコミントの気分にさせられつつあった。
視界を肌の焦げた筋肉質な男へと戻し、財布を確認したところで『彼と彼』が来店した。わたしは途端に彼のことで頭がいっぱいになった。彼らのことでめちゃくちゃだった。"どうしてこんなところまで"。今すぐここから立ち去りたかった。
外に出ると自転車が無くなっていた。この時点で少し泣いた。
店主も一緒になって探してくれて、それでも見当たらなかった。もう一度店内に引き返す。ここで気がついた。そもそもわたしは自転車で来ていなかった。
彼と彼が談笑する。そちらを見れない。見れない方向に間違いなく、彼と彼は存在していた。
店主にも顔向けできない。だけど礼は伝えた。店主はわたしのグズを見抜いていて、「あーへい」と素っ気なく答える。チョコミントの方角にチョコミントは無くなっていた。店を飛び出した。
外には白装束の集団が列を作り、なにやら稽古している。わたしは煙に撒きたくなって、だから、「煙を使うあのゲームキャラクター」を思い出したのかもしれない。
"彼女"の声を聴くと、その声に続いてわたしは、白煙の中を駆けた。抜け出すと、濃く光る、2点の瞬きに目を奪われた。
わたしはいつの間にか目を覚ましていて、
晴れ渡った空にある星の
そこには暗闇と、2点の星と、『月が無い』という感触だけが残っていた。そこでわたしはぶるぶる泣いた。どうしてこんなことが苦しいか。苦しくて、わたしはほんの少しの間だけ、祈り、蹲った。
《わたしは月の中で泣いている》
もう一度言葉にして、今度は口に出してみた。やっぱり少しだけ、気分が楽になった。
お腹が重いけど、なんとなく星空を眺めたくて、
二百円だけ両のポケットに突っ込んで、家を出た。
今日の星空を望んでた
だけど月がなかった。ここ暫く雨続きで、月を見ていない。
わたしは泣いた。目を閉じた先で延々と泣いた。そこには彼がいた。その隣に別の彼がいる。堪らなく苦しいのだ。
彼と彼が共にいる
ということがこんなにも苦しいか。《わたしは月の中で泣いている》
そう思うと少し気が紛れた。月をつつく私が、その中にすっぽりと収まる様を想像した。後ろ髪は赤く、黒い前髪は逆立って、『ここには立ち入り禁止です』と言わんばかりにわたしが、わたしすら立ち入らせないつもりの目をしていた。血走ってはいないが、黒点が大きく気味が悪かった。
もう一度先ほどの夢を思い返してみた。わたしはコンビニでお会計をしていた。
そこで後ろを振り向くと、視界に豪快なチョコミントパフェを捉えた。他にもイチゴ、チョコ、バニラと数種類並んでいる。プラスチックのカップから溢れて、太った薔薇のように盛り付けられたそれを、わたしはレジに持ち込むか迷った。だけどわたしはお腹いっぱいだった。だけどどうしても、今、チョコミントの気分にさせられつつあった。
視界を肌の焦げた筋肉質な男へと戻し、財布を確認したところで『彼と彼』が来店した。わたしは途端に彼のことで頭がいっぱいになった。彼らのことでめちゃくちゃだった。"どうしてこんなところまで"。今すぐここから立ち去りたかった。
外に出ると自転車が無くなっていた。この時点で少し泣いた。
店主も一緒になって探してくれて、それでも見当たらなかった。もう一度店内に引き返す。ここで気がついた。そもそもわたしは自転車で来ていなかった。
彼と彼が談笑する。そちらを見れない。見れない方向に間違いなく、彼と彼は存在していた。
店主にも顔向けできない。だけど礼は伝えた。店主はわたしのグズを見抜いていて、「あーへい」と素っ気なく答える。チョコミントの方角にチョコミントは無くなっていた。店を飛び出した。
外には白装束の集団が列を作り、なにやら稽古している。わたしは煙に撒きたくなって、だから、「煙を使うあのゲームキャラクター」を思い出したのかもしれない。
"彼女"の声を聴くと、その声に続いてわたしは、白煙の中を駆けた。抜け出すと、濃く光る、2点の瞬きに目を奪われた。
わたしはいつの間にか目を覚ましていて、
晴れ渡った空にある星の
つぶ
を見つめていたのだった。そこには暗闇と、2点の星と、『月が無い』という感触だけが残っていた。そこでわたしはぶるぶる泣いた。どうしてこんなことが苦しいか。苦しくて、わたしはほんの少しの間だけ、祈り、蹲った。
《わたしは月の中で泣いている》
もう一度言葉にして、今度は口に出してみた。やっぱり少しだけ、気分が楽になった。
お腹が重いけど、なんとなく星空を眺めたくて、
二百円だけ両のポケットに突っ込んで、家を出た。