プロット

文字数 1,510文字



西暦2XXX。身寄りのない子供たちが暮らす養護施設「エトワール」に、一匹の黒い老犬が迷い込む。
その老犬に導かれるようにして裏庭へ向かった小学五年生の月嶌メイジは、突然黒服の男たちに囲まれ、のんびりした性格からほぼ抵抗することなくエトワールから連れ去られてしまう。
黒服の男たちに連れていかれた一軒の洋館に足を踏み入れたメイジは、黒服の男の一人から一か月前に亡くなったという祖母の遺産、記憶バンク通称AAA(ノーネーム)を受け取るように迫られる。
自分に祖母がいたことや、記憶バンクの詳細をまるで知らされぬまま、ボディスキャンとVRゴーグルを装着させられ自身をAAAの仮想都市シャインに転送されてしまうメイジ。
そこに待ち受けていたのは、美少女女子高生の姿でAIとして記憶バンク内の管理をしている祖母、アリスだった。
アリスはメイジの持つ両親の形見のロザリオを剣に変え、その剣で記憶バンクの中を荒らすウイルス「クロウ」を自分と共に倒せと命令する。





何が何だかわからないといった様子のメイジをよそに、記憶データを喰らうというクロウが二人の前に現れる。
仮想空間を荒らす、黒い翼の形をしたクロウ。ボーガンを装備し対峙するアリス。
メイジはてっきり祖母がクロウを攻撃するのかと思っていたが、祖母はクロウを攻撃するのではなく、仮想空間で生活する記憶データの住人の子供をボーガンで射ちクロウの口の中に放り込んだ。
クロウに飲み込まれた記憶データは、クロウの腹の中で破壊され、二度と元には戻らないという。
「なんでそんなひどいことするんだ!」と抗議するメイジにアリスが見せたのは、ボーガンの矢に圧縮転送した、喰われた子供の記憶データだった。
「現実世界の偉い人たちはね、自分たちの記憶データを守るために、クロウを倒せない私にとうとう国民の記憶データを餌にしろと命令したの。できなければ、あなたの命と引き換えにするって」
自分が人質になっていると知ったメイジは、仮想世界の中でアリスとクロウを倒す決意をする。
それともう一つ。ボーガンの矢に圧縮した記憶データをロザリオに転送して仮想空間から持ち出し、現実世界の家族に届けるという任務を請け負うことになる。




仮想空間から持ち出したデータを、喰われた子供の家族に届けるため、現実世界に戻り個人情報の登録されているエリーというAIにアクセスするメイジ。
エリーはアリスのように人の姿を取らず、まるで魔法陣のようにプログラミング言語を空中に表記し存在するAIだった。
エリーは、強制的に矢に転送されたデータは損傷があること、一度しか再生表示できないことをメイジに説明する。
メイジはエリーが割り出した住所を頼りに、ひとり都内のマンションの一室に向かい、記憶データの入った自身のロザリオを喰われた子供の家族に見せた。
その家族は喰われた子供、自分たちの祖父の記憶を見て、自分たちがどれだけ祖父に大事にされていたかを思い出す。
「生前は喧嘩ばかりだった。楽しかったこともあったのに、そういうことは忘れてしまう。愚かだね私たちは」
ところどころノイズの入ったその映像を観ながら、メイジは自分の父と母の記憶を思い出していた。そうしていつか自分も、父と母に愛されていた記憶をなくすのかと思うと、そのことがひどく怖かった。




記憶データを届けたことを、仮想空間でアリスに報告するメイジ。
いつか自分も、僅かしかない両親の記憶をすべて忘れてしまうのではないかという恐怖を、アリスに話す。
「記憶とは本来そういうもの」と冷たい反応のアリス。けれどアリスは、メイジと同じように人質にとられたメイジの両親の記憶をデータを必ず取り戻すとメイジに約束する。
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