第1話
文字数 1,254文字
僕はダイニングテーブルさ。
藤川家のリビングに住んでいる。藤川家は、夫と妻の二人暮らし。そこそこ綺麗なマンションなので居心地は良いね。
ご自慢の美脚を見てくれよ。顔はツルピカの美人だからね。どうか大切に使っておくれ。鍋敷きは忘れずに。
二人暮らしにはちょっと大きな僕だけど、後々家族が増える事を計算しているのだろう。
しかし。
この藤川夫婦、喧嘩が多い。特に僕を使っている時に。
「きのこの山の方が美味しいんですけど!」
妻の優里亜が吠える。
「いや、たけのこの里! サクサク感がたまんねぇ」
夫の祐太郎も吠える。
きのこの山かたけのこの里で、延々と2時間言い争っていた。最終的には「日本のお菓子はすごい」という平和的終着をしていたが。
昨日もまいったね。酢豚に入ってるパイナップルはアリかナシかで言い争っていた。優里亜がパイナップル入りの酢豚を出したら、祐太郎はブチ切れ。これで一日中喧嘩。この件に関しては「パイナップルピザはアリ」という事で終着したが。
「唐揚げにはレモンをかけるべき!」
「いいえ。唐揚げはそのままで美味しいんです!」
今夜は唐揚げ。
しかし、この夫婦は食の趣味が全く合わないようだ。他にもポテトサラダの林檎、ホワイトシチューにご飯の件でも揉めていた。
夫婦喧嘩の内容はいつも食べ物関連ってどうよ?
日本人の食へのこだわりには、さすがに引くね。宗教観はユルユルで適当なのに、食べ物の事では諍いが絶えない国民だ。
ちなみに僕は中国生まれだが、酢豚にはパイナップルはアリかなぁ。まあ、こんな事言ったら、さらなる火種を撒く事になるから言えやしない。
そして一週間後。
祐太郎は出張に行っていたので、この一週間は静かだった。優里亜は思う存分好きなものを食べて楽しんでいたが。
「うう、何かもの足りない……。祐ちゃんと食べ物のことで言い争うの、案外楽しかったのかも?」
優里亜は寂しい表情を見せていた。
確かにそうだろう。一人暮らしだったら、食べて終わりだ。食べ物の事で意見が割れる事もない。そのかわり会話も議論も何もない。
藤川夫婦の喧嘩は、あれだ。犬も食わないってやつだ。もちろんダイニングテーブルである僕も食べたくないもんだがね……。
「ただいま!」
祐太郎が出張から帰ってきた。祐太郎も家に帰れて幸せそうな表情を見せていた。やっぱり犬も食わないやつだったか。
「優里亜にお土産があるよ」
「本当?」
「うん。俺も反省した。食べ物のことで喧嘩しすぎたかなって。っていうか、喧嘩するのも結構楽しかったよ」
「うん、案外楽しかった」
「一人暮らしじゃ、喧嘩にすらならんよな」
こうして祐太郎は、僕の上に箱を置く。
そこには、●●●●が入っていた。名称は伏せておこう。かなりの地雷だったからだ。丸くて餡子が入った甘いものだ。たい焼きじゃないものとでも言っておこうか。
「これは今川焼きよ!」
「いや、違う! 絶対大判焼きだ!」
最近はベイクドもちょもちょって呼ぶらしいよ。
そんな事は決して言えやしない。言えやしないよ。
藤川家のリビングに住んでいる。藤川家は、夫と妻の二人暮らし。そこそこ綺麗なマンションなので居心地は良いね。
ご自慢の美脚を見てくれよ。顔はツルピカの美人だからね。どうか大切に使っておくれ。鍋敷きは忘れずに。
二人暮らしにはちょっと大きな僕だけど、後々家族が増える事を計算しているのだろう。
しかし。
この藤川夫婦、喧嘩が多い。特に僕を使っている時に。
「きのこの山の方が美味しいんですけど!」
妻の優里亜が吠える。
「いや、たけのこの里! サクサク感がたまんねぇ」
夫の祐太郎も吠える。
きのこの山かたけのこの里で、延々と2時間言い争っていた。最終的には「日本のお菓子はすごい」という平和的終着をしていたが。
昨日もまいったね。酢豚に入ってるパイナップルはアリかナシかで言い争っていた。優里亜がパイナップル入りの酢豚を出したら、祐太郎はブチ切れ。これで一日中喧嘩。この件に関しては「パイナップルピザはアリ」という事で終着したが。
「唐揚げにはレモンをかけるべき!」
「いいえ。唐揚げはそのままで美味しいんです!」
今夜は唐揚げ。
しかし、この夫婦は食の趣味が全く合わないようだ。他にもポテトサラダの林檎、ホワイトシチューにご飯の件でも揉めていた。
夫婦喧嘩の内容はいつも食べ物関連ってどうよ?
日本人の食へのこだわりには、さすがに引くね。宗教観はユルユルで適当なのに、食べ物の事では諍いが絶えない国民だ。
ちなみに僕は中国生まれだが、酢豚にはパイナップルはアリかなぁ。まあ、こんな事言ったら、さらなる火種を撒く事になるから言えやしない。
そして一週間後。
祐太郎は出張に行っていたので、この一週間は静かだった。優里亜は思う存分好きなものを食べて楽しんでいたが。
「うう、何かもの足りない……。祐ちゃんと食べ物のことで言い争うの、案外楽しかったのかも?」
優里亜は寂しい表情を見せていた。
確かにそうだろう。一人暮らしだったら、食べて終わりだ。食べ物の事で意見が割れる事もない。そのかわり会話も議論も何もない。
藤川夫婦の喧嘩は、あれだ。犬も食わないってやつだ。もちろんダイニングテーブルである僕も食べたくないもんだがね……。
「ただいま!」
祐太郎が出張から帰ってきた。祐太郎も家に帰れて幸せそうな表情を見せていた。やっぱり犬も食わないやつだったか。
「優里亜にお土産があるよ」
「本当?」
「うん。俺も反省した。食べ物のことで喧嘩しすぎたかなって。っていうか、喧嘩するのも結構楽しかったよ」
「うん、案外楽しかった」
「一人暮らしじゃ、喧嘩にすらならんよな」
こうして祐太郎は、僕の上に箱を置く。
そこには、●●●●が入っていた。名称は伏せておこう。かなりの地雷だったからだ。丸くて餡子が入った甘いものだ。たい焼きじゃないものとでも言っておこうか。
「これは今川焼きよ!」
「いや、違う! 絶対大判焼きだ!」
最近はベイクドもちょもちょって呼ぶらしいよ。
そんな事は決して言えやしない。言えやしないよ。