第1話 プロット

文字数 2,333文字

【起】
六年一組の《倉木ゆあ》は親友だと思っていた《しずく》と仲違いしてしまう。しずくが、ゆあの苦手な怖い話をやめない上、最近はこの学校の七不思議というリアルに怖い話までしてくるからだ。
しずく以外の女子からも距離を置かれ、ぼっちになったゆあに、イケメンで学校一の天才だが変わり者のクラスメート、《星島岳斗》が声をかけてくる。
「倉木くん、僕の作ったクラブ、怪談バスターズに入らないか?」
「怪談とか、そういう怖いのは、ちょ、ちょ、ちょっとぉ……」
岳斗は怪談や七不思議を信じない生徒を探していた。「信じてないんじゃなくって、その、怖くて嫌いなの〜」と説明するゆあだったが、岳斗の作ったロボットに無理矢理入部届けを書かされ、「怪談バスターズ」のメンバーにされてしまう。岳斗は自由研究でもすごいロボットを作ってくるマッドサイエンティスト気質でもあった。

【承】
岳斗は、怪談という科学で証明出来ないものが嫌いで、怪談を撲滅しようと思っていた。
岳斗は心霊写真のトリックや、幽霊が勘違いだった例、七不思議はどの学校にもあってオリジナリティがないなどの説明を意外と真面目にしてくれて、ゆあの怖い気持ちを和らげてくれた。少し岳斗を見直すゆあ。
しかし、ゆあ以外のクラスメートはあまり岳斗の話を聞かないようだった。

他のクラスで怪談バスターズのメンバーを探す岳斗とゆあ。
六年二組の《工藤勇大》は柔道が得意で最強レベルだが、幽霊などの実体の無い相手には勝ちようがないという理由で怪談が嫌いだった。幽霊に対しても人間に対してもビビりであると認識されたゆあは、勇大に無理矢理稽古をつけられそうになるが、投げ飛ばされたのは岳斗だった。
六年三組の《仙流院麗子》はホラー小説を書いてネットにアップするのが趣味で投稿サイトでは一位常連、怪談や七不思議より自分の考えた話の方が絶対に怖い! と信じていて、七不思議を目の敵にしている。ゆあは麗子の小説を無理矢理読まされるが、ギャグのような思わず笑ってしまう話で全然怖くなかった。ネットでも麗子はギャグ小説書きと思われているようだった。

【転】
「幽霊じゃなくて人間なら投げ飛ばせるのに!」と嘆く勇大に、「創作よりも本当にあったって言われる噂の方がウケるなんてずるいです!」と悔しがる麗子。
二人の言葉に、ゆあは七不思議を実は人間の仕業だった、創作だったということにしてしまえば、もう怪談じゃなくなるのでは?と考えた。
岳斗は七不思議を自分達の手で再現して誰かを騙した上で、ネタばらしをすることで七不思議を不思議じゃなくする作戦を思いつく。題して、「枯れ尾花ドッキリ」作戦だ。
四人は、七不思議を再現するドッキリを仕掛け、生徒を騙していく。ドッキリのシナリオは麗子が、仕掛け作りは岳斗が担当する。ターゲットの生徒を誘い出す役は、演技をしようと思わなくても怖がるからターゲットにバレない、という理由でゆあになる。
ネタばらしのシーンでは、岳斗を勇大が捕まえる演技をする。
再現内容例は、
・「喋る昔の校長先生の写真」は、写真をタブレット端末に差し替えて喋らせる動画を流す。
・「勝手に鳴るピアノ」は、ピアノの中にロボットを仕込んで鳴らす。
・「走る二宮金次郎」は、プロジェクションマッピングで走っているように見せかける。
など。

【結】
次々と七不思議を「岳斗のいたずらドッキリ」ということにすり替えて、怪談ではなくしていく怪談バスターズ。
しかし、七不思議を信じない生徒が増えた反面、いたずらの犯人として岳斗が嫌われ始めたのを見て、ゆあはこれで良いのだろうかと思い始める。
ゆあは、しずく以外のクラスメートとはまた話すようになったが、しずくとは仲直り出来なかった。しずくは七不思議を強固に信じているので、今度はしずくが孤立しつつあった。
怪談バスターズは七番目の七不思議の枯れ尾花ドッキリ作戦に取り掛かる。その、最後の七不思議は、他の学校では見かけないタイプの七不思議だった。
「歴史資料室にあるランプを擦るとマヒトくんの幽霊が出てきて願いを何でも叶えてくれる」
岳斗や麗子はアラジンと魔法のランプの物語が混ざったのだろうと気にしていないが、ゆあはどこか引っかかった。

ターゲットはしずくが選ばれた。ゆあは、叶えたい願いがあるからランプを擦るのに付き合ってほしいとしずくを誘い出す。
ゆあがランプに触れようとした途端、ランプが動いた。動く予定はなかったはずだ。物陰でマヒトくんのコスプレをして待機している岳斗も不思議そうな顔をしている。
しずくは言う。
「ゆあ、本当はマヒトくんは私の願いをまだ叶えてないから、順番待ちになっちゃうの。言ってなくてごめんね?」
幽霊のマヒトくんは実在した。そして、しずくが願ったことは、マヒトくんに実体を持ってもらうことだった。七不思議を広め、皆がマヒトくんの存在を信じればマヒトくんは実体を持てると聞いていた。それを妨害した怪談バスターズを、しずくは許せなかった。
マヒトくんは自分と似た姿になっている岳斗の体を乗っ取ろうとする。気が弱っていて周りから嫌われている人間ほど乗っ取りやすいようだ。岳斗を見るまではしずくを乗っ取ろうとしていた。
ゆあは勇気を振り絞ってマヒトくんの前に立ちはだかり、真面目な岳斗の良さを褒めて岳斗を励ます。最後は勇大が岳斗を投げ飛ばしてマヒトくんから引き剥がす。

「マヒトくん」はいなくなった。怪談バスターズは本当に怪談を一つ無くしてしまったのだった。
しずくは、マヒトくんがいなくなったこと、マヒトくんが自分を利用しようとしていたことにショックを受けていた。
怪談バスターズは、しずくのために優しいマヒトくんが出てくる怖くない怪談を新しく生み出す決意をする。
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