第3話
文字数 3,772文字
プリーストタウンにある地下の一室にフィアの遺体が安置されている。
その周囲をシフォン含め重臣達が囲っている。
「お姉様……私、頑張りましたの……」
フィアに対して蘇生をする為に必要な術を施したシフォンは魔力を使い果たしたのかその場でヘナヘナと座り込んだ。
「シフォン様!」
重臣達が心配そうにシフォンを見据える。
「私は大丈夫ですの……それよりも御姉様を……」
「はっ!? フィア様っ」
シフォンに指摘されて、漸く今しがた蘇生されようとするフィアの心配を始める重臣達。
気のせいか、彼等にとってはフィアよりもシフォンの方が重要である様に思えてしまう。
「つっ……しふぉん……?」
程なくして、シフォンの蘇生術が成功したのか、フィアがゆっくりと起き出した。
記憶が混濁しているのだろうか? 周囲の様子をちらちらと伺い現状を把握している様だ。
「御姉様……私、頑張りましたの、お姉様がお亡くなりになられた後必死に勉強しましたの、二度と会えなくなるって思うのが物凄く怖かったですの」
蘇生術を成功させ、奇跡的に姉との再会を果たしたシフォンは瞳に涙を浮かべながらフィアを見据えている。
「そう……有難う、でもなんか不思議な感じね、私が死んでいる間物凄く長い時間別の世界で何かをやっていた気がする」
「ははは、きっと夢に近い何かを見ていたのでございましょう」
そう言う重臣からはどこかよそよそしさを感じるが、それが何を意味するのかは分からない。
「お姉様……その、シフォンから離れてはダメなのです」
シフォンは目を伏せながら細々とフィアに告げる。
「そう……ね」
シフォンの言葉を受けフィアは記憶を辿る、この娘は神聖魔法の適性が0に近い。
自分はてっきり城に使える神官の誰かが蘇生魔法を完成させると思っていたのだが、目を覚まして目の前に居るのは蘇生術を施す人間として想定していないシフォンだ。
周りの重臣達の反応から考えられる事は、私はネクロマンス法によりこの世界に戻る事が出来たと言う事だろう。
あの娘が邪術に対する才能に関しては全く分からない、故にその才能を保持していた可能性は十分ある。
ただ、幾ら記憶を掘り返しても邪術の練習をしている所を見た事も無いけど。
そう言えば、怪しい術師がシフォンとコンタクトを取ろうとしていた様なしてなかった様な気がする。
いや、今はそんな事を気にしてはならない、何はともあれ折角蘇ったのだから今この国がどうなってるのかを知る必要がある。
「それで、今この国の戦況はどうなってる?」
それにしても頭がクラクラする、でもそんな事は言っていられない。
私は近くに居る重臣に尋ねた。
「ハッ! フィア様! 現在我がプリーストタウンは異世界からの勇者フィルリーク殿、マジックタウンの天才魔術師ちなみ様の手により非常に劣勢ながらも持ちこたえています!」
それにしても重臣が妙に元気になったのはどういう事だ? という疑問もあるが、フィルリーク、ちなみと言う名前の人間を私は聞いた事が無い。
大体ゆうしゃって何よ? この世界にそんなモノ無いわよ?それに、私が知ってるマジックタウンの連中は使い物にならない輩しかいなかった。 けど重臣がわざわざ個人の名前を出したと言う事はしっかりと活躍をしたわけ?
確かマジックタウンの兵士は隊長クラスですらブレイブタウンの連中が身に付けていた対魔法装備すら貫通出来なかったと思ったけど? つまり、それ等を凌駕出来る魔力を持つ人間が実は居たの?
ちょっと待って、異世界って言ったわよね? この重臣、何者かによって催眠術にでも掛けられた?
考えられるとしたら邪教徒の誰かだけど、ダメね、何かの魔法を受けて洗脳されてる気配を探知出来ない、嘘は言ってない事を前提で話を聞くしかないわね。
それにしても、何だか今自分が居る世界が別の世界と感じれなくも無いんだけど……。
「フィア様? フィルリーク殿を良い様にお使いになさって、ちなみ様とも良い連携を取っていましたのにお忘れでしょうか?」
どういう事? それはつまり、私がこのよく分からない輩と接していたと言う事? 私にそんな記憶は無いんだけど。
「うむぅ、蘇生魔術が成功し記憶が混濁しているようですな、致し方ありませぬ」
「私が死んだ時の報告を頂戴」
私の記憶が正しければ勇者なんて前衛を張ってくれる人間なんていない、だから私が前衛を張った。
ちなみなんて優秀なウィザードなんて知らない、隊長と言っても敵ブレイブタウン兵の前に惨殺された。
マシニングタウンの切り札真神を前に成すすべなく、私が後に蘇生される事を前提とした私の自爆によって破壊に成功した。
私の記憶と重臣の言ってる事が食い違ってるのは一体どういう事?
「かしこまりました。先のブレイブタウンによるプリーストタウンへの襲撃の際、フィア様は我が国を守る為自爆をなさりました。 死因はそれになります」
「そう、なら襲撃開始からの状況は?」
つまり、私が死んだ原因自体は変わらないと。
「勇者フィルリーク殿が前線を突っ切り、敵ブレイブタウン兵を殲滅、その後ろからフィア様とちなみ様が精霊魔法、魔法による遠隔攻撃をなさり敵ブレイブタウン兵を壊滅致しております」
重臣の話を聞く限りブレイブタウンの兵士は楽に壊滅させた様に聞こえる。
プリーストタウンとマジックタウンの人間をあれだけ虐殺出来たのに?
「そう」
「しかし、マシニングタウンの切り札、真神を前にフィルリーク殿もちなみ様も命を落してしまいます。しかし、マシニングタウンのアンドロイド姉弟、レイリア、フランツの手によりフィア様が彼等を蘇生する時間を与えられました。 フィア様は彼等を蘇生した後炎の精霊と風の精霊の助力により自爆を致しました。」
確かにあの真神相手なら勇者とやらも、天才魔導師も仮に存在したとしても敵わないのは分かる。
そうじゃない、マシニングタウンの姉弟? 誰? そいつ等? また私の記憶に存在しない人間が現われたんだけど?
「ちなみとやらの魔法攻撃が真神に通用したかどうかは分かる?」
「はい、一切通用しなかったとの事です」
私が使った精霊魔法も通用してなかった以上思った通りの返事だけど、聞けば聞く程私の記憶と重臣の言ってる事がずれている事がよくわからないけど、これ以上追及しても何も分かりそうにない、一先ずは蘇生の弊害と言う事にしておくしかなさそうね。
「今は劣勢って言ったわね」
「はっ、そうで御座います」
真神の破壊に成功、ブレイブタウンの兵を殲滅させたにも拘らず劣勢と言うのは少々疑問に思える。
「それはどうして?」
「はっ、ここ最近、マシニングタウンよりアンドロイド兵が我が国に進行しております、彼等は機械であり生身の人間と違い修理修復でまた再生して参ります、完全な破壊方法が分からず徐々にその数を増やしている模様で御座います」
「アンドロイド兵……?」
聞いた事が無い、少なくとも私が死ぬ寸前までの世界には。
「真神とは別に開発されていた機械兵の様で御座います。 ある天才科学者の手により開発されたとの事で御座います」
ある天才科学者? そんな話も聞いた事が無い、もしそんな事があるならば王女である私の耳に入らない訳が無い。
「マシニングタウンの姉妹と言うのもアンドロイドだったよな?」
「その様で御座います、わたくしが知る限り正義の心を持つアンドロイドとの事で御座いまして、フィルリーク様に感化され我々の味方をしてくれる様で御座いますが、本国を裏切っている手前修理等は受けられないとの事で御座います」
「正義の心……?」
一体何だそれは? 私には理解しかねるが、一応人間と言うモノに正義と言う感情があるのは分かる。
もし、それが本当ならばその正義の心とやらは私達のプリーストタウンを正義と判断し、ブレイブタウン、マシニングタウンを悪と判断していると言う事なのか?
確かにプリーストタウンは大陸の平和を保持する為中立国家だからそれを正義と判断した可能性は考えられるけど。
「左様であります」
「良く分からないわね」
ちょっとやそっとの損傷では倒し切れないと言うのも厄介な話ね。
ブレイブタウンの兵士だったら殲滅し続ければいずれ兵士のなり手が居なくなる事もあるのだけど、話を聞く限りその数を減らす事が出来ない、減らす事が出来ないから数は増えてい行く。
人間であれば1人の兵士を育成する為に短く見積もっても16年位は時間が掛かってしまうが、恐らくはそれよりも遥かに早く増やしていけそうな気がする。
私が直接戦ってみない限り何とも言えないけど、よくわからない魔術師ですら苦戦するならば私の精霊魔法でどうにか出来る可能性は低いと考えた方が良さそうだ。
……真神だってまた現れる可能性だってある。
どちらにせよ、まずはそのアンドロイド部隊をどうにかしなければならなそうね。
「ハッ、申し訳ございません」
「気にしないで」
その周囲をシフォン含め重臣達が囲っている。
「お姉様……私、頑張りましたの……」
フィアに対して蘇生をする為に必要な術を施したシフォンは魔力を使い果たしたのかその場でヘナヘナと座り込んだ。
「シフォン様!」
重臣達が心配そうにシフォンを見据える。
「私は大丈夫ですの……それよりも御姉様を……」
「はっ!? フィア様っ」
シフォンに指摘されて、漸く今しがた蘇生されようとするフィアの心配を始める重臣達。
気のせいか、彼等にとってはフィアよりもシフォンの方が重要である様に思えてしまう。
「つっ……しふぉん……?」
程なくして、シフォンの蘇生術が成功したのか、フィアがゆっくりと起き出した。
記憶が混濁しているのだろうか? 周囲の様子をちらちらと伺い現状を把握している様だ。
「御姉様……私、頑張りましたの、お姉様がお亡くなりになられた後必死に勉強しましたの、二度と会えなくなるって思うのが物凄く怖かったですの」
蘇生術を成功させ、奇跡的に姉との再会を果たしたシフォンは瞳に涙を浮かべながらフィアを見据えている。
「そう……有難う、でもなんか不思議な感じね、私が死んでいる間物凄く長い時間別の世界で何かをやっていた気がする」
「ははは、きっと夢に近い何かを見ていたのでございましょう」
そう言う重臣からはどこかよそよそしさを感じるが、それが何を意味するのかは分からない。
「お姉様……その、シフォンから離れてはダメなのです」
シフォンは目を伏せながら細々とフィアに告げる。
「そう……ね」
シフォンの言葉を受けフィアは記憶を辿る、この娘は神聖魔法の適性が0に近い。
自分はてっきり城に使える神官の誰かが蘇生魔法を完成させると思っていたのだが、目を覚まして目の前に居るのは蘇生術を施す人間として想定していないシフォンだ。
周りの重臣達の反応から考えられる事は、私はネクロマンス法によりこの世界に戻る事が出来たと言う事だろう。
あの娘が邪術に対する才能に関しては全く分からない、故にその才能を保持していた可能性は十分ある。
ただ、幾ら記憶を掘り返しても邪術の練習をしている所を見た事も無いけど。
そう言えば、怪しい術師がシフォンとコンタクトを取ろうとしていた様なしてなかった様な気がする。
いや、今はそんな事を気にしてはならない、何はともあれ折角蘇ったのだから今この国がどうなってるのかを知る必要がある。
「それで、今この国の戦況はどうなってる?」
それにしても頭がクラクラする、でもそんな事は言っていられない。
私は近くに居る重臣に尋ねた。
「ハッ! フィア様! 現在我がプリーストタウンは異世界からの勇者フィルリーク殿、マジックタウンの天才魔術師ちなみ様の手により非常に劣勢ながらも持ちこたえています!」
それにしても重臣が妙に元気になったのはどういう事だ? という疑問もあるが、フィルリーク、ちなみと言う名前の人間を私は聞いた事が無い。
大体ゆうしゃって何よ? この世界にそんなモノ無いわよ?それに、私が知ってるマジックタウンの連中は使い物にならない輩しかいなかった。 けど重臣がわざわざ個人の名前を出したと言う事はしっかりと活躍をしたわけ?
確かマジックタウンの兵士は隊長クラスですらブレイブタウンの連中が身に付けていた対魔法装備すら貫通出来なかったと思ったけど? つまり、それ等を凌駕出来る魔力を持つ人間が実は居たの?
ちょっと待って、異世界って言ったわよね? この重臣、何者かによって催眠術にでも掛けられた?
考えられるとしたら邪教徒の誰かだけど、ダメね、何かの魔法を受けて洗脳されてる気配を探知出来ない、嘘は言ってない事を前提で話を聞くしかないわね。
それにしても、何だか今自分が居る世界が別の世界と感じれなくも無いんだけど……。
「フィア様? フィルリーク殿を良い様にお使いになさって、ちなみ様とも良い連携を取っていましたのにお忘れでしょうか?」
どういう事? それはつまり、私がこのよく分からない輩と接していたと言う事? 私にそんな記憶は無いんだけど。
「うむぅ、蘇生魔術が成功し記憶が混濁しているようですな、致し方ありませぬ」
「私が死んだ時の報告を頂戴」
私の記憶が正しければ勇者なんて前衛を張ってくれる人間なんていない、だから私が前衛を張った。
ちなみなんて優秀なウィザードなんて知らない、隊長と言っても敵ブレイブタウン兵の前に惨殺された。
マシニングタウンの切り札真神を前に成すすべなく、私が後に蘇生される事を前提とした私の自爆によって破壊に成功した。
私の記憶と重臣の言ってる事が食い違ってるのは一体どういう事?
「かしこまりました。先のブレイブタウンによるプリーストタウンへの襲撃の際、フィア様は我が国を守る為自爆をなさりました。 死因はそれになります」
「そう、なら襲撃開始からの状況は?」
つまり、私が死んだ原因自体は変わらないと。
「勇者フィルリーク殿が前線を突っ切り、敵ブレイブタウン兵を殲滅、その後ろからフィア様とちなみ様が精霊魔法、魔法による遠隔攻撃をなさり敵ブレイブタウン兵を壊滅致しております」
重臣の話を聞く限りブレイブタウンの兵士は楽に壊滅させた様に聞こえる。
プリーストタウンとマジックタウンの人間をあれだけ虐殺出来たのに?
「そう」
「しかし、マシニングタウンの切り札、真神を前にフィルリーク殿もちなみ様も命を落してしまいます。しかし、マシニングタウンのアンドロイド姉弟、レイリア、フランツの手によりフィア様が彼等を蘇生する時間を与えられました。 フィア様は彼等を蘇生した後炎の精霊と風の精霊の助力により自爆を致しました。」
確かにあの真神相手なら勇者とやらも、天才魔導師も仮に存在したとしても敵わないのは分かる。
そうじゃない、マシニングタウンの姉弟? 誰? そいつ等? また私の記憶に存在しない人間が現われたんだけど?
「ちなみとやらの魔法攻撃が真神に通用したかどうかは分かる?」
「はい、一切通用しなかったとの事です」
私が使った精霊魔法も通用してなかった以上思った通りの返事だけど、聞けば聞く程私の記憶と重臣の言ってる事がずれている事がよくわからないけど、これ以上追及しても何も分かりそうにない、一先ずは蘇生の弊害と言う事にしておくしかなさそうね。
「今は劣勢って言ったわね」
「はっ、そうで御座います」
真神の破壊に成功、ブレイブタウンの兵を殲滅させたにも拘らず劣勢と言うのは少々疑問に思える。
「それはどうして?」
「はっ、ここ最近、マシニングタウンよりアンドロイド兵が我が国に進行しております、彼等は機械であり生身の人間と違い修理修復でまた再生して参ります、完全な破壊方法が分からず徐々にその数を増やしている模様で御座います」
「アンドロイド兵……?」
聞いた事が無い、少なくとも私が死ぬ寸前までの世界には。
「真神とは別に開発されていた機械兵の様で御座います。 ある天才科学者の手により開発されたとの事で御座います」
ある天才科学者? そんな話も聞いた事が無い、もしそんな事があるならば王女である私の耳に入らない訳が無い。
「マシニングタウンの姉妹と言うのもアンドロイドだったよな?」
「その様で御座います、わたくしが知る限り正義の心を持つアンドロイドとの事で御座いまして、フィルリーク様に感化され我々の味方をしてくれる様で御座いますが、本国を裏切っている手前修理等は受けられないとの事で御座います」
「正義の心……?」
一体何だそれは? 私には理解しかねるが、一応人間と言うモノに正義と言う感情があるのは分かる。
もし、それが本当ならばその正義の心とやらは私達のプリーストタウンを正義と判断し、ブレイブタウン、マシニングタウンを悪と判断していると言う事なのか?
確かにプリーストタウンは大陸の平和を保持する為中立国家だからそれを正義と判断した可能性は考えられるけど。
「左様であります」
「良く分からないわね」
ちょっとやそっとの損傷では倒し切れないと言うのも厄介な話ね。
ブレイブタウンの兵士だったら殲滅し続ければいずれ兵士のなり手が居なくなる事もあるのだけど、話を聞く限りその数を減らす事が出来ない、減らす事が出来ないから数は増えてい行く。
人間であれば1人の兵士を育成する為に短く見積もっても16年位は時間が掛かってしまうが、恐らくはそれよりも遥かに早く増やしていけそうな気がする。
私が直接戦ってみない限り何とも言えないけど、よくわからない魔術師ですら苦戦するならば私の精霊魔法でどうにか出来る可能性は低いと考えた方が良さそうだ。
……真神だってまた現れる可能性だってある。
どちらにせよ、まずはそのアンドロイド部隊をどうにかしなければならなそうね。
「ハッ、申し訳ございません」
「気にしないで」