第1話
文字数 2,134文字
まったり過ごしているとチャイムが鳴ったらしい。
優しく頭を撫でてからゆっくり口を動かして教えてくれた。
私も不安で背後にくっついていくと現れたのは彼の幼馴染さん。
子どもの頃から仲がいいみたいで見せてもらったアルバムにもよく一緒に写っていた。
「あ、ちょっと待ってて!果物あるから出すわ」
なおちゃんが行ってしまい幼馴染さんと二人きり。
会ったことはあるけど緊張する。
軽く肩を叩かれて顔を上げるとスマホの画面。
“聞こえないし喋れないんだっけ?”
領くとさっきまでとは違う冷ややかな表情。
あまりの変わりように恐怖を覚える。
”そんなんで満足させられてんの?”
ドクンドクンと心臓が煩い。
自信なんてなくてどう反応したらいいのかわからない。
“あんたみたいな不良品なおにはもったいないよ”
そんなのずっとわかってた。
何度も別れを考えてその度に彼の優しさに甘えた。
"そろそろなおこと解放してよ”
まるで私が博りつけてるみたいな…
そっか、その通りなんだ。
私が邪魔してるのになおちゃんは優しいから。
「お待たせー」
気が沈んだ私とは対象になおちゃんが来た瞬間幼馴染さんはいつもの明るい笑顔を浮かべていた。
彼もすごく楽しそうなのに私はそこに加わることができない。
でも流行りのシャインマスカットを一粒口に入れると甘さが広がった。
「でさ~」
「ヤバいじゃん!」
「だろ~?」
「てかなおさ~」
早口や長い言葉は口の形だけじゃ読み取りきれない。
私だけが別の世界に取り残されたような孤独感。
想像が嫌な方に向かい二人が私の悪口で盛り上がっているみたい。
耐えられず立ち上がるとそのまま家を飛び出した。
一人になった途端溢れる涙。
とりあえず近くの公園のベンチに座ると知らない人たちが近づいてきた。
「泣いてんの?可哀想〜」
「お兄さんたちが慰めてあげるよ」
全部は読み取れなかったけどそんなところだと思う。
首を横に振っても通用しなくて痛いほど強く手首を掴まれた。
「声聞かせてよ〜」
「じゃあ可愛く啼かせちゃおっかぁ」
怖くて身体は震えるのに助けは呼べない。
こんな人たちに乱暴されるならその前にちゃんと伝えたかった。
なおちゃん大好きだよ、ありがとう。
「ご迷惑おかけしてすみません」
「誰だてめぇ」
どうにでもなれと諦めたとき肩に手が触れた。
全然嫌な感じのしないむしろ安心するその感触に顔を上げると大好きな人。
「離していただけますか?」
「何何、おにーさんも遊びたいの?」
「混ぜたげよっかぁ?」
「生憎遊びじゃなくて本気なんです」
「はぁ〜?」
「大事な人なので失礼します」
肩に手を添えられたまま二人でこの場から去る。
男たちはまだ何か言おうとしていたけど運良くパトロール中の警察官がいて追いかけてはこなかった。
「ごめん」
家に着くと早々に頭を下げられる。
なおちゃんは何も悪くなくて謝るのは私の方なのに。
玄関に置いてあるホワイトボードにそう書くと違うと首を振られた。
"あいつと話してる間お前のことほったらかした”
”そんなの全然悪いことじゃないよ?"
“お前のこと泣かせた上に危険な目に遭わせた”
大きな掌が頬に添えられて親指で目の下の涙跡を拭われる。
温かくて優しくて心地よい。
「いなくならないで」
「っ...」
「頼むから、どこにもいかないで」
彼は泣きそうで何故か少し怯えているようにも見えた。
こんな弱々しい姿を見るのは初めてだ。
「お願い…っ」
声は聞こえないけど胸が締め付けられるほどの真剣さは伝わる。
声にできない代わりにぎゅっと抱きつく。
この体勢だと顔は見えないのに“ありがとう”と言われた気がした。
しばらく抱き締め合ったあと手を繋いだままリビングへ。
「お前宛だって」
差出人は幼馴染さんで何が書いてあるのか怖くて息を呑んだ。
恐る恐るテーブルの上に置いてあった四つ折りの紙切れに目を通す。
“あたしはなおの素敵な声も聞こえるし自分の言葉で何でも伝えられる。
昔から一緒にいるから何でも知ってるし、あたしの方がなおの恋人にふさわしいと思わない?”
もっとも過ぎて悲しくなる。
迷惑をかけた直後の今だから余計だ。
“でもね残念ながらその素敵な声で話すのはいつもあんたのことで臆病なあたしは好きだなんて伝えられない。
昔から一緒にいるけどあんたと一緒にいるときみたいな優しい表情は知らなかった。
あんたが出てったとき馬鹿みたいに慌ててたよ。
仕方ないから譲ってあげるけどなんかあったらすぐ奪ってあげるから。
PS.あんたの残りの葡萄は全部食べちゃったから!残念でした~”
あっかんべーをしている顔文字つきの文章から港み出る不器用な優しさに涙が落ちた。
そんな私を見ておろおろするなおちゃん。
「どした?何書かれた?」
なんでもないと首を振るけど心配する表情は変わらない。
いつもカッコいい彼が焦る姿に思わず笑みが溢れる。
幼馴染さんありがとう。
なおちゃんを満足させられるかはわからないけれど不良品なりに頑張るから。
ふたりで幸せになるからね。
優しく頭を撫でてからゆっくり口を動かして教えてくれた。
私も不安で背後にくっついていくと現れたのは彼の幼馴染さん。
子どもの頃から仲がいいみたいで見せてもらったアルバムにもよく一緒に写っていた。
「あ、ちょっと待ってて!果物あるから出すわ」
なおちゃんが行ってしまい幼馴染さんと二人きり。
会ったことはあるけど緊張する。
軽く肩を叩かれて顔を上げるとスマホの画面。
“聞こえないし喋れないんだっけ?”
領くとさっきまでとは違う冷ややかな表情。
あまりの変わりように恐怖を覚える。
”そんなんで満足させられてんの?”
ドクンドクンと心臓が煩い。
自信なんてなくてどう反応したらいいのかわからない。
“あんたみたいな不良品なおにはもったいないよ”
そんなのずっとわかってた。
何度も別れを考えてその度に彼の優しさに甘えた。
"そろそろなおこと解放してよ”
まるで私が博りつけてるみたいな…
そっか、その通りなんだ。
私が邪魔してるのになおちゃんは優しいから。
「お待たせー」
気が沈んだ私とは対象になおちゃんが来た瞬間幼馴染さんはいつもの明るい笑顔を浮かべていた。
彼もすごく楽しそうなのに私はそこに加わることができない。
でも流行りのシャインマスカットを一粒口に入れると甘さが広がった。
「でさ~」
「ヤバいじゃん!」
「だろ~?」
「てかなおさ~」
早口や長い言葉は口の形だけじゃ読み取りきれない。
私だけが別の世界に取り残されたような孤独感。
想像が嫌な方に向かい二人が私の悪口で盛り上がっているみたい。
耐えられず立ち上がるとそのまま家を飛び出した。
一人になった途端溢れる涙。
とりあえず近くの公園のベンチに座ると知らない人たちが近づいてきた。
「泣いてんの?可哀想〜」
「お兄さんたちが慰めてあげるよ」
全部は読み取れなかったけどそんなところだと思う。
首を横に振っても通用しなくて痛いほど強く手首を掴まれた。
「声聞かせてよ〜」
「じゃあ可愛く啼かせちゃおっかぁ」
怖くて身体は震えるのに助けは呼べない。
こんな人たちに乱暴されるならその前にちゃんと伝えたかった。
なおちゃん大好きだよ、ありがとう。
「ご迷惑おかけしてすみません」
「誰だてめぇ」
どうにでもなれと諦めたとき肩に手が触れた。
全然嫌な感じのしないむしろ安心するその感触に顔を上げると大好きな人。
「離していただけますか?」
「何何、おにーさんも遊びたいの?」
「混ぜたげよっかぁ?」
「生憎遊びじゃなくて本気なんです」
「はぁ〜?」
「大事な人なので失礼します」
肩に手を添えられたまま二人でこの場から去る。
男たちはまだ何か言おうとしていたけど運良くパトロール中の警察官がいて追いかけてはこなかった。
「ごめん」
家に着くと早々に頭を下げられる。
なおちゃんは何も悪くなくて謝るのは私の方なのに。
玄関に置いてあるホワイトボードにそう書くと違うと首を振られた。
"あいつと話してる間お前のことほったらかした”
”そんなの全然悪いことじゃないよ?"
“お前のこと泣かせた上に危険な目に遭わせた”
大きな掌が頬に添えられて親指で目の下の涙跡を拭われる。
温かくて優しくて心地よい。
「いなくならないで」
「っ...」
「頼むから、どこにもいかないで」
彼は泣きそうで何故か少し怯えているようにも見えた。
こんな弱々しい姿を見るのは初めてだ。
「お願い…っ」
声は聞こえないけど胸が締め付けられるほどの真剣さは伝わる。
声にできない代わりにぎゅっと抱きつく。
この体勢だと顔は見えないのに“ありがとう”と言われた気がした。
しばらく抱き締め合ったあと手を繋いだままリビングへ。
「お前宛だって」
差出人は幼馴染さんで何が書いてあるのか怖くて息を呑んだ。
恐る恐るテーブルの上に置いてあった四つ折りの紙切れに目を通す。
“あたしはなおの素敵な声も聞こえるし自分の言葉で何でも伝えられる。
昔から一緒にいるから何でも知ってるし、あたしの方がなおの恋人にふさわしいと思わない?”
もっとも過ぎて悲しくなる。
迷惑をかけた直後の今だから余計だ。
“でもね残念ながらその素敵な声で話すのはいつもあんたのことで臆病なあたしは好きだなんて伝えられない。
昔から一緒にいるけどあんたと一緒にいるときみたいな優しい表情は知らなかった。
あんたが出てったとき馬鹿みたいに慌ててたよ。
仕方ないから譲ってあげるけどなんかあったらすぐ奪ってあげるから。
PS.あんたの残りの葡萄は全部食べちゃったから!残念でした~”
あっかんべーをしている顔文字つきの文章から港み出る不器用な優しさに涙が落ちた。
そんな私を見ておろおろするなおちゃん。
「どした?何書かれた?」
なんでもないと首を振るけど心配する表情は変わらない。
いつもカッコいい彼が焦る姿に思わず笑みが溢れる。
幼馴染さんありがとう。
なおちゃんを満足させられるかはわからないけれど不良品なりに頑張るから。
ふたりで幸せになるからね。