たとえば、それは。

文字数 583文字

定期的に俳優さんに引き込まれることがある。

たとえば、それは浜辺美波さん。
なんでしょう、あのオーラ。
あの可憐さの中に秘められた芯の強い眼力。
矛盾する事象が1人の人間の中に見事に共存する調和の美しさ。
これなんです。

ところで、冬は、愛煙家に厳しい。
僕は、そのくせ部屋の中が煙臭くなるのが嫌なので、ベランダで吸っている。
吸っている間は、何よりも「無」になれるから好きなのである。
空を眺める。冬は空気が澄んでいるから、月もまたよく見える。夏目漱石の名言が頭をかすめるが、スルーする。気恥ずかしくなるから。

夏目漱石のことが頭の片隅にありつつも、月を眺め続けてみる。そういえば、この月、どこかで見たことあるような。
たとえば、それは、冬のロンドンの月。7年前、初めて欧州に上陸したとき、空港からずっとUNDERGROUNDでホテルの最寄駅に向かい、地上にはじめて出た。夜のロンドンの空気が僕の胸の中に入ってきた。まるで浸透圧のような自然の摂理のように。
筆舌に尽くしがだいほど、月が綺麗だった。
なぜあれほど綺麗だったのだろう?
僕の胸の高揚感とどこか切なげな月の顔。
この矛盾が見事に世界の一部として調和していた。だから美しかったのである。

浜辺美波さんの新作映画公開初日、ブラリと映画館に赴いてみようかしら。あの感覚と再会できるような気がするから。
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