第6話

文字数 629文字

 部署cの課長からしつこく連絡が来る為、私もしつこくされた分だけ部署aに連絡をし続けたら、部署aが折れて、次の打ち合わせから部署cの課長も同席することになった。
 部署aの課長から「今回は会議設定にミスがあり申し訳ありません」という丁重ながらやや他責な雰囲気もするメールが送られた。部署cの課長からは「了解です。次回より出席いたします」という短文のメールが返された。部署aの「ごめん」「次回よろしく」を長々書いた10行のメールに対し、改行なしの1行でのメール返信だったので、部署cの課長による部署aの課長へのマウンティングにも見えた。案の定部署aの課長は不機嫌になっていたようだった。下らないもののなんだかんだ言って面白い。
 会議は17時からだったが1時間の予定がたっぷり2時間かかった。前回の内容のおさらいからした為一度決まった内容も再議論することになったからだ。部署aの課長と部署cの課長は面と向かっては喧嘩をせず、部署aの課長は、部署cの課長が部署a、bの社員に苦言を呈しても貝のように黙っていた。会議は無気味なワルツのように進行した。
 終わってから会議室の窓からぼんやりと月を眺めていたら部署aの社員が隣に来て「疲れましたね」と言った。
「なんか不毛な時間でしたね」
「そうですね」
「まぁ仕方ないですね」
 私はため息をついた。月は白くて小さかった。欠けた消しゴムのようにくすんでいて、想像上の月よりも不格好だった。暗闇は安い画用紙に見えた。
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