第3話 レーヴェの歓談

文字数 1,015文字

 「…なるほど、俺たちの仲間か。マルコたち姉弟くらいしか会ったことなかったから当時偶然日本とイタリアでそういう奇跡的な現象が起きたのかと思った」
「”ロン”と呼ばれていたがあなたは日本人なのか?」
「ああ、ロンはニックネームで俺の本名は獅子堂倫音って言うんだ」
「ふむ、私と似たようなものか…」
「ん?」
「いや、なんでも。それよりお二人は何がきっかけでこちらに…?私は久々の日本で謎の竜巻に襲われて来たんだ。恐らく異常気象だろうな」
「おれと姉さんは洪水に巻き込まれて…ロンのは知らないなぁ。おれたちと一緒?」
「いや洪水ではなかったと思うよ。うーん、もう10年くらい前のことになるからなぁ…。確か転落だったかな?」
「忘れるものなのか?」
「こっちに来てから色々あったから…」
「…そういうものか。だがいずれにしても死ぬ可能性がとても高いような事故に巻き込まれているのだな」
「確かに!絶対死んだかと思ったもん」
「だとすればここは死者の国なのだろうか?」
「いや、それは違うんじゃないかな。何年か生活してみればわかるけどこっちでも普通に人は死ぬし、何よりも表から来た人と裏のもとからの住人の区別はどうつければいいのかって話になるだろうからね」
「それもそうか…。そうだ、他にこの世界について詳しそうな人を知らないか?」
「他に?そうは言っても俺たちはただの一市民だしそこまで顔が広いわけじゃ…」
「おれもそこまでは…あ、千なら色々知ってるかも」
「白城さんのこと?確かにあの人ならヴァッフェル以外のことにも詳しいと思うけど流石に会えるとは思えないよ」
「…その人は?」
「5年くらい前にここに来た旅人だよ。不思議な感じの人だったけど他の国にも詳しかったしコウの助けになるかも…と思ったけど今どこにいるかもわからないしなぁ…」
「旅人、か…」
なるほど確かにこの世界にだって様々な国家が存在するはずだ。ヴァッフェル王国はヨーロッパ風の街並みや発展したテクノロジーが特徴的な場所であるため私にとってとても居心地が良さそうだが、もしかしたらどこかにこの世界のルールを熟知した者がいるかもしれない。
「…マルコ、どうしたの?外に何か…」
「…天文学的確率の奇跡って案外簡単に起こるものだね」
「は、何を―」
「待ってて、コウ。とっておきのゲストを連れてきてあげる!」

 「…とっておきのゲストって…」
「…わからないけどそれにしたっていきなり店を飛び出すなんて子どもじゃないんだから…」
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登場人物紹介

コウ=ノークス

異世界から来たアマチュア小説家の少年。イギリスからの帰国子女で紳士的振る舞いを心掛けているが好奇心が旺盛すぎて周りが見えなくなることも。本名は野口航(ワタル)。

白城千

『千年放浪記』シリーズの主人公。強大な力を持つ反面不運を寄せ付けがちな不老不死の旅人。人間嫌いの皮肉屋だがなんだかんだで旅先で会った人々に手を貸している。

剣崎雄

世界の全てを記録するという野望を持つ少年。ひょんなことから半不老不死の身体を得、各地の情報をまとめた『剣崎雄の世界論』を書き進めている。何故かヴァッフェル王国の王妃を殺害し逃亡中。

Hornisse=Zacharias

食と芸術の観光地、ヴァッフェル王国の元王子。現在は身分を捨て不老不死になれる秘薬(※不死の効果は未実証)を服用しただひたすらに復讐相手である剣崎を探している。

Natalie=Schlange

かつてホルニッセを監禁した魔女。わがままでホルニッセを盲目的に愛しているが魔法や薬作りの技術は高い。王宮の牢獄に入れられていたが何故かホルニッセに助けられた。

Marco=Tiglio

明るく常識人なイタリア人。ホルニッセの近衛兵をしていたが、今はヴァッフェル王国の兵士。

獅子堂倫音

異世界から来た日本人。人見知りで流されやすい性格だが今は喫茶レーヴェの副店長として働いている。

Alfons=Zacharias

ホルニッセの弟。王室を出たホルニッセに代わり次代の王になるため熱心に勉強している。少年期のプライドの高さもだいぶ緩和され国民を思える王族に成長中。

Amalia=Tiglio

マルコの姉でアルフォンスの側近。有能で、面倒見もよくアルフォンス次期王の世話役としても期待されている。

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