第1話

文字数 1,635文字

ゲームボーイを手に入れたときの喜びは、あまりにも大きすぎた。
自分が5才のころ。
誕生日かクリスマスに親がプレゼントしてくれた。

ミニ四駆、ビーダマン、ハイパーヨーヨー、たまごっち、デジモン、CDコンポ、ケータイ(ガラケー)、MDウォークマン、パソコン、iPod、スマホ、タブレット端末……。
色々な物を手に入れてきたけれど、ゲームボーイを所持したときの喜びには匹敵しない。

(小学5年生のクリスマスに買ってもらったプレイステーションが、いい勝負かもしれない。
父と一緒にお店に行って、演歌しか聴かないと思っていた父が店員に「ドラマの『青い鳥』の主題歌ある?」と言ってたのをいま思い出した)

贈呈にあたって。
母がゲームボーイ本体のうしろに名前を書く。
ひらがなで。
たまに恥ずかしくなって名前の部分を爪でこするけれど、全然消えてくれない…。
(あと、ゲームボーイソフト表面のシールを剝がしたくなる衝動――というのも時々あった)

ゲームボーイを持ったときの喜びの大きさ。
懐かしバイアスも少しかかっているかもしれない。

ゲームボーイと5才の私はあまりにも相性が良すぎた。
①三人兄弟の末っ子であること
②単純明快なゲームソフトが多かったこと
この2つが、大きな要因だと思う。

①三人兄弟の末っ子であること
自分は男三人兄弟の末っ子。
長男とは7才、次男とは5才はなれている。

ウチには初代ファミコンとスーパーファミコンがあった。
でもそれは兄たちがプレイするもので、自分はいつも後ろから見る役だった。
1P・2P……3つ目のコントローラーは無い。

親が自分にゲームボーイを与えてくれたのは、そうした風景を目にして不憫に思ったからかもしれない。
二人の兄も、自分からゲームボーイを取りあげるようなことはしなかった。
自分専用のゲーム機。それがゲームボーイだった。

②単純明快なゲームソフトが多かったこと
ゲームボーイは小型のゲーム機。
スーパーファミコンとかに比べて容量が小さい。画面はモノクロの濃淡でしか表現できない。

そこに5才の私。
5才のガキなんて、単純なゲームしかできない。

(ファミコンと違って)目のないマリオ、テトリスのブロック……
限られた容量で表現された単純明快なゲームが多かったからこそ、あんなにも自分が熱中したのだと思う。

★☆★
ゲームボーイはファミコンと違って、閉塞感が強い※。
※『ポケットモンスター』が大流行するまで
同級生の友達は長男や一人っ子が多く、みんなスーパーファミコンで遊ぶのが主流だった。
ゲームボーイソフトの話は、教室でも校庭でも話題にならない。

ウチの中、近所の地面、出かける車の中。
多くの時間をゲームボーイに興じた。

■スーパーマリオランド(裏面に入るとキョンシーの数がめっちゃ増える)
■テトリス
■ウルトラマン(ジャミラとゼットンの面だけイベント風になる)
■ヨッシーのたまご
■スーパーマリオランド2 6つの金貨※
※この金貨獲得システムが「関口宏の東京フレンドパークⅡ」に採用されたかは不明
■スーパーゲームボーイ(なんてのもあった。スーファミでゲームボーイができる良さって…今では全く意味がわからない)
■ポケットモンスター(青)
■遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ

どのソフトも、めちゃめちゃやりこんだ。
何回も何回も全クリした。
(こうして並べてみると「6つの金貨」までは親が選んで買ってくれたソフト、スーパーゲームボーイ以降は自分が親にねだったソフトだと気がつく)

学校では話題にならないゲームボーイだが、決して持っている人が少ないわけではない。
友達の家にいくと、ゲームボーイを見つけたりする。

自分とは別のソフトを持っている友達のゲームボーイで遊ばせてもらう。
それもまた一つの楽しみだった。

ひらがなで名前の書かれたゲームボーイ。
初めて手にした、自分だけのゲーム機。
両手で握りしめて、小さな画面を見つめた時間を思い出す。

自分のゲームボーイが、今はどこにあるかわからない…。
4本の単三電池が入ったままでないといいが。
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