振り向かず走れ

文字数 954文字

失恋したなら走るのが一番だよ、走っていれば嫌なことを忘れられるよ。
特に、失恋を吹っ切る勢いと元気がある歌がおすすめだよ、私のおススメ聴きながら走ってみてよ。

そう友人がそそのかすので、まあ欝々としているのもしんどいしなんか癪だし、ならひとつ試してみようかと思った。

「振り向かず走れ」か。
カボスカというバンド名は初めて聞いたけど、最近は「伊予ASOBI」「ずっと晩柑でいいのに」などと一緒に「柑橘類」なんて括りで、ずいぶん人気が出ているらしい。

準備運動をしてから、イヤホンを付ける。そして、プレーヤーのスイッチを入れる。
軽快なスカのリズムが流れてくる。確かに、走るのにぴったりそうだ。


『うじうじ悩んでいたって 過去はもう取り戻せないよ』

うん、確かにそうだ、その通りだ。
私は、深くうなずいた。


『前を向こう あなたの幸せは きっとその方向にある』

おお、いいこと言うじゃないか。
私は、顔を上げて、前を向いた。


『さあ、進め ただひたすら あれこれ考えている場合じゃない』

うんうん、今は何も余計なことは考えず、ただ走ろう。
私は、走るペースを上げた。


『後悔も迷いも今はいらない 必要なのは笑顔でいること』

私は、走りながらにこっと笑ってみた。


『スピード上げていこう 限界なんて考えないで さあ』

私は、走るスピードを上げた。めっちゃ上げた。


音楽もまたいよいよ盛り上がり、もっとも盛り上がるサビ部分に差し掛かったようだった。


『振り向かず走れ 全力で 誰よりも早く』

私は、これ以上ないほど全速力になって、同じくジョギングしていた何人かを抜き去った。笑顔のままで。


『嫌なことなんていらない そんなものはSkip!Skip!Skip!』

私は、全力疾走から全力スキップに切り替えた。


『振り向かず走れ 全力で チーターよりも早く』

私は、人間の限界を超えた。


『悪い夢なんて忘れて そんなものはSmash!Smash!Smash!』

私は、追い抜く人追い抜く人、すべてを打ち倒しながら、走り続けた。


『振り向かず走れ 全力で ロケットよりも早く』

私は、ついに音速を超え、空にはばたいた。


『・・・そんな気持ちでいれば きっともう大丈夫さ』

私は、イメージトレーニングを終えた。
うん、これならきっと気持ちよく走れそうだ。じゃあ、ひとつ、行って来ようかな!
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