春の散歩
文字数 410文字
朝の不完全に調和する冷たい風は
ドアを開けた瞬間に私の靴を攫っていく
背の高い懐古主義の青年が
落ちていた煙草に火をつけた
青い木々が遠くに落ちた自身の種を
青年に拾われないかと心配している
斑のある野良猫が横切る視線の先に
力強いクマンバチが空に浮かんでいた
旗を持つ老婆の手が上がる
青に変わった信号を小学生が駆け出した
公園に座っている死んだはずの兄が
悔しそうにこちらを眺めている
遠くから犬の遠吠えが聞こえた
それは山の中に埋めた愛犬の遠吠えだ
週末の商店街で歌う
乞食の夢を最近見かけない
ベビーカーを押す母親の影が
飛行機雲のように伸びていく
誰かの渇いたゲロの上に
ピカピカの十円玉が光っていた
町はずれの神社から
祝詞をあげる声が悲しく聞こえる
すれ違う太ももを露出した女性の
香水につられて後ろを振り返った
バスに乗って去っていく
家族の後頭部が夕暮れの闇に消えていった
現実主義の老人が音の鳴る階段を上りながら
今夜も生きるのが少しだけ嫌になる夢を見る
ドアを開けた瞬間に私の靴を攫っていく
背の高い懐古主義の青年が
落ちていた煙草に火をつけた
青い木々が遠くに落ちた自身の種を
青年に拾われないかと心配している
斑のある野良猫が横切る視線の先に
力強いクマンバチが空に浮かんでいた
旗を持つ老婆の手が上がる
青に変わった信号を小学生が駆け出した
公園に座っている死んだはずの兄が
悔しそうにこちらを眺めている
遠くから犬の遠吠えが聞こえた
それは山の中に埋めた愛犬の遠吠えだ
週末の商店街で歌う
乞食の夢を最近見かけない
ベビーカーを押す母親の影が
飛行機雲のように伸びていく
誰かの渇いたゲロの上に
ピカピカの十円玉が光っていた
町はずれの神社から
祝詞をあげる声が悲しく聞こえる
すれ違う太ももを露出した女性の
香水につられて後ろを振り返った
バスに乗って去っていく
家族の後頭部が夕暮れの闇に消えていった
現実主義の老人が音の鳴る階段を上りながら
今夜も生きるのが少しだけ嫌になる夢を見る