プロット
文字数 2,126文字
【起】
主人公の都坂 沙衣奈 は、逆ハーレム願望のある中学1年生。
4月。「ボーイスカウト」という団体に女の子も入ることができると知った沙衣奈 は、活動内容をまったく知らないままに入団を決める。言葉の響きから、ナンパ集団のようなものだと思い込んだのだ。
沙衣奈 が真実を知るのは、家に探検隊のような制服が届いてから。実際は、主に野外活動をとおして1人前の青少年を育成するのが目的の社会教育団体――沙衣奈 にしてみれば「アウトドア集団」だった。ちやほやしてくれる人間がいるどころか、自分のことは自分でしなければならない。
普段からもう少し自立した子になってほしいと思っていた母はこれを好機と思って、入団を取り消してほしいという沙衣奈 の願いを取り合わない。とりあえず1年続けてみるよう説得する。
1年経ったら絶対辞めてやるからと言い捨て、沙衣奈 は週2回程度、ボーイスカウト(小学6年生~中学3年生の部門、略:ボーイ隊)の活動を始める。
【承】
ギャル系が好きな沙衣奈 のファッションセンスでは許しがたい制服に身を包み、散りかけのお花見ハイキングに参加する。
逆ハーレムの夢は消えたが、沙衣奈 は自班のメンバーのことを好ましく思う。――ただ1人、如月 碧 を除いて。
碧 は、神秘的な魅力のあるショートカットの女の子。ビーバースカウト(小学1年生~小学2年生の部門)から活動を行っているベテランスカウトだ。
同い年の女の子だからと親近感を持って話しかけてみたものの、淡泊 な返事しか返ってこずにむっとする。沙衣奈 のほうも、碧 に対してはそっけない態度で接することにした。
初めてのキャンプの夜。テントの中では、沙衣奈 と碧 、それに中学3年生の班長ゆかりを加えた同班の女子3人でガールズトークが始まった。
盛り上がるのは恋のお話。誰にもなびかなそうな碧 にとっては、恋愛なんてどうせ興味ないだろうと思っていた沙衣奈 。しかし、意外にも好きな人がいるという。
碧 が恋をしていることを知ったあのキャンプ以降、碧 のことが妙に気になる沙衣奈 。活動のない日に、学校の制服としてスカートを着ている碧 に偶然会って、どきっとすることもあった。
あるとき沙衣奈 は、碧 の好きな人に気づいてしまう。碧 はボーイ隊の隊長――26歳年の離れた、子持ちの既婚者を想っていた。
気づいたきっかけは、碧 の表情。隊長と話すときに、いつもの無表情ではなく、ほんの少しだけはにかみ顔になるところを見てしまったのだ。
沙衣奈 はいたたまれなくなり、心臓をバクバクさせたままその場を去る。
それをきっかけに沙衣奈 は、スカウト活動に精を出すようになった。野外活動が好きになったわけではない。他のことで気を紛らわしていなければ、碧 のことばかり考えてしまうからだ。
1人前のボーイスカウトとしての第1歩となる初級スカウトへの進級を目指して、沙衣奈 は今までおろそかにしてきた履修課目に取り組む。
碧 は「最近の沙衣奈 ちゃんのやる気、すごい」と驚き、沙衣奈 の勉強に協力してくれる。
しかし、碧 との距離が縮まっていくのとは逆行して、沙衣奈 は、当初の予定どおり1年間で退団することを心に決める。碧 の途方 もない秘密ととなり合わせで過ごし続けることに、精神的な限界を感じていたのだ。
【転】
沙衣奈 の左胸には、自分で縫い付けた初級スカウト章のワッペンが付いている。
今や3月。今年度の活動は、30kmもの距離を歩く夜間ハイキングを残すのみ。
出発前、碧 が一緒に歩こうと誘ってくれる。
しかし、ともに歩いているうちに、本来よりもうんとペースを落としている碧 の様子に気づく。
碧 だけ前の集団に合流することをうながす沙衣奈 。碧 は断る。夜間ハイキングを経験したことのない沙衣奈 についてあげるよう、隊長に指示されたのだと言う。
思わず逆上 する沙衣奈 。「はあっ!? あんた、好きな人のためにボーイスカウトしてるわけ!」すぐに激しく後悔する。碧 が真剣にスカウト活動を行っていることなど、一緒に過ごした日々を振り返れば疑う余地もなかった。
それにもかかわらずこんなことを言ってしまったのは、碧 にとって1番の存在になれない自分が悔しいからだと気づく。沙衣奈 は、碧 への恋心を自覚する。
【結】
「――知ってたんだ」という碧 のつぶやきを最後に、2人は沈黙。気まずい雰囲気のまま、それでも並んでゴールを目指す。
しばらくして、碧 がぽつりと話す。一緒に歩こうと誘ったのには隊長の指示もあったが、1番の理由は、今月かぎりで退団する沙衣奈 との時間を過ごしたかったから、と。
これを受けて沙衣奈 は、先 の発言で碧 を傷つけてしまったことを謝る。
お互い疲れていて口数は少ないものの、それ以降は穏やかな空気で歩みを進める。
「やっぱり、辞めるの?」まだ暗い空のもと、完歩できた達成感にひたっているときに碧 が問う。「……辞めない」疲労と眠気とでうまく働かない頭で、沙衣奈 は答える。「根性ある」と返す碧 の嬉しそうな顔を見て、落ち着いてきた沙衣奈 の心拍数が再び急上昇。
――碧 が振り向いてくれるいつかのために。ボーイスカウトのモットー「そなえよつねに」を心に刻み、沙衣奈 はこれからもスカウト活動を続ける。
主人公の
4月。「ボーイスカウト」という団体に女の子も入ることができると知った
普段からもう少し自立した子になってほしいと思っていた母はこれを好機と思って、入団を取り消してほしいという
1年経ったら絶対辞めてやるからと言い捨て、
【承】
ギャル系が好きな
逆ハーレムの夢は消えたが、
同い年の女の子だからと親近感を持って話しかけてみたものの、
初めてのキャンプの夜。テントの中では、
盛り上がるのは恋のお話。誰にもなびかなそうな
あるとき
気づいたきっかけは、
それをきっかけに
1人前のボーイスカウトとしての第1歩となる初級スカウトへの進級を目指して、
しかし、
【転】
今や3月。今年度の活動は、30kmもの距離を歩く夜間ハイキングを残すのみ。
出発前、
しかし、ともに歩いているうちに、本来よりもうんとペースを落としている
思わず
それにもかかわらずこんなことを言ってしまったのは、
【結】
「――知ってたんだ」という
しばらくして、
これを受けて
お互い疲れていて口数は少ないものの、それ以降は穏やかな空気で歩みを進める。
「やっぱり、辞めるの?」まだ暗い空のもと、完歩できた達成感にひたっているときに
――