第1話

文字数 303文字

不運にもこの町である交通事故が起きた。少女が横断歩道を渡っていた際に警察から逃走する車が突っ込んだらしい。少女は即死だった。首と脚が額縁のように曲がり、頭から流れ出る血液は砂利と混ざって新たな芸術を生み出した。
 不運にもこの少女が選ばれた。まったくの無名でありこの少女の死が社会に与える影響は少ないだろう。犯罪者はただ一つ罪が増え、警察はただ一つ罪が増え、横断歩道のすぐそばにある電柱に花束が添えられる。
 この少女が社会に与えていたであろう影響を考えると無念である。少女がいたら戦争がなくなる方向に加担してくれていただろう。少女がいたら一人の死を救えただろう。
 少女がいたら世界が平和になっていただろうか。
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