第1話

文字数 1,389文字

その日、私は一歩を踏み出した。
これは私にとって大きく、そしてとてつもなくゆっくりと己の首を絞めるであろう恐怖を伴う重く陰鬱としながらも希望を持った一歩だった。
なぜならそれは自身の全ての個人情報をインターネットを介し晒し、その上で美容整形をする権利を勝ち取るための1歩だったからだ。

きっとこれを見た何も知らない人々は批判し、的を外した想像と共に私を絞め殺す言葉を吐くのだろう。
私を知る人々は私を奇異の目でこちらを見るだろう。家族との関係にさらに亀裂が入り、元々あるか分からない居場所も消えるだろう。






高校の時や大学の時の大切な友人達はどう思うだろうか。
分からない。けれど。それでも。













それでも私は整形がしたかった。














私は生まれた時から醜かった。
薄々とは気づいていた。
男子だけでなく大人全員からの周りの女の子達へと私への扱いの違いから小学生ながらに分かってはいた。私は何かおかしいのかと。

しかしはっきりと醜いと気づいたのは姉に言われた一言だった。




「お前はブスだ。」






私の頭の中でプツッと何かが弾ける音がした。
全てが繋がった。
嗚呼、だから私は皆で回し飲みする時も一番最後なのか。だからいつもいる3人組でも1人外され2人は男の子や大人の男の人と話すのか。
だから何となく普段から上から物を言うのか。

私が「かわいくないから」。
私が「醜いから」。
私が「穢らわしいから」。




その日は疲れて気を失うまで泣いた。泣いて泣いて泣いて憎んだ。
友人だと思っていたあの子達は私を利用していただけなのだ。
私がブスで馬鹿で利用しやすいから。
私は喜んでなんでもするから。
私は絶対に言いなりになるから。
なんでもしてくれるから。
引き立ててくれるから。








じゃあ私はどうすればいい?
どうすれば人間としての扱いをしてもらえる?
私は普通に生きる事も許されないのか?
家族からも蔑まれ友人からも利用されていたこの私は!!!
どう生きればいい…?




何も分からなかった。
憎むしか出来なかった。この顔を。




私はこのままこんな扱いをされながら生きなければならないのか?





















小学4年生の時に私は生きる事に絶望した。









次の日、学校へ行きたくないと言う私をいつもの様に母は無視して無理矢理学校へ行かせた。
母は何がなんでも学校へ行かせる人だった。
インフルエンザ疑いがあっても風邪熱でも。
だから私は学校へ行かないという選択肢を諦め、息苦しい中、学校へ向かった。
道中、昨日までは友人だったはずのその子が私を心配する素振りを見せながらも好奇心丸出しの様子で聞いてきた。
「目、どうしたの?」
悔しさを噛み殺しながら親と喧嘩したとだけ言った。
しかしそれでも食い下がってしつこくなぜ喧嘩をしたのか。なんでそれで泣いたのか。
「目がパンパンだから目がほとんどないね」だとか笑いながら言ってきているのを見て己の滑稽さに笑いが込み上げてくる程だった。

これが友達なのか。私が前々から卑下する事を言われるのを嫌がってると知っていてこれか。
私はこれを友達だと思っていたのか。
馬鹿馬鹿しい。

そう思いながらも泣いてしまっては、辞めてと言ってしまっては負けだと思い、笑って普段通りに接して誤魔化した。


嗚呼、苦しい。
こんなにここは緑が、空が、海が広がっているはずなのにこんなに色が無かっただろうか?

こんなに息が出来ない所だっただろうか。

酸素日本一宣言の看板を見ながら惨めになって心を誤魔化しながら笑った。


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