文字数 418文字


夕方には雨が止む予報
職場を出た瞬間は降ってなかったから
はぐれ雨雲の最後の一雨で
傘を職場に忘れたことに気付く
戻るにはちょっと遠い
かと言って駅までは随分ある
そんな僕が駆け込んだ先に
普段通り過ぎるだけの小さな店
常連しか居ないようなそんな場所
入り込んだからには
せっかくだし一時の出会いを楽しむ
昔の映画で出てくるような
テーブルほどのゲーム機が
一番奥でまだ現役なのだろうか
気難しい顔したおじさんが
氷が溶けきったアイスコーヒー傍らに
真剣に向かい合っている
外はあんなに脇目も振らずに
生き急いでいる世界が広がるのに
ここはいつからか時間がゆったりと
流れを止めようとしているようだ
たかが20分されど20分
朝とかあんなに貴重な時間も
コーヒーを飲み干すまで
小一時間以上のくつろぎを
馴染みのない場所で得てしまった
外に出たらまた忙しい世界で
僕はこの場所を忘れてしまうだろう
でもいつかまたここに戻れたなら
そう思いながら急な流れに身を任せ
雨上がりの街を僕は人混みに紛れる

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