第１話　死んでも死にきれず

目覚め
「…あ？」

気づいたらどこかの草原の上で寝っ転がっていた。

「…頭いてぇ…くそったれ…」

頭だけじゃねぇ。
体も痛みやがる…

「…んあ？待て…」

重い体を起こして、ふと気付く。
―記憶が抜けている―
名前などの当たり前の記憶は覚えている。
だが、細かな記憶―
強いて言えば、自分が死んでからもう一度ここに来るまでの記憶がごっそり抜け落ちていた。

「名前、は…レザー…俺は…『ハンター(狩人)』…クク、クハハ…」

忌々しい記憶が蘇ってくる。
半竜を殺そうとした記憶？
否アッ!!

もっと前

の！もっと前の記憶だ！
首飾りにしている焼けただれた指輪を握りしめ、叫ぶ。

レザー「リバァァアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ─────！！！！！！」

レザー「思い出した…全てな！リバ!!思えばてめぇが…お前がすべての元凶(始まり)だったなァ！」

湧き上がる殺意。
ぶつけようのない怒りを地面に打ち付ける。
なぜ忘れていた。
何故あいつに協力していた？
アァ!?
半竜殺しについてはただの私怨だ。
それは認めてやる。
…目標ができた。

レザー「俺がこの手であいつの息の根を止めてやる…！」

この殺意は胸の奥底に秘めておく…
あいつを殺すまでは…

レザー「ククク…フハハハハハハハハハ!!!!…ハーッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!!」

狂え。
笑え。
怒れ。
全部の感情をぐっちゃぐちゃにして混ぜ合わせろ。
…今思えば、あいつらの不遇な人生もすべてあいつが狂わせたのかもな。
規則正しい歯車も、なにかが狂っちまったら全部がぶっ壊れていく。

レザー「…まァ？今の俺にャア関係ねェけどなァ!!!ハハハハハ!!!!!」

ｻﾞｯ

レザー「…あァ？」

『…レザー。お前にもう一度だけチャンスをやろう。』

レザー「チャンスだァ？」

『そうだ。お前の命は一週間で天に帰る。復讐をするなら、早めにな』

レザー「お前が俺を復活させやがったのかァ？」

『ああ』

レザー「頼んでもいねェのに復活させるたァ…テメェ悪魔か？あ？」

『…どうだろうな』

レザー「まァ、どうでもいいんだがな。」

『待て。どこに行く』

その言葉を無視して歩き出す。
向かう先はもちろん…人里だ。

本屋の小娘

分かってたことだが。
…わいわいがやがやうるせぇ。

「安いよ!お兄さん、買ってかない？」

無視だ。
なにが「お兄さん」だ。
こっちは50過ぎた爺だぞ節穴め。

「…うわっ」

レザー「…」

ぶつかった。

「ご、ごめんなさい！」

レザー「…あ？」

「ひっ…そ、それじゃ！」

レザー「んだよ…」

逃げるように去りやがって。
まァいい。
気を取り直していこうじゃねェか。
余命一週間だァ？
それがどうした。
復讐相手が見つからないんじゃしょうがねェよ。
しばらく見ねぇ内にいろいろ変わってんだな。
…さて、路地裏に入ってすこし休むか。

「や……い…」

不良1「ははは、いーじゃねーかよ」

…こういうところは腐ってんだよな。
屑が。

不良2「大人しくしろよなー」

レザー「オイ」

不良1「あ？んだてめえ！」

不良2「邪魔すんなよ！」

レザー「女に手ェ出すもんじゃねェぞ」

不良1「うるせえ!」

こぶしを叩き落としてみぞおちに一撃食らわせる。

不良1「いっで…！」

不良2「この野郎！」

裏拳が顔面を捉えた。

不良2「おごぉっ!?」

レザー「失せろ。死なねェ内にな…」

不良1「ク…くそぅ…」

もう一人を引きずりながら逃げていく。

「あの…！」

レザー「気をつけろ。たまたま俺が近くに居てよかったなァ。じゃあな」

「待ってください！」

レザー「…あ？」

「私、本居小鈴(もとおり こすず)です…差し支えなければお名前を…」

レザー「…レザー。」

吐き捨てるように呟いてその場を後にする。
「待って」と聞こえたがそれも無視だ。
一瞬だけでもセナに見えたのはただの気の迷いだ。
気のせいだと自分に言い聞かせるんだ。
セナはここにいる。
この指輪がセナの形見だ。

俺は…ただの復讐者だ…。

あとがき

閲覧ありがとうございました。
今回の内容は、かつての敵、レザーがなんらかの方法で生き返った、というものになります。
復讐は果たせるのか、
レザーを復活させたあの人物の正体とは？
小鈴やファイナル達とどう絡むのか。
今後の展開にご期待ください。
それでは、これにて、ショートストーリー『死んでも死にきれず』の終わりとさせていただきます。
ごきげんよう。