第1話

文字数 692文字

 あーあ、家に帰ってきたくせにまだ勉強するの?あんた、肌荒れ気にしてなかった?シンデレラタイムって言葉を知らないのね。朝起きてすぐ学校、家に帰ってもすぐレポート。ろくな出会いする暇なんてありゃしない。だから男の一人や二人もできないのよ。いい加減お母さん心配させるんじゃないわ、いつまでもいてくれるわけじゃあないのよ。あんた、お母さんからのメール、返信どころか開きもしないじゃない。私は知ってるんだからね。

 あんた、今日のコンディション最悪じゃない。手、熱すぎるわよ。こんなの私でも気づくわ。何?熱あるくせに緊急で先生と連絡がしたい?はぁ、私にあんたを止められた試しが一度でもあった?もう、わかったから、さっさと終わらせて布団に入りなさい。…いつもあんたの傍にいて、あんたのことはわかってるつもりだったのにね。私もここに来てからずいぶんと経つものね。

 だから言わんこっちゃない、昨日の晩に支度しないからこのザマなんでしょうが。私を見捨てるなんていい度胸してるわね。最近、私がいなくても支障ないとか思い始めてるんでしょう。今まであんたの勉強もプライベートも見てきたのはこの私、あんたの手癖を見てきたのもこの私。私がいなくてどれだけ不便か、今日思い知るといいわ。


 いつもの通り大学につき、パソコンケースを開ける。どれだけ探してもマウスがない。普段から私が使っているパソコンにはタッチパッドがついているけれど、これじゃあ使い勝手が悪いんだ。あぁ、だから昨日いや今日か、日付が変わるまでレポートなんかするんじゃあなかった。はぁ、あの子がいないとレポートなんて書けやしないんだから。
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