プロット

文字数 2,628文字

 
『猛獣くんのお世話係はじめました!』


起:
中学一年生の宇佐美みみは、《動物と話せる》不思議な力を持った女の子。小さい頃から、同級生や周りの人たちに、動物と話せることを「嘘つき」「気持ち悪い」と言われてきた。
だから、みみは転校先の中学校では、自分が《動物と話せる》のはヒミツにしようと心に誓う。
ある日の下校中、どこからともなく『やめろ!』『お前の方こそ!』と言い争っている声が聞こえてきた。
声のしたほうへと行ってみると、鳩と鳩が何やら揉めている様子。
とっさに飛び出したみみはケンカの仲裁に入り、鳩たちは無事に仲直り。
ホッとするみみだが、その現場を同じクラスの小鳥遊レオに見られてしまう。
小鳥遊レオは超絶美形のイケメンだけど、いつも腕や足に生傷が絶えない。そのため、喧嘩無双や暴走族の総長だなんて噂もある、《猛獣》と呼ばれている男の子だった。
レオに、動物と話せることがバレてしまったと絶望するみみ。
怯えていたらレオに突然腕を引かれ、みみは近くのレオの家に連れて行かれてしまう。
テンパるみみに、レオは、
「もしも本当に動物と話せるなら、コイツに、どうして最近元気がないのか聞いてほしい」
と、告げる。
レオは飼い犬のタロウと話しをさせるために、みみを家まで連れてきたらしい。
言われるがままに、タロウと話すみみ。
タロウが最近元気がないのは、『新しくなったエサがマズイから』だとレオに教える。
レオが実際に、別のエサをタロウにあげてみると、タロウは大喜び。
「お願い、私が変な力を持っていることは内緒にして」
と、みみはレオに頼むが、それを聞いたレオは、
「動物と話せるのは、変な力なんかじゃないだろ。むしろ、めちゃくちゃすげーじゃん」
そう言って、みみの話を信じてくれただけでなく、不思議な力を認めてくれた。
みみは初めて自分の力を気持ち悪がらずに受け止めてくれたレオに好感を持つが、まだレオを信じていいのか半信半疑だ。
すると今度はレオが、みみに思いもよらない提案をする。
「俺と一緒に、アニマルサポートをやらないか?」
実はレオの家では、困っている動物を助ける仕事をしているらしい。
(だからレオは、腕や足に生傷が絶えないんだ……)と、納得するみみ。
結局、レオの押しに負けて、みみはレオと一緒にアニマルサポートをすることになる。



承:
翌日から、レオは学校でもみみに話しかけてくるようになった。
超硬派な孤高のイケメンであるレオに声をかけられると目立ってしまい、クラスの女子からも「どうやって仲良くなったの!?」と聞かれてばかりで、タジタジのみみ。
昼休み、中庭を歩いていると、どこからともなく声が聞こえてきた。
見ると子猫が木の上から下りられなくなっているのを発見。
子猫は今にも木から落ちそう。
みみが、どうにかして子猫を助けようとしていると、颯爽と現れたレオが子猫を無事に保護してくれる。
レオのたくましさと頼りがいのある姿に見惚れるみみ。
その後も、みみはレオと一緒にアニマルサポートとして動物たちを助けていく。
アニマルサポートを通して、レオは本当は怖くなんてない。
猛獣は猛獣でも、《優しい猛獣》だと感じて、みみはレオへの見方が変わっていく。


転:
アニマルサポートの仕事を通して、少しずつ距離を縮めていった、みみとレオ。
ところがある日、十歳年上の近所のお姉さんとして、レオを昔から可愛がってきた、表裏アリコが、ふたりの前に現れる。
アリコはチップチョップという有名な動画アプリで、とても人気のあるインフルエンサー。見た目もとても綺麗な人だった。
そんなアリコとレオが仲良さげにしている様子を間近で見て、内心、落ち込むみみ。
アリコは、「アニマルサポートとして活躍しているレオの姿をSNSで発信させてほしい」「レオの家族がしていることを宣伝してあげる」と、レオに提案。
その日から、ふたりの仲を引っかき回すようになる。
ところがある日、アリコが連れてきた愛犬のナッシーが、みみに『助けて』と話しかけてきた。
ナッシーはアリコの自己顕示欲を満たすため、SNSで着たくもない派手な服を着させられて毎日つらい思いをしていると、みみに語った。
ナッシーの話を聞いたみみは居ても立ってもいられなくなり、アリコにナッシーの想いを伝える。
するとアリコはレオがいない前でみみに激昂し、
「動物と話せる? そんな嘘、今時マジで流行らないよ。そういうの、アンチが湧くからマジやめて」
と、みみを厳しい言葉で批判。
挙げ句の果てには、「レオの気を引きたくて、そんな嘘をついてるんじゃないの?」とまで言われてしまう。
傷ついたみみはレオにも何も言えずに、その場から逃げ出してしまった。
そしてその日以降、レオを避けるようになり、アニマルサポートをやめてしまう。


結:
アニマルサポートをやめてから、学校でもレオを避け続ける日々。
ある日、ナッシーのことが気になっていたみみは、思い切ってアリコのSNSを開いてみた。
すると、そこにはど派手な服を着させられているナッシーの姿が映っていた。
ナッシーは動画の中で『ワンワン!』と吠えている。
アリコや、アリコの動画を見ている人たちはコメントなどで、「かわいい〜」「アリコちゃんと一緒に歌ってるの?」とのんきに話しているが、みみにはナッシーが『助けて!』と叫んでいるのが聞こえていた。
みみは考えに考え抜いた末、勇気を出して行動することを決める。
そして、レオのもとまで走り、アリコとナッシーのことを打ち明ける。
自分よりもレオと付き合いの長いアリコを批判するようなことを言えば、レオには嫌われてしまうかもしれないと思っていたみみ。
けれどレオはみみの言葉を信じて、ナッシー救出のために動いてくれた。
レオがみみと一緒にアリコの家を訪ねると、なんとアリコの家の中は動画撮影に使っている部屋以外、ゴミ屋敷のような状態だった。
アリコの両親とも知り合いだったレオは、すぐに現状を報告。
ナッシーは無事に救出され、みみに『助けてくれてありがとう』と語った。
すべてが終わったあと、みみは思い切って、
「どうして、アリコさんよりも、私を信じてくれたの?」
と、レオに尋ねた。
すると、レオはみみの頭を優しくなでながら、
「そんなの、好きな子の言葉なんだから、信じて当然だろ」
と、恥ずかしそうに笑った。
これからも、レオと一緒にアニマルサポートを続けていこうと心に誓うみみ。
そんなみみは、周りからは《猛獣くんのお世話係》と呼ばれるようになるのだった。


 
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