第1話

文字数 353文字

 消臭スプレーでも消えない臭いは、どうも俺自身から発せられているらしいと気が付いた。
 金が惜しいので、日差しが厳しくなってきた七月の今でも洗濯は週に一度、シャワーは二日に一度のルールは曲げない。
 都心にあるバックパッカー向けの安宿に居を移してから、かれこれ三ヶ月目に突入していた。風呂、トイレ、キッチン、リビング、ダイニング共同。広いベッドルームにはカーテンで遮蔽された二段ベッドが隙間なく詰め込まれていて、その一つ一つが利用客に与えられたプライベート空間という具合になっている。
 家賃は月三万円弱。都内最下層クラスの劣悪極まるこの宿には、旅人や真っ当な住処を失った者を中心として、多種多様な人間が集まっていた。必然、あちこちから毒ガスと言っても過言でない臭気が発生することになる。
 居心地、最悪。
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