第1話

文字数 1,745文字

よく、「英語を話すには文化の理解が重要だ」と言われる。その良い例が”grade”という単語である。ここでは、文化の違いが英語表現に与える影響についてお話ししたい。


私は、平日は英語教材制作会社で働き、休日はオンライン英会話を教えている。10年以上アメリカに住んでいた帰国子女であるため、オンライン英会話レッスンの中でアメリカの学校と日本の学校の違いについて話すことも多い。ある日、中学生の生徒と体育の授業について話していると、生徒が”grade”を「日本式」で使っていることに気づいた。


“grade”はご存知の通り、「学年」「成績」が主な訳である。この単語を、中学3年生の生徒が次のように使っていた。



私:

What do you do in your middle school P.E. classes in Japan?

日本の中学の体育では何をするの?

生徒:

In second grade, we did dancing, basketball, and swimming. In third grade, we’re doing running, tennis, and kendo.

2年の時はダンスとバスケと水泳をしました。3年の時は、陸上競技とテニスと剣道をします。

ーーん? 小学2・3年生? この生徒は中学生だから、小学2・3年じゃなくて、中学2・3年の話だよね…


少し混乱したので確認してみた。

Do you mean third year of middle school?

中学3年生ということ?

Yes.

はい。

その時、生徒の言いたかったことと、生徒の間違いの原因がわかった。


ーーなるほど! 彼女は「日本式」に学年を表していたのか。


日本式に考えると、小学3年生も、中学3年生も、高校3年生も、全てthird gradeと呼ぶのが妥当に思えるだろう。しかし実は、中学3年生をthird grade (of middle school)と言ってしまうと、外国人(少なくともアメリカ人)は混乱してしまう。私も、アメリカの教育制度に馴染んでいるため、混乱してしまった。


というのも、アメリカでは中学・高校入学時に学年をリセットせず、first grade〜twelfth gradeまでどんどん数字が増えていくからだ。つまり、日本の中学3年生はアメリカで言うとninth gradeなのである。日本人が間違ってthird gradeと言ってしまうと、アメリカ人は「え? 小学3年生?」と思ってしまう。


そこで私は、アメリカの学年の数え方を説明した後、次のように勧めた。

It’s better to say “in my third year of middle school.”

「中学の3年目」と言った方が通じるよ。

「え、さっき日本の中学3年生はninth gradeにあたる、って言わなかった?」と思われるかもしれないが、これがまたややこしいのである。アメリカではfirst〜fifth gradeが小学生(5年間)、sixth〜eighth gradeが中学生(3年間)、ninth〜twelfth gradeが高校生(4年間)という学年分けが主流だ。つまり、I’m in ninth grade. と言ってしまうと、話し相手がアメリカ人なら、「高校生なのかな? 前に『中学生です』って言ってた気がするけど」と思われてしまう。


このような混乱を避けるためには、I’m in my third year of middle school. (もしくは、文脈上、明らかに中学の話である場合はI’m in my third year.)のように、日本の「教育段階ごとにリセットする方式」に合わせるのがベストなのである。その際、grade(学年)ではなくyear(年)を使うことで、「中学校・高校の○年目」がスムーズに表せる。

以上のように、学年の表し方は、「英語を話すには文化の理解が重要」ということの良い例だと思う。文化の違いを理解できたら、言いたいことをうまく英語で言えるようになり、アメリカ含む英語圏や世界中の人とよりスムーズに英語で話せる。今後もオンライン英会話で、文化の違いを教えていきたい。

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