第１話 ＶＤは純粋に心からＣＭを切望す
文字数 1,999文字
クールな印象を人々に与えることが多いヴィジュアルドロワーだが、ひとりコンセプトマスターだけは、彼女の熱情・狂おしいほどの欲望を見透かしていた。
少しというか結構高貴な印象を与える彼女の魂を捉え、多くの人々と分け隔てなく特別扱いをしない彼に彼女は心惹かれた。
それは新鮮な彼の彼女に対する特別扱いだった。
どこか、今までの男は彼女を自身より一段上に置きつつ、自分の下にも置いていた。
ところが、この風変わりな男は上にも下にも置かず、いつも対等であろうとしている。
彼女を尊重はしているが、媚び諂わなければ彼女が自分を相手にしないというのなら、どんなに好意を抱き、心が切望してどうしようもないとしても、男は決して女に歩み寄りはしない。
男は幾ら言葉を投げかけても返す事のない女に与えすぎだと言われても、そんなことにはお構いなしに情愛を表現した。
女は戸惑った。
女の今まで経験してきた愛は条件付き・制限ありのものだけだった。
ところがこの男の愛は底無しの無尽蔵の純粋で見返りも求めていないものであるかのように感じられる。
勿論、この男の愛とて無制限・無条件・見返りをまったく求めないものではない。
だが、そのような情愛を女に示し、今までの不幸な彼女の境遇が頑なにした彼女の傷ついた心を解くには無尽蔵で見返りを求めない心を純に示さなければ不可能であろう、そう男は考え、ある意味、心には明らめがあった。
男はなぜか、様々な想いが去来し、浄化が訪れたのか、頬を雫が伝うことが頻繁だった。
エネルギー体で常に男の左にいる女は男を直に感じていた。
しかし、物理的に体も隣にいたいと心から願っていた。
潜在意識下ではふたりは融合している。
だが、それだけではまったく足りず、充たされることはない。
身も心も一体となりたい。
なぜか惹かれる、純粋に、欲しくて堪らない、と、互いに想い合っている、と神託は告げる。
魅力的な異性はいっぱいいるだろう。
ひょっとしたら、性的に惹かれる相手もその中には結構いるに違いない。
だが、そんな相手より、なぜか彼は彼女を求め、彼女は他の誰でもない彼に一番魅力を感じ、性的なコミュニケーションを通じ、互いを直に感じ、理解したい。
そうであるし、それが自身の何よりも求め、欲しているものである。
それがスタンダードで大切でそうあることに有難さや意義を感じ、心からの感謝・嬉しさで至福を感ずる互いでありたい、二者の魂はそう共鳴していた。
女は男が自分の絵を心から褒め
「君の作品でいっぱいの美術館を作ってあげたい」
と言ってくれた時、とても嬉しかった。
男は文章を書いて発表した時、女がある箇所の表現を特定し、「良い表現」と指摘してくれたことがとても嬉しかった。
両者の感慨は大袈裟さもわざとらしさもなく、心で感じた普通で自然なものだった。
だから、互いを結びつけ、離れられなくさせている、のだろう。
女は自身の境遇を考え、想いに沈んでいた。
男は女の家族を想い、どのような生活がなされ、元気でいるのかが気がかりだった。
同時に自分の家族、施設に別々にお世話になっている父母、ビジネスを始めた彼を心配のあまり絶交した二人の妹のことも考え、想っていた。
母には同じ町内の施設なのでこの間も面会に行けたが、父には４年前の夏、妹二人と三人で父に面会に行った麗かな夏の日を想い出していた。
「父に会いたい」彼は想っていた。
今年こそはどうにかして会いに行こう。
もしふたりが家族になるとしたら、互いの親や係累にも挨拶などが必要なのだろう。
彼女に弟さんがいることは聞いているが、お祖母さんやご両親がどんな方でどのような関係性であるのかは聞いていない。
だが、相手を苦しくなるほど自身がとても変になったのではないかと感じられる程、純粋に慕い、欲望し、所有し、蹂躙するほど相手を意のままにしたいと感ずるほどの狂気・熱情を向けられるのはとても幸せなことではないだろうか。
女は今まで何度かの恋愛を体験してきた。
だが、それらはある意味、統御可能で所謂性行為中でも冷めた眼で見ている自身がいた。
それが
此度のこの未だ理解を超えている男との間柄を顧みると‥‥
ただ、想像するだけで、手が止まらなくなり、狂ってしまったように━━
ぐったりして、眠りにつき、起きて、再び、男の面影を追い、切なくなり、胸を抑え、溢れ出て止まぬ自身の何処から来る情愛の泉より湧き出る豊穣な湖かと想われる洪水に
相手に十分愛されていると自身を信頼し、支配・所有したいという狂おしいほどの執着を抱く相手に感謝し、その葛藤をも楽しみ、愛されているとどっしりと構え、ピュアな相手に自分も無垢な子供にかえったような自分に気づき、鎧も脱ぎ捨て、渇望しているエネルギーを感じ、そばにいてくれるだけで夢や希望を持って、明るく元気にワクワクして生きていける。
相手を何よりも大切に想い、失いたくないために、色々模索している自分に微笑んだ。
少しというか結構高貴な印象を与える彼女の魂を捉え、多くの人々と分け隔てなく特別扱いをしない彼に彼女は心惹かれた。
それは新鮮な彼の彼女に対する特別扱いだった。
どこか、今までの男は彼女を自身より一段上に置きつつ、自分の下にも置いていた。
ところが、この風変わりな男は上にも下にも置かず、いつも対等であろうとしている。
彼女を尊重はしているが、媚び諂わなければ彼女が自分を相手にしないというのなら、どんなに好意を抱き、心が切望してどうしようもないとしても、男は決して女に歩み寄りはしない。
男は幾ら言葉を投げかけても返す事のない女に与えすぎだと言われても、そんなことにはお構いなしに情愛を表現した。
女は戸惑った。
女の今まで経験してきた愛は条件付き・制限ありのものだけだった。
ところがこの男の愛は底無しの無尽蔵の純粋で見返りも求めていないものであるかのように感じられる。
勿論、この男の愛とて無制限・無条件・見返りをまったく求めないものではない。
だが、そのような情愛を女に示し、今までの不幸な彼女の境遇が頑なにした彼女の傷ついた心を解くには無尽蔵で見返りを求めない心を純に示さなければ不可能であろう、そう男は考え、ある意味、心には明らめがあった。
男はなぜか、様々な想いが去来し、浄化が訪れたのか、頬を雫が伝うことが頻繁だった。
エネルギー体で常に男の左にいる女は男を直に感じていた。
しかし、物理的に体も隣にいたいと心から願っていた。
潜在意識下ではふたりは融合している。
だが、それだけではまったく足りず、充たされることはない。
身も心も一体となりたい。
なぜか惹かれる、純粋に、欲しくて堪らない、と、互いに想い合っている、と神託は告げる。
魅力的な異性はいっぱいいるだろう。
ひょっとしたら、性的に惹かれる相手もその中には結構いるに違いない。
だが、そんな相手より、なぜか彼は彼女を求め、彼女は他の誰でもない彼に一番魅力を感じ、性的なコミュニケーションを通じ、互いを直に感じ、理解したい。
そうであるし、それが自身の何よりも求め、欲しているものである。
それがスタンダードで大切でそうあることに有難さや意義を感じ、心からの感謝・嬉しさで至福を感ずる互いでありたい、二者の魂はそう共鳴していた。
女は男が自分の絵を心から褒め
「君の作品でいっぱいの美術館を作ってあげたい」
と言ってくれた時、とても嬉しかった。
男は文章を書いて発表した時、女がある箇所の表現を特定し、「良い表現」と指摘してくれたことがとても嬉しかった。
両者の感慨は大袈裟さもわざとらしさもなく、心で感じた普通で自然なものだった。
だから、互いを結びつけ、離れられなくさせている、のだろう。
女は自身の境遇を考え、想いに沈んでいた。
男は女の家族を想い、どのような生活がなされ、元気でいるのかが気がかりだった。
同時に自分の家族、施設に別々にお世話になっている父母、ビジネスを始めた彼を心配のあまり絶交した二人の妹のことも考え、想っていた。
母には同じ町内の施設なのでこの間も面会に行けたが、父には４年前の夏、妹二人と三人で父に面会に行った麗かな夏の日を想い出していた。
「父に会いたい」彼は想っていた。
今年こそはどうにかして会いに行こう。
もしふたりが家族になるとしたら、互いの親や係累にも挨拶などが必要なのだろう。
彼女に弟さんがいることは聞いているが、お祖母さんやご両親がどんな方でどのような関係性であるのかは聞いていない。
だが、相手を苦しくなるほど自身がとても変になったのではないかと感じられる程、純粋に慕い、欲望し、所有し、蹂躙するほど相手を意のままにしたいと感ずるほどの狂気・熱情を向けられるのはとても幸せなことではないだろうか。
女は今まで何度かの恋愛を体験してきた。
だが、それらはある意味、統御可能で所謂性行為中でも冷めた眼で見ている自身がいた。
それが
此度のこの未だ理解を超えている男との間柄を顧みると‥‥
ただ、想像するだけで、手が止まらなくなり、狂ってしまったように━━
ぐったりして、眠りにつき、起きて、再び、男の面影を追い、切なくなり、胸を抑え、溢れ出て止まぬ自身の何処から来る情愛の泉より湧き出る豊穣な湖かと想われる洪水に
相手に十分愛されていると自身を信頼し、支配・所有したいという狂おしいほどの執着を抱く相手に感謝し、その葛藤をも楽しみ、愛されているとどっしりと構え、ピュアな相手に自分も無垢な子供にかえったような自分に気づき、鎧も脱ぎ捨て、渇望しているエネルギーを感じ、そばにいてくれるだけで夢や希望を持って、明るく元気にワクワクして生きていける。
相手を何よりも大切に想い、失いたくないために、色々模索している自分に微笑んだ。
