第1話 ガチャのはじまり

文字数 851文字

暗闇の中、大和はゆっくりと目を開けた。まぶたの裏から微かに光が差し込み、意識が次第に現実へと引き戻されていく。頭がぼんやりとして、どこにいるのか全くわからない。周囲を見回すと、彼は見慣れない場所にいた。白い壁とシンプルなデザインの部屋、ベッドの上に横たわる自分。ここはどこだ?

「おはようございます、大和さん」

突然の声に大和は驚き、声の方向を見た。そこには、人間そっくりのアンドロイドが立っていた。冷静な声とともに、彼の意識をはっきりさせるために言葉を続ける。

「あなたはコールドスリープから目覚めました。これからあなたの新しい人生が始まります」

「新しい…人生?」

大和は言葉の意味を理解しようとするが、混乱するばかりだった。記憶の中を探ると、地球が滅び、新しい星を求めて旅立つ計画があったことを思い出す。彼はその計画の一員だった。しかし、次の瞬間、アンドロイドが手に持っていたガチャポンのカプセルが彼の目の前に差し出される。

「これは『人生ガチャ』です。これを引いて、あなたの次の人生を決めてください」

大和は戸惑いながらもカプセルを手に取り、回してみた。カプセルの中から紙片が出てくる。それには「縄文時代の農民」と書かれていた。

「これが…僕の新しい人生?」

彼がその紙片をじっと見つめると、周囲の景色がぐるりと変わり始めた。まるで夢の中にいるかのように、現実が歪んでいく。そして次の瞬間、大和は古代の村に立っていた。足元には土が広がり、遠くには山々が連なっている。村の人々が忙しく動き回っているのが見える。

「本当に…縄文時代なのか?」

大和は自分が今どこにいるのか、何をすべきかを理解しようと必死だった。しかし、彼の頭にはアンドロイドの言葉が響いていた。「新しい人生」とは、このことだったのだ。彼は深呼吸をして気持ちを落ち着け、目の前の現実に向き合う決意を固めた。

縄文時代の風景を見つめながら、大和は自分がこの時代の農民として生きることを受け入れるしかないと悟った。未知の世界での新たな生活が始まろうとしていた。
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